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編まれゆく

どこかの底の息

作者: 朝森雉乃

衝動的な悲しみに

僕らはいつだって答えを見つけられない


朝日が霧の中からしたたって昇る

そうしてふっと緑色に輝く

あるいは


花開く前に萎れた蘭がなまぐさく香る

そうして蛙に飲み込まれる

あるいは


打ちひしがれた興奮が

張り切った僕らを置き去りにして

間違った方向に矢印を打つ

間違った味付けに満足する

ろくでもないと笑ったはずなのに

瞬きすれば僕らではなくて

となりにいたのは黒ずんだ十字架だけ


衝動的な悲しみは

僕らにいつだって冷静さを分けてくれる


青空に塗布した黄色が

混ざりあって春色にぬめる

あるいは


もともとあった言葉だけが

慰めてくれるだけ

新しい出来事はいつも

僕を嘲りに来るだけ


キスをしよう

もう一度だけ


いつの間にか僕らではなくて

砂漠に咲いたさぼてんの咎は

白い雨を降らせたくてむくむくと

独りよがりの手を握る

花を摘み取ってしまったのは

きっと愛していないから


衝動的な悲しみを

僕はいつだって真面目に切り裂いていく


勤勉な花蜂の蜜を溶かして紅茶を飲む

そうして理想の家族を語る

あるいは


一定の大きさのコンパスで円を描く

そうして放物線に仕上げる

あるいは


毎日が毎日になるように

誇りを持って埃を払うように

雪が降っても道を歩くように

大人になった貴方は

僕を見下して笑う


微笑んでくれたから

心にドレミのシの音と

空白の休符をくれたから

ようやく息継ぎが出来たんだ


久しぶりに吸った空気は甘い

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