異世界プレイ日記~どうやら変態と変態が出会ったようです~
キノシタ LV26 職業・格闘家ファイター
本編では、地球を救うこととなる英雄の一人。
自衛隊の特殊部隊出身で高い戦闘スキルと強力なステータスを持つ。
五厘刈りの大男。現在36歳。
女装癖があり、ドレスを好んで着る。
リューヤ LV18 職業・勇者ブレーブ
本編では、地球を救うこととなる英雄の一人。
今はいろいろ勉強中。
タミア LV8 職業・僧侶プリースト
バルバ民国最大の都市『メルタン市』の中央役所で受付として働いている。
ひそかにリューヤに想いを寄せている。天然。
ケルト LV27 職業・忍者シノビ
忍術と呼ばれる特別な魔法を操る一族の生き残り。
ある特務のためメルタン市を訪れている。
重度のナルシストで大の女好き。
ゴファ LV14 職業・市長メヤー
『メルタン市』の市長を務める。
天性のリーダーシップと甘いマスクで女性を中心に大人気。
暖かい風が吹きぬけていくこの季節。
今日も俺ことキノシタは異世界の朝を迎えていた。
とても澄んだ朝の空気を胸いっぱいに吸い込んで、伸びをする。
ここは、中央役所の横にある冒険者寮だ。
特別な設備やサービスはないが破格の値段で宿泊できることが魅力だ。
「おはようございます。キノシタさん」
礼儀正しい挨拶の声が聞こえて振り向くとタミアちゃんが立っていた。
タミアちゃんは中央役所で受付をしている女の子だ。
とても澄んだ黄色い瞳で、茶髪のショートカットが似合う。
おっとりとした印象があるが性格は明るく、ド天然なところも可愛らしい。
中央役所の黒い制服のミニスカからは天使の太ももがのぞいている。
「おはよう。今日も早いね」
「ありがとうございます。そ、その・・・今日も可愛らしいパジャマですね!」
「それ、毎日言わなくて良くない!?」
今日はくまさんのイラストが描かれたパジャマだ。
なかなか肌触りも良くて、お気に入りの一着だ。
「そんなことより、リューヤはもう勉強中か?」
「ええ。いつもこの時間にはいらしてますよ」
「そうか」
リューヤという高校生もまたこの世界ゲームで暮らしている。
ここは『ドラゴンバスター』という五感をフル活用して遊ぶ新感覚ゲームの中だ。
プレイヤーは自らの肉体と精神を召喚する事でこの世界ゲームをプレイできる。
しかし、この異世界と地球との力の均衡を壊すことにより莫大なエネルギーを生み出し、地球の初期化という恐ろしい計画を進めている者たちの存在を知った俺たちは、それを食い止めるべく奮闘している。
そのひとつとして、リューヤはこの世界ゲームの仕組みなどについて調べている。
そのことが近道のひとつかもしれない。
だからこそ俺は自分の出来ることをする。
俺が少し考え事をしているとタミアちゃんの声が聞こえた。
「あ、あの人は確か・・・」
俺はタミアちゃんの目線を追うと、すぐに件の人物を見つけた。
ピンクの全身タイツに身を包んだ金髪の男がいた。
その男はこちらに気が付くと手を振りながら近づいてきた。
「おやおや、こんなところに可愛いお嬢さんが。
今日たまたま早起きしたのも、キミに出会う運命だったのかも」
男の俺でも吐き汚しそうなセリフをよく口に出来るな・・・
タミアちゃんもドン引きしながら、苦笑いを浮かべている。
「あれ?ボクに会って照れちゃったのかな?可愛いなぁ」
「すみません。仕事がありますので!失礼します!」
と言って、走って行ってしまった。
後はお願いします!みたいな意味をこめたウインクを残して。
「あはは。モテ過ぎちゃって困るなぁ」
「黙れ変態」
これが俺と変態との出会いだった。
変態から逃げるように、俺は冒険者寮の自室に戻って着替えた。
鏡に映る五輪刈りの頭を撫で、身だしなみの最終チェックをする。
「よし。完璧だ」
今日の服はラッキーカラーである青のドレスだ。
今日も人々の視線を全身に浴びながら市長室へと向かう。
「明日、クエストがあるから市長室へ来てほしい」と言われた。
メルタン市の市長であるゴファさんは、何を考えているか分からないときがある。
いや、何も考えていないのではないかと疑ってしまうこともある。
しかし人を引き付けるカリスマ性を持っていて、なにしろ彼には恩がある。
俺は『市長質』と字の間違ったプラカードが掛けられた部屋のドアをノックした。
「どうぞ」という市長の声が聞こえてくる。
俺はドアノブを回して、ドアを押し開けた。
するとパンツ一丁で椅子にふんぞり返る金髪のイケメンの姿があった。
「何をしているんですか・・・?」
「見て分からないのか?休憩中だ」
「そこじゃないですから」
「なんだと!休憩中という事以外にどこに問題があるんだ!?」
「自覚ないんですか!?この露出魔!」
イケメンでスタイルが良くて、リーダーシップを持っている。
そんな若きカリスマ市長は変態だった。
「それで、クエストって何なんですか?」
「うん。実はね、最近下着泥棒が多発しているんだ」
「下着・・・ですか?」
「しかも犯行の手口から見て、同一犯の可能性が高いと見ている」
「へぇ。それで、俺に下着泥棒を捕らえろということですか」
「そのとおり。そして今回の任務はその道のプロと二人一組を組んでもらう」
その道のプロ?刑事か何かかな・・・?
「そろそろ出てきてください」
「・・・?」
俺が首を傾げていると「ドロンでござる」といいながら今朝の変態が現れた。
こいつ・・・忍者だったのか。
「やあ。またボクに会えて光栄だろう。変態オヤジさん」
ピンクの全身タイツに身を包んだ金髪の変態は俺を変態呼ばわりした。心外だ。
「あのなぁ・・・お前、自分の格好分かってるか?」
「それはボクのセリフだっ!」
「なんだと!?ピンクタイツなんてキモ過ぎるだろ!!」
「ああ?ドレス着たハゲオヤジのほうがキモイわ!」
売り言葉に買い言葉だ。俺たちはすぐに殴り合いになった。
「まぁまぁ二人とも。ここは私の顔に免じて・・・」
「「露出魔は黙ってろ!!」」
みんな変態だった。
町を歩けば、すれ違う人がみんな二度見したうえで、振り返る。
そんな存在は絶世の美少女だけだと思っていた。
しかし俺に考えは違っていた。
俺と変態の二人組みが歩いたとしても、前述の状況になるのだ。
「うわぁー・・・」
「なんだあれ・・・」
「ママー!何あの人たち?」
「見ちゃダメ!」
「お前のせいだからな。・・・えーと?」
「ケルトだ。名前を聞けて光栄だろう。」
「別に」
俺は赤面しながら町を巡回した。
「お前が下着泥棒か・・・!」
「おお!あいつか!でかしたぞキノシタ!」
夜。巡回中に俺とケルトは下着泥棒と思われる人物に出会った。
「俺が下着泥棒だと!?証拠がないだろう」
「そうだ!そうだ!キノシタ お前は馬鹿か!」
下着泥棒と思われる人物が騒ぐ。
「証拠ならあるぞ・・・」
「「な、なんだってー!!」」
下着泥棒がやや大げさに驚く。そしてケルト。うるさいなお前。
「俺のどこに下着泥棒要素があるというんだ!?言ってみろ!」
「ああ。頭にかぶっている女性物の下着とかかな」
男はピンクのレースつきのパンティーをかぶっていた。
男は自分の頭を触って青ざめる。
「しまったぁぁぁー!つい癖でぇぇぇ!!」
「いやどんな癖だよ!?」
「い、いや。まだ誤魔化せる」
「がんばれ!下着泥棒!!」
お前はどっちの味方なんだよ。
「これは・・・その・・・友達から借りたんだ☆」
「黙れ変態。鋼鉄の拳!!」
「うぐぅっっ!!」
俺の右手は黒く変色して鋼鉄化する。
その右手で思いっきり腹に拳をうずめてやった。
「くっ・・・なかなかやるじゃねぇか」
「やるな!キノシタ」
男は呻きながらゆっくりと立ち上がる。
「次はこっちの番だ。強奪の拳」
男の手が黄金色に輝く。
まずいな。あれは盗賊の高レベル者のみが習得できる技だ。
攻撃を受けた者の装備品をひとつ奪うという技だ。
男は地面を蹴り急接近してくる。くそっ!速い!
「もらったぁぁ!」
「うわぁー!」
俺は男に顔面を殴られた。
まずいな。俺は格闘家だが、もしものために手斧を担いでいる。
緊急時用と思っていたが仇となったか・・・
ん?背中の重みが変わらないな・・・?
俺は背中に手を回すとしっかりと斧が固定されていた。
じゃあ今何を奪われたんだ?
俺は起き上がって男を見た。
その手には青と白の縞模様のトランクスが握られていた。
「し、しまったーーー!!!」
「見損なったぞ!女性用だけじゃ飽き足らず変態のまで!」
「ち、違うんだ!つい癖で!!」
「いや、言い訳になってないからな!?」
「つーかドレスの下にトランクスってww」
「ケルト!お前は黙ってろ!」
「間違ったものは仕方がない・・・一応被るか」
「被るの!?てか、死ね!」
俺の渾身の一撃はクリティカルヒットとなり、男の意識を奪い去った。
「クエスト達成おめでてうございます!」
「う、うん。ありがとうタミアちゃん」
「いいんだよお譲ちゃん。お礼なんていいから今度デートに―――
「そんなことよりキノシタさん。お話があるんですが」
「ん?なんだ?」
「すごくほったらかしだなボク!」
「ケルト。少し黙れ」
「ええ!?そんな!」
「そんなことよりタミアちゃん 話って?」
ふぅ。モテる男はつらいぜ。
「そ、その・・・」
「うん」
ゆっくりでいいよ。オジサンが受け止めてあげるからね。
「・・・今度、下着のお店へご案内します!」
「いや、いらないからー!!」
ご覧いただきありがとうございました。
僕にはファンタジーは限界だと一作品書いて分かりました。
やっぱこういったコメディー寄りの作品のほうが描きやすいです・・・
これからも時間を見つけて、執筆していきたいと考えているので応援よろしくお願いいたします!
ケルト「あれ?スピンオフってこで出てきたけど、ボク何もしてなくない?」
キノシタ「あーはいはい。そうだね」
ケルト「ボクの扱いひどくない!?」