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なな。


ふいに、携帯が振動した。

誰かからメールがきたらしい。くまたんを顔からはがして携帯を見ると、もう15時を過ぎていた。


「あ、川島君からだ」

どうやら学校が終わってすぐにメールをくれたみたいだ。



「川島くんて、入学式の時に話しかけてくれたひとだよね。優太が嬉しそうに話していたから、僕も知っているよ」


そう、川島君は俺に声をかけてくれた初めての人だ。それから川島君を中心にしてグループができて、俺もその中に入れてもらっている。

川島君も他の皆も、俺と違って明るくて、元気で、とても楽しい人たちだ。よく考えてみれば、正反対の根暗な俺が入れるグループじゃなかったのかも。必死になって合わせて、楽しくやっているつもりだったけど、それはきっと勘違いだった。



「優太。また面倒な事考えてるでしょ、川島くん、なんだって?」


心の中を見透かされて、慌ててメールの内容を確認すると、簡単な連絡事項のようだった。


遠足の班はいつものメンバーで行くことになったこと。明日の宿題の事。俺の机に入っていた消しゴムを勝手に借りたこと。それから最後に、いきなり休んで皆心配したと書いてあった。


「優太、よかったね」


「うん、嬉しいな」


誰からも、連絡なんて来ないかと思っていた。俺は居ても居なくてもどっちでもいい存在だと思っていたから。

人に合わせるだけの、自分を持たない中途半端な存在なんて、ただの置物と一緒だから。きっと今日一日俺の事を忘れて過ごすだろうな、なんて思っていたから、連絡が来たことが本当に嬉しかった。


急いで、班が一緒で嬉しいという事と、体調が悪くて休んでしまったと返信すると、すぐに川島君からメールが返ってきた。


『明日、遠足のこと皆で話そう。吉田が来るの、楽しみにしてるから』



「川島くんって、女の子みたいな事言うね。」


「うん、絵文字とかあったら女子からのメールに見える。川島君のメール、いつもこんな感じなんだ。うっかり惚れそうになる」


「だめ!優太は僕のだもんっ」


冗談で言ったのに、俺の言葉に真剣に怒こり始めたくまたんを慌てて宥めるが、なかなか落ち着いてくれない。


「僕のこと好きっていったのに!」とか「浮気者!」とか言ってくる。


くまたん、怒ると女の子みたいだな。変な動きをしたり、王子様みたいに格好良くなったり、可愛くなったり、忙しいやつだ。



「もう、そんなに怒んなよ。なんでもするからさあ」


「ん、なんでも?」

俺の言葉に、怒りの舞を踊っていたくまたんが動きを止めた。


「本当に何でもするの?」


「お、おう。かかっていこい!」


「じゃあ、ちゅーして!」

そしたら許してあげると、偉そうに言ってくる。


「なんだそんなことか。はい、ちゅー」


「ちがう!ほっぺじゃない、おくちにして」


「もー、しょうがないなあ」

くまたんを抱き上げて、ちゅ、と軽く口にキスしてやると、急に顔を固定された。


「むぐっ」

ちょっと苦しいから離してほしかったが、なんとなく言える雰囲気じゃなかったので、そのままにしておいた。



くまたん良い匂いだなーとか、明日の準備の事とか、ぼんやり考えていたら、やっと顔が離れた。




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