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凡人Lv1が異世界へ飛ばされまして。  作者: Meguri
第1章 序曲
1/1

プロローグ

このサイトでは初小説です。

初めての異世界トリップ小説ですので、不自然な点等ございましたら、是非乾燥欄にお書きください!

直せるところでしたら、率先して直します。

 やってしまった。何てこった、だ。

 午前2時45分37秒、とパソコンの横のデジタル時計が映し出す。



 普段は漫画の最新情報やゲームの新作専門のハッキング力を試すために国家機密にログインとか、何て馬鹿なことをしたんだろう、と後悔する。今更過ぎる訳なのだが。


 そして、女子中学生にログインされる国家、脆すぎやしないか。

 机の上のパソコン画面に映し出されるのは、世にも恐ろしい爆弾だった。

 ホセゲンオクシムという非常に強い有毒ガスを充満させた、毒ガス爆弾だ。

 落とされたところは、地獄へと化すことは中学2年生の私、西宮渚(13)の知能でも容易に想像できた。思わず身震いしてしまう。

 何だ。平和国家を主張しているくせに、こんな凶悪な兵器を持っていたなんて、我らが国も腐りきっていたのか。

 平和に見えるこの国がこうなら、ほかの国等一体どうなっているのだ。


 途端に自分のした行為に恐怖を抱き、左上の大きい矢印の描かれたボタンを押す。

 これで大丈夫だとは思いもしなかったが、思わず体の力が抜ける。

 あの恐ろしい兵器の情報等、もう見たくもない、と思った瞬間だった。

 少々静か目の警告音が鳴り、黄と黒の斜め線テロップの上に文字が映し出された。


≪WARNING! WARNING!≫


 危険! 危険! と書かれている。

 この危険は私にとっての危険なのか。国家にとっての危険なのか。

 そして、警告音がやけに静かなのは何故だろうか。

 周りの人が来ないためか。そこまで内密に処理しなければならないのだろうか。


≪権限チェック/リトライ/リトライ/リトライ/リトライ制限回数へ達しました/このパソコンの位置情報を確認/入手しました/強制シャットダウンします≫


 明るい画面が消え去り、私の顔が映し出される。

 呆然と、兼、絶望し切っている。

 一瞬にして字幕が流れていった。が、不吉な文字が見えた気がした。

 いずれにせよ、後者にとっての危険だった訳だ。

 国家機密のハッキングは、割かし簡単なのか?

 けれども、対策は万全のようだ。位置情報を知られてしまったなんて、明日の朝には私は死んでいるかもしれない。


 恐ろしい。こんなことを仕事にしている人がいることが信じられない。私だったら寿命が縮みすぎて15歳にならない内に逝くな。

 ごたごたを考えていると、瞼が塞がってきていることに気が付いた。

 緊迫すべき状況なのに、人間の三大欲求の1つ、睡眠欲はきちんと来るようだ。紺色の睡魔がニヤニヤ笑いを零しながら私に近づく、ような気がする。


 机に倒れ掛かる。

 睡魔に食われたその瞬間に、私の意識がその机に溶けて消えていくような感覚を覚えた。


 此処は夢だと、はっきり分かった。

 玉座に座った黒い子猫が泣いている。

 黒い瞳から大粒の涙を流して。

 それなのに声は出そうとしない。押し殺し、押し殺し、誰かに聞かれたくない……もしくは聞かれてはならないのだろうか。

 子猫は私の存在に気が付いていないように見える。

 何故だろう、手も届く距離で、それに真正面から見ているというのに。

 私が見えないのだろうか。


「―――あやつさえいなければ」


 子猫の涙で潤んだ目に、明確な殺気が浮かんだ。

 泣いているというのに、どすの利いた声が王の間に響き渡る。

 震え上がってしまう。魔王のような風格を漂わせている。

 ただ、その恐ろしいという感情采配の中に、何処か懐かさを感じさせた。

 この声を何処かで聞いた覚えがあるのに、白く濁ったもやが記憶をひた隠しにする。

 誰だっただろう。名前も思い出せない。


「我は幸せだったものを」


 憎々しげな声が響いた今、気が付いた。

 子猫は私の姿をしっかりと捉えている。

 黒色の目に、可笑しいほどはっきり私の姿が映っている。

 そして、私に溢れ出た殺気を向ける。かつ、花開かんばかりの笑顔を見せた。


「来てくれるって? 嬉しい」


 ああ、見られているだけで殺されそうだ。

 頭痛がする。脳みそだけがぐらぐらしているような感覚に陥る。

 本当に嬉しいのだろう。いつかテレビで見た獲物を狙うライオンのように、目をぎらぎらさせている。


「来てくれるなら、迎えに行ってあげる」


 玉座から降りた子猫は、毛を逆立てながら私に近づく。

 しゃなり、しゃなりと王女様のような優雅な歩き方で、少しずつ。

 子猫の足には、隠し切れない爪が光っていた。

 恐ろしさの余り、腰が抜けて動けないでいる私に、無情にも爪を向ける。

 大粒の涙は、まだ子猫の頬を伝っていた。



「殺してあげる」

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