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ファンタジーにおける科学論  作者: 犬養 黎也
第一章 村での生活
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05

 「なんで俺がこんな田舎に来ないといけないんだ。」

 

 王立ヒルデガルド魔術学園の高等部の生徒、ジョン・ハンターは自らの不運を嘆きながら進んでいった。


 教授の気まぐれから四元論の否定をするための材料を集めていた。

 『四元論』

 この世のすべてのものは4つの元素から成り立っている。火・風・土・水のエレメントがあればあらゆるものが説明ができるというものであった。しかし、それだけでは説明として無理があるものが存在していた。たとえば木、一般的には土のエレメントに属しているといわれている。しかし、無理やり説明させるためなのか時には水、時には火、時には風と説明される時がある。この説明としては木も4つ要素から成り立っているため、使う方法によって変化するのは当たり前である。一瞬納得しそうになるが、改めて考えてみると滅茶苦茶である。それでは元素として説明ができていない。すべてのものがすべてを内包していたらエレメントに属するって考えがそもそもの間違えであり、そこから4元論は否定されてしまう。


 そう考えてしまったジョンは学園で唯一の四元論否定派の教授の下で学ぶことにした。しかし、その教授の下で学んでいたのはジョン唯一人であった。そのため、ジョンは先生の手伝いという難題を押し付けられていた。

 その一環としてクロウ村の森に自生しているエラスという植物を取りに行くことになった。エラスは炎のエレメントに属しているとされる薬草の一種で、飲むと体温が上がる効果があるとされている。しかし、植物は水に属している。その矛盾を調べるとのことであった。

 

 重い足を動かして、クロウ村の町を見ていた。子供たちが追いかけっこする笑い声がジョンの苛立ちを覚えさせた。


 「こっちとら、これからめんどくさいことをしなければならないのにガキ共は無邪気でいいよな。」


 全くの八つ当たりである。いいじゃないか八つ当たり。


 森に入るとエラスを探し始めた。ジョンは四元論を否定していたが、四元論はある意味正しいということは理解していた。魔法という技術は正しいイメージが必要となる。イメージするためには正しい知識として現象の理解がいる。そのための現象の理解として認識しやすい説が必要となる。四元論は説明しやすく、多くの人間が理解していた。そして、その原理を利用することで魔法は正しく発動することが確認されている。これは魔術師という戦争の兵士を量産するためには効率的であり、その部分は否定することができない。

 しかし、四元論では正しく現象を説明できないのも事実である。そして、四元論では強力な魔法が使えないという事実もある。そこでジョンはもっと解りやすくより真理に近づける説を作ることを目標に研究をしていた。


 「最もそんな説が簡単に見つかればとっくにわかっているんだろうがな。」


 森の中を独り言をつぶやきながら進んで行っていた。


 「これがエラスという薬草か。こんな簡単に見つかるなら俺じゃなく、人を雇って取りに行かせればいいのにな。」


 教授の愚痴をこぼしながら、薬草の採取を完了させ、森を抜けようとした。


 「きゃーーーーーーー!」


 森を抜ける直前で少女の悲鳴が聞こえてきた。

 馬鹿な!と思いながらも、森の出口に近づくとそこには魔物(魔法を使う動植物)がそこにいた。しかも、凶悪なプラントベアー。背中に植物を背負う大型の熊であった。

 その前には叫んだと思われる少女と少年(どちらも5歳くらい)がいた。このプラントベアーは少年少女を襲っているのであろうことは見て分かった。


 プラントベアーが今まさに少年少女を襲い掛かっていた。


 くそ……間に合わないか。


 しかし、この時のジョン・ハンターは想像さえできなかった。この田舎での出会いが彼の四元論否定に加速度的に影響を及ぼすものであったということに。

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