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「さて、そろそろ俺は学園に戻らないといけないかな。」
師匠との講義を受け始めて、1月が経過しよとしていた。
「いきなりどうしたんですか!?」
唐突に師匠が別れを宣告すると、俺は驚きの声を上げた。
「っていうか、学生の俺が休み期間でもないのにこんなに学園から離れているのはあまり好ましくないんだがな。元々、この村に来たのも教授の指示だからある程度は問題ないが、長く滞在しすぎている。そろそろ、学園に帰ろうと思う。出発は明日の朝あたりが妥当だろう。」
思い返すとこの1か月間、学校を休んでいるのは前世の感覚でいえばありえないことであった。
「まだ、理論について教えてもらっていないのに。もっとこの村に滞在できないんですか?」
「正直に言えば、学校に戻ってやりたい研究があるんだ。魔法について学びたいならお前らも学園に行けばいいんじゃないか?初等部も誰にでも門戸を開いているぞ。平民でも入学することができるから後は実力次第だ。実力主義という点でも貴族が有利であるが、見たところ2人とも十分な実力を持っている。特待生、入学金や年会費免除を狙えると思うぞ。全寮制になって家に帰ることができないが楽しいところだぞ。」
異世界において学校に通うというのは特権階級のみ許された権利だと思っていた。この世界では実力があるものは魔法学校に通うことが許されるのか?
「しかし、4歳のお前たちはまだ入学できない。確か初等部の入学年齢は7歳だったはずだ。それまでもう少し、自己流の練習を続けてみろ。俺が教えたことも忘れないようにして己を高めていけば、学校なんて簡単に通うことができるぞ。」
師匠の熱心な誘いに心惹かれるが、やはり両親と話をしてから決めた方がいいかもしれない。
「俺が通う王立ヒルデガルド魔術学園は王国が多くの魔術師を育成するために作った王立の学校で、実力があれば誰でも入学できる。その中でも初等部は特に実力があるであろう人物や既に開花している人物を少数集めて育成している。7歳の王国民ならだれでもこの初等部の受験に受けることができるが、基本的には受験料が高くて受ける人物が少ない。ただし、受かることができれば一生安泰であると言われている。」
師匠は飄々と未来の話を続けていった。
「初等部がだめでも中等部から入る手もある。中等部からは魔術的才能がある平民も集まり、教育を行っていくことになる。初等部も特待生としてそのまま中等部に上がる。実力ごとに分けられたクラスで各々の実力を上げていき、国に使えることになる。お前たちならどんな分野でも活躍できるだろう。」
俺たちの実力がどれくらいなのかいまいちわからないが、師匠には絶対の自信があるように俺たちを見据えていた。
「高等部は優秀なものの中でもさらに勉強するもの、研究するものしか行かないし、ほとんどのものは中等部までだ。できれば俺と同じ高等部に上がって魔術の深淵を除くことができればと思うが、ここからはお前たちが決めなければならないことだ。」
付け加えるように高等部の説明をしていた。
「お前たちの未来は自分で決めなければならない物だ。まだ、時間があるんだ。ゆっくり力をつけながら未来を考えていろ。」
示された未来に期待と不安を抱きながら、考えを巡らせていた。