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ファンタジーにおける科学論  作者: 犬養 黎也
第一章 村での生活
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09

 魔法という異世界の技術、よく作品によっては科学技術とは真反対にある技術として描かれることが多いが、法則を変える技術が森羅万象を理解しないで使えるわけがない。


 「さて、魔法の一般的な技術として最も簡単なものが火とされている。が、今回使うのは水だ。実は火を使うのはわかりやすさを優先しているといわれている。」


 「炎は視覚的にわかりやすいからでしょうか?」

 明かりがつけば成功という点では見て分かる炎は確かに成功がわかりやすいであろう。


 「その通りだ。しかし、火を出すというのは意外に大変であり、練習には不向きであるというのが最近の見解である。そこで代わりに使うのは水だ。容器の中の水に流れを与える。これが最も初歩的な訓練と言えよう。」


 家にあったコップを一つ取り、生活用の水を中に入れていった。そこに師匠は魔力を流し込み、まるで棒でかき混ぜたように中の水が動き始めた。


 「このように自由自在に水に流れを与えることができれば合格だ。あれほどのことを行うことができた君には簡単なことであろう。」


 そういうと俺とティンの前にそれぞれのコップを差し出していった。

 水に流れを与える。言葉だけでいえば簡単そうに見えるが、イメージが全くわかない。

 「うまいものでは1時間ほどで動かすことができるというよ。頑張りたまえ。」


 イメージって……どうイメージすればいいのだろう。水っていえばH2Oだっけ?液体に変化していく物体の中で液体に分類するものの総称って話もある。沸点が100℃で融点0℃だったっけ?あやばい。混乱してきている。

 混乱しながら、なかなかイメージが固まらないで1時間が経過すると隣で水を眺めていたティンのコップに変化が現れた。

 ゆっくりであるが、確実に水が動き始めたのであった。

 するとティンはその場で倒れそうになった。何とか倒れきる前に支えることができた。

 「大丈夫か!ティン、どうしたんだ。」


 「落ち着け、レヴァン。これはこの間お前もなった魔力切れだ。」


 動揺していた俺に師匠は教えるように話した。


 「見ろ。ティンのコップに波ができているぞ。これはティンの魔法が成功して動き始めたことを表している。ティンにも魔力がある証明だ。」

 「すごい。どうしてこんなことが……」


 イメージを固めることができなかった自分とは違い、ティンにできたことに少しだけ驚いてしまった。そんな俺にティンは薄れる意識の中で簡単に説明してくれた。


 「よくわかんなかったから、棒を入れてかき混ぜるイメージをしたんだ。これで、いいんだよね?」

 

 その言葉に、非常に驚いた。水を理解して、水に変化を与えるのではなく、水を物体としてとらえて力を加えるなんて。


 ティンを優しく寝かせ、自分の席に戻るとティンのやったように水をつかみ、力を加えるイメージで動かしてみた。

 正確なイメージはその水を大きく揺れ動かしていった。


 「理論なんて教えない方がいいのかもしれないな。」

 師匠は何かボソッとつぶやくと次に大きな声で俺たちに話しかけてきた。


 「すごいじゃないか。そのイメージ力を鍛えるためにはその鍛錬を続けていけばいい。動かすだけじゃなく、こんな風に持ち上げたり、できるといいよ。」


 そういうとティンのコップに残っていた水が、まるで水風船の中身のように球体を作りながら宙に浮いていった。


 「今のでわかると思うがイメージする方法は人それぞれだ。これは水を一つの物体として固定して持ち上げている。持つだけで魔力を使うからあまりお勧めできる方法ではないが、こんなやり方だってある。想像力を駆使しろ。魔力を用いて現実を変えるんだ。」


 師匠 ジョン・ハンターの想像力の豊かさに俺はドンドン惹かれていった。

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