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番外編 チョコを貰ってみた 前編

遅すぎるバレンタインネタの番外編です。

予想以上に長くなりそうなので分けました。

「ん? 珍しいな、ソフィアさんじゃないか」



依頼を受けるためにギルドに来てみたが、何故かクレイマンの受付にソフィアさんがいる。

まさか依頼を受けに来たのか?



何の用事で来たのか気になり、近づく。



「あなた、どうぞ」



「おう。悪いな」



「では、仕事がありますので、失礼します」



ソフィアさんは紙袋をクレイマンに渡してすたすたとギルドを去って行った。

クレイマンが弁当でも忘れたのか?



「今、ソフィアさん来てたよな。何かあったのか?」



「ん? ああ。今日はバレンタインだろ。だからだよ」



「バレンタイン?」



何故この世界にバレンタインがあるんだ。

異世界じゃないのか、ここは。

俺以外に転生者がいて広めたとかか?

……この世界はよくわからないな、偶然かもしれないし深く考えるのは止めよう。



「ふーん。じゃあ、ソフィアさんはクレイマンに渡しに来たのか。その割にそっけない感じだったな」



仕事あるからと言ってすぐに帰っちゃったし。

クレイマンの奴、嫌われているんじゃないのか?



「はっ、何を言うかと思えば。お前はソフィアのことわかってねーな」



「何がだ……ってうお!?」



クレイマンが紙袋の中身を見せてきた。

中には包装されていたり、箱詰めにされたりとお菓子がぎっしり。


「ちなみにこれは全部ソフィアの手作りだ。毎年そうだからな。量があれば良いってわけじゃねえかもしれないけどよ。この菓子ひとつひとつがソフィアからの愛だと俺は思うぜ」



臭い台詞を平気で言ってのけたクレイマンは早速包装を空けてチョコを頬ばっている。



「……」



「なんだ、欲しいのか? 言っておくがやらねーぞ?」



「いらねーよ。ちくしょー」


俺はギルドから飛び出した。

とりあえずクレイマンは爆発すればいいと思う。

今度鏡の前で呪言を唱えてやろうと固く心に誓った。


クレイマンに嫉妬するという醜い感情が出たせいか、黒いオーラが出始めた気がする俺は、なんとなくデュークの元へ。騎士団の宿舎に入り、デュークの部屋に行く許可を貰おうとしたが。



「あれ、隊長じゃないっすか。どうしたんすか、そんな魔族みたいなオーラ出して。下手したら捕まるっすよ」



オーラは別に見えていないはずなので、捕まる訳がない。

角や翼だって生やしていないはずだ。



「……別に捕まる理由がないぞ?」



「いやいや、今すごい顔しているっすよ。気づいてないんすか?」



「そうなのか? じゃあ、無理矢理笑顔に……」



「そっちの方が恐いっすよ。一体何があったんすか?」



「聞いてくれるか、ありがとうデューク。実はな……」



「あ、あの……」


俺が先程あったことを説明しようとしたら、いきなり声が聞こえた。

誰だと思いキョロキョロすると、いつもデュークと行動しているエルフの騎士が……まさかな。



「ああ、イレーネじゃないすか。何か用事っすか?」



「はい、だけど……今お邪魔じゃないですか? えっと、私出直しますので……失礼します」



軽く会釈して、立ち去ろうとするイレーネさん。

俺は空気を読み、デュークに顎で行けと合図を送った。

俺の合図に従ってデュークはイレーネさんの元へ。



「あ、待つっすよ。隊長が先に用事を足してこいって言われたんで……どうかしたっすか?」



「あの、デュークさん。これ……」


「ん、ああチョコっすか。ありがとうっす。でも何で俺に?」



イレーネさんは顔を真っ赤に勇気を出して渡しているようなのにデュークは軽い感じだ。

おいおい、お前はそれでいいのか。

しかも、渡してきた理由聞くとか……普通は聞かないだろ。



「あ、えっと……いつもデュークさんには仕事でお世話になっているので、感謝していますし……尊敬もしているので」



案の定恥ずかしそうに理由をぽつぽつと話している。そりゃあ、あんな風になるよな。

デュークって虐めるのが好きだとか、そういう趣味あったっけ。



「あー、そうだったんすか。気を使わせて悪いっすね。お返しは絶対するんで……でも期待はしないで欲しいっすよ」



「あっ、はい。ありがとうございます。それじゃあ私はこれで……」



「あと、また今度買い物に付き合って欲しかったら言うっすよ。いつでも付き合うっすから」



イレーネさんはこくこくと首を縦に振り、帰っていった。



「……ふぅ」



「いやぁ、待たせたっす。それで用事って……」



「お前も爆発しろぉぉぉ! 」



俺は嫉妬の感情をデュークにも向け、心の底から叫んだ。

そこからデュークに口を塞がれ、部屋に連行され事情説明。

モテない男の醜い嫉妬が原因で俺が全部悪かったと、逆恨みからの犯行だったと自供した。



「……なるほど。隊長の言い分はわかったっす。なんとも、また下らないなと」



「その言い方酷くないか!? というかお前のさっきの態度何?」



「俺何かしてたっすか。自分の思ったことを口にしていただけっすけど……」


こいつは思ったことをストレートに言い過ぎだ。

それが結果的に幸を招いているみたいだが。



「いや、何でもない。それにしても、俺の周りはリア充が多いなぁ」



「何言ってんすか。隊長よりある意味不幸な奴だっているっすよ。着いて来るっすよ」



「……そんな奴俺の知り合いにはいなかったと思うが」


デュークに引っ張られて連れて来られた場所はレイヴンの部屋だった。

レイヴンは別に不幸ではないと思うが。



騎士団長としていろいろ国のために働いているし、勇者パーティーだったという知名度もある。

沢山チョコを貰っているに違いない。

間違いなくリア充のはずだ。



「中をこっそり覗いてみるっす。今ならばれないっすから」



何故今ならばれないのか、理由はわからないがドアを開けてこっそり中を覗いてみる。

中にはベッドにレイヴン、椅子にハピネスが向かい合うように座っている。

ハピネスは袋を大事そうに抱えているが……。



「あの状態でもう一時間は経つっすよ」



「はぁ!?」

「声がでかいっすよ!」



「っ! ……悪い悪い」



デュークに注意され、小声で謝る。

しかし、あの状態で一時間とはどういうことだ。



「ハピネスが尋ねて来たんでレイヴンも良かったなぁと思ったんすけどね」



デュークがハピネスをレイヴンの部屋まで案内したらしい。

しかし、そこから雑談しては沈黙、雑談しては沈黙が繰り返し行われ持ってきた手荷物に関しては一切触れていないのだという。



ハピネスが渡せば終わるし、レイヴンがそれとなく荷物のことを聞けば終わるだろうに。

お互いが言い出すのを待っている状態みたいだ。

全く何をしているんだか、時間が経てば経つ程気まずくなるだけだろうに。


「あの二人の距離感は独特過ぎてわからないな。渡せなかったらお互いにダメージが残るぞ」



「一応見張ってるんで、ハピネスが渡さずに帰ろうとしたら最悪、俺が間に入ってなんとかするっす」



「……お前も大変だな」



先程デュークに嫉妬してしまったが、訂正しよう。

デュークは苦労人みたいだし、少しくらい御褒美があって良いと思う。

むしろ足りないぐらいじゃないかな。



「隊長、そんな目で俺を見ないで欲しいっすよ……」



デュークを哀れむような視線を送って俺は騎士団宿舎を出た。

結局、余計なもやもやを増やしてしまった俺は気分転換に町をぶらぶらすることにした。



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