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少女魔法使いに遭遇してみた

「あんた達男二人でこんな店に入ってるんなんて……剣士はともかく、あんた僧侶狙いじゃなかったわけ? 」



ミカナはアクセサリーショップから出てきた俺達二人に微妙な視線を送ってきている。

どうやらあらぬ疑いをかけられているようだ。



いくら前世から女の子にフラれまくっているとはいえ、同姓愛に目覚めた覚えは断じてない。



レイヴンだってハピネスに恋をしているのだからそっちの気はないはずだし。



「おい、変な勘違いをするなよ。俺達はお互いにプレゼントを選んでいただけだ」



「プレゼントって……誰によ?」



「それはもちろん好きな子に決まって……」



言ってしまった後、はっと気づいて口を閉じるがもう遅い。

目の前のミカナを見るとニヤニヤした表情で俺達を交互に見ている。



「ふ〜ん、あんたは僧侶狙いだって知っていたからともかく、剣士は知らなかったわね〜」



「……」



何で言ったんだとレイヴンは俺に訴えるような視線を送ってきた。

そんな視線を俺に向けられても、もう言ってしまったのだし、今はミカナの追求をどう逃れるか考えないと。



「パーティーを組んで旅をしていた時、せっかくの女の子の好意を無下にできないとか言って無意識にハーレムを作っていたユウガの馬鹿とは違って剣の修業ばかりして。わざと女の子どころか人自体自分から遠ざけていた剣士がねぇ……。」



「……」



「……というか喋らないのは相変わらずなのね。まぁ初対面の時に笑った私が悪いんだけど」



ミカナが申し訳なさそうな表情になり、視線をそらす。

どうやらこいつはレイヴンの声を聞き笑ったことがあるようだ。

今は大分反省しているみたいだが。



「レイヴンはミカナに対してまだ怒っているのか?」



ミカナに聞こえないように耳元に小声で聞いてみる。



「怒ってはいないさ。ただ……」



「ただ?」



「また馬鹿にされて、笑われて、驚かれたりするのかと思うと……」



「なるほど。トラウマになっているわけか」



「……」



レイヴンが地声を気にしていることは知っていたが、思っていたより重症なんだな。



どうにかして克服して貰いたいものだが、今は俺も人のことを気にしている余裕がない。



レイヴンの問題よりもまず俺は自分のことを解決しないといけないからな。



「……はぁ。それにしても僧侶といい剣士といい、なんであんたみたいな冴えない顔した一般人と付き合ったりしているのかしら?」



「はぁ!? いきなり何だよ」



「魔王を倒した四人の勇者パーティーの内二人が知り合いの一般人なんて中々いないわよ。剣士はさっき言った通り人をなるべく避けていたし、僧侶だって旅先で言い寄ってくる男が数えきれないくらいいたけどやんわりと誘いを断りまくっていたはずなのに……」



「え……セシリアが男に言い寄られまくっていたなんて初耳なんだけど、俺」



「ヨウキ……突っ込むところはそこなのか? というかヨウキはセシリアとどんな関係なんだ」



俺とミカナの話が気になったからか小声でツッコミと質問を同時にしてきたレイヴン。



というかアクセサリーショップの前でこんな長々と喋るのは迷惑だろう。



何より目立ってしまってミカナとレイヴンの正体がばれて騒ぎになるかもしれないし。



「……セシリアとの関係については後で話すよ。それより今はこの場を離れよう。さすがにこれ以上店の前で話していたら目立ってしまうし」



「……確かにそうだな。ユウガ達の二の舞いにはなりたくない」



「決まりだな。さっき予定していた通りレストランにでも入ろう。いい加減腹が減った」



「ああ」



さて、どうするかも決めたし。さっさとこの場を離れよう。



「……ちょっと、何アタシ抜きでこそこそ喋っているのよ」



俺とレイヴンが小声で話をしていたことが不服だったのか、仏頂面をしているミカナがいた。

問題はこいつをどうするかだな。



正直これ以上一緒にはいたくない。

こういうタイプの女性は苦手だし、なんだか口が滑って余計なことを言ってしまいそうな気がするし。



「じゃあ、俺とレイヴンはこれから昼飯を食いに行くんで、じゃあな」



「……」



俺は後ろ向きにひらひらと手を振り、レイヴンは何故かお辞儀をしてから俺の隣に来て歩き始めた。

これで昼飯を食いに行けるし、ミカナとは離れられるし解決っと。



「はぁ!? ちょっと待ちなさいよ」



しかし、世の中そううまくいかないようだ。

レストランを目指して歩き始めた俺達の肩をがっしりと掴まれる。



「何だよ? 」



「何だよじゃないわよ。まだ話は終わってないわ。それなのに、なんで急にレストランに行くなんて話になるのよ!?」



「いや、だって俺達お前と会わなかったら飯食いに行こうって話元々していたし……なぁ?」



「……」



俺は隣にいるレイヴンに同意を求めると無言で首を縦に振った。



「うぅ、それでもまだ話は……」



「はぁ、お前前回の騒動覚えてないのかよ。またこの店に迷惑かけるつもりか?」



俺はため息混じりに言う。前回の騒動が起こり沈静にかかった時間は五時間。



その間、このアクセサリーショップは店前で人がごった返してしまったものだから、商売にならなかったみたいだった。



というか女性職員はユウガを見ていて仕事が手についてなかったし。



「う……」



「このまま店前で長々と会話していたら嫌でも目立つだろ。俺はもうあんな騒動はごめんだ」



会話が止まり静まり返る。ここまで言えばわかるだろう。

しかし、ここで誰かの腹の音がなり沈黙が破られる。結構大きな音だ。




「……誰だ?」



ちなみに俺ではない。レイヴンを見ると首を横に振っている……ということは。



ミカナを見ると顔を真っ赤にして俯いている。

俺とレイヴンの視線に気づいたのか、顔を上げて睨みつけてきた。



「何よ!? アタシだってお腹空いただけよ。何か文句ある!?」



なんだか知らないが逆ギレし始めたぞ。

別に俺もレイヴンも何も言ってないのに。



「そういえば、あんた達レストランに行くんでしょ。ならアタシも行くわ。お腹空いたし、店の中なら話だって出来るでしょ。」



「おいおい、勝手に決めんな……」



「そうと決まればとっとと行くわよ。アタシこの辺で美味しい店知っているから」



「おい、ちょっ……まっ」



「……諦めろヨウキ。ああなったミカナは止められん」



俺の声を掻き消し、ずんずん前に進んでいくので、止めようとしたら、レイヴンが俺の肩をポンと叩きゆっくりと首を振っている。

おいおい……クレイマンじゃないが、なんでこんな面倒な展開に……。



「ちょっとー、早く来なさいよ。置いていくわよ!?」



くるりと後ろにいる俺達に振り向き、半ギレの表情で俺達に手招きしている。



「……別に置いていってくれてもいいんだけどな」



「……付き合ってやるしかないか」



俺とレイヴンはがっくりと肩を落とし、ミカナに着いていった。

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