プレゼントを選んでみた
レイヴンを連れて、前回セシリアとのデートで訪れたアクセサリーショップに来た。
「うわぁ……」
「……」
店に入るなり、俺とレイヴンの顔が引き攣る。
何故かというと店内は男女のカップルだらけだ。
男二人で来ている奴らなどいない。
周りを見渡せばイチャイチャしながら買い物をしているカップルが目に映る。
「……俺もう帰りたくなって来たんだが」
「気持ちは分かるけど……」
小声でレイヴンが俺の耳元に囁いてきたので、同じく小声で返す。
俺だってこの状況が続くのは嫌だ。
場違いな感じが半端じゃない。
でも、せっかく来たのだからプレゼントは買って帰りたい。
「……せっかくここまで来たんだし我慢しよう。俺はもう何を買うか決まっているからレイヴンが買う物を決めようぜ」
「……うーん。……わかった」
「じゃあ、探すか」
渋々といった感じの返事で了承するレイヴン。
さっさと決めて帰ろうと思い店内を物色する。
真剣な眼差しで商品を選ぶ。
イケメンが女性用アクセサリーを真剣に選ぶ図って見ていると様になるな。
そんなことを考えながらレイヴンを見守ること十数分。
「どのような商品をお探しでしょうか?」
迷っているレイヴンを見兼ねた女性店員に声をかけられた。
「……」
「あ……あの、お客様?」
「……」
声がコンプレックスなレイヴンは俺やデュークなど一部の知り合いとしか喋れない。
レイヴンも店員もどうしていいかわからない空気になっているので俺が間に入らねば。
「あ、すみません。俺、彼の友人なんですけど。彼結構内気な性格で……。」
レイヴンが喋れないことをフォローし、女性店員さんにどういった物が良いか相談する。
「そうですね……せめて、どういったアクセサリーをお求めかだけでも決めていただけないと何とも……」
「……髪飾り」
レイヴンは俺にしか聞こえないようなぐらいの声量で一言呟く。
なるほど、髪飾りだな。
「すみません、髪飾りで良い物ありますか?」
「少々お待ち下さい」
店員さんに髪飾りが売っている場所に誘導して貰い、オススメの商品を二、三個選んでもらう。
「……」
無言で一つの髪飾りを指差すレイヴン。
羽をモチーフにした髪飾りだ。
偶然だろうが、ハピネスにピッタリな物を選んだな。ユウガはアクセサリーのセンスゼロだったが、レイヴンは問題ないようだ。
俺は美術関係のセンスがゼロ? だからレイヴンも何かしらセンスがないものがあるだろうな。
そんな関係ないことを考えているとレイヴンがさっさと会計を済ませて戻って来た。
表情が微妙に明るくなっている。
良い買い物が出来たからだろう。
「……ヨウキのお陰で良いプレゼントを買うことが出来たよ。ありがとう」
「いやいや、俺何もしてないし……」
オススメを選んで候補を出してくれたのは、さっきの店員さんだし、その中から買う物を選んだのはレイヴンだ。
俺がしたことと言えば店員にレイヴンの言葉を伝達したぐらいだ。
「……次はヨウキの番だな……確かもう目星はついているんだったな」
「ああ、大丈夫だ」
俺は前回来た時にあったネックレスを探す。
同じ場所に置いてあるだろうと思い、探すと見つかった。
良かった、まだあった……。
「ふぅ……。売り切れてなくて良かった」
俺はすぐに手に取り、会計を済ませ、待たせているレイヴンの元へ行くと何故か指輪を見ていた。
ふと、今朝見た夢を思い出す。
まだ付き合ってすらいないのに指輪とか……早すぎだろ!
一体あの光景が訪れるのは何時になるのかと考える。
そう遠くない未来だと良いなぁと思いつつ、レイヴンに近づく。
「……指輪も買うのか?」
俺の声に反応したレイヴンが首を横に振る。
「……見ていただけだ」
小声で答えるレイヴン。
見ていただけというが、興味はあるんだろう。
俺は応援しているけど、相手がハピネスっていうのがなぁ……。
レイヴンももう少し積極的にアプローチできれば良いんだが、そんなに会う機会もないし。
今回のプレゼントでお互いの距離が近くなると良いんだが。
俺も他人の心配している場合じゃないな。
自業自得とはいえ、しっかり半月後にプレゼントを渡してしっかりした態度を見せないと……やばいな。
「用は済んだし、もう帰るか。……いや、腹減ったしどこかで昼食でも食べよう」
「……ああ、丁度昼食を食べる時間帯だしな。……今日は良い買い物が出来て良かったよ、ありがとう」
「俺も……レイヴンに相談して良かったよ。絶対に彼女と完璧に仲直りするから……」
お互いがお互いに感謝しつつ店を出る。
このまま、近くの酒場かレストランに入って飯を食べて帰る……はずだったのだが。
「……あんた剣士よね? 横にいるのは確か前に僧侶と一緒にいた冴えない顔の……」
急に後ろから声をかけられ俺とレイヴンは一斉に振り向く。
そこには前回ユウガのせいで起きた騒動に巻き込まれた勇者パーティーの一人。少女魔法使い、ミカナが立っていた。
……なんだか面倒な事が起きそうな予感。




