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元部下の近況について聞いてみた

俺はセシリアと過ごすことが好きだ。

恋人と一緒にいるだけで幸せで楽しく談笑できれば尚良し。



しかし、昔からの付き合いで家族同然のデューク、ハピネス、シークと過ごすのはまた別の安心感がある。

また、お互いがお互いを良く知る関係なので、遠慮せずに馬鹿騒ぎができる。



本音を語り合えるってところもあるかな。

まあ、その辺がこいつらと一緒にいる利点だ。

悪いことを挙げるならば……。



「お前ら俺で遊びすぎなんだよ!」



俺は椅子から立ち上がり叫んだ。

もちろん近所迷惑にはならない程度だ。

飲み食いしていて、隙あれば抜群のコンビネーションで俺をいじってくる。



扱いの雑さは魔王城時代から変わらないのでそこまで気にならないが……集中砲火し過ぎだろ。



「いやー、あの隊長が結婚っすからねぇ。もちろん、セシリアさんと付き合い始めてから、そう遠くない内にこうなるだろうとは思っていたっすけど。なーんか、こうして現実味を帯びて来たとなると……」



「……驚愕」



「びっくりし過ぎて色々と言いたくもなるよねー」



「お前らな。気持ちは……わからないから言わせてもらう。俺は変な魔法も使ってない。物を貢ぎまくったりもしてない。脅迫もしてないからな!」



セシリアとは普通に恋愛して結ばれたんだ。

文句をつけられる覚えはない。

胸を張って言える、これで三人も俺を見る目が……。



「それはどうっすかねぇ。そもそも最初にセシリアさんに告白した時って確か」



「……条件」



「部屋を通る代わりにセシリアさんを置いてけって脅したんじゃなかったー?」



「うっ……あ、あの時は少し自暴自棄気味だったんだよ。いつまでも俺が通せんぼしているわけにもいかないから通そう。それで告白しようって感じで」



最初は完全に勢いで告白したよな。

見た目ストライクだったから、内面をよく知ろうともしないでさ。

断られて当然だよ。



「貢いでいない……その点は合ってるっすね。隊長はその気になれば国を手に入れるとかもできるはずっす」



「……武力」



「気に入らない相手がいたらぶっ飛ばしに行くとかもやってないもんねー」



「俺はそんなことはしないし、セシリアも望まない」



できないとは言わないが、頼まれることは一生ないだろう。

権力が欲しいとかセシリアの口から聞いたことないぞ。



「変な魔法……使ってないっすね。隊長、魔法得意なのに戦闘以外の応用しないっすもん」



「……変装」



「隊長なら便利な魔法を沢山使えそうなのに変装は物理的だもんね。翼ちぎって角を折るとかさー。ハピネス姉の羽根も容赦なく全部抜いてたしー」



「……傷物」



「おいその表現止めろ」



騎士団長が戦闘準備万端で俺の所に来るだろうが。

変な勘違いされて襲われるとか冗談じゃないぞ。

一度あったからな。



「ええい、俺の話はもう良いんだよ。お前らの話も聞かせろ。デューク、エルフの里での出来事を詳しく!」



「俺の話っすか。そんな大したことしてないっすけど。まあ、里に入る時と俺の正体について話した時にごたついたくらいっすかね」



「……詳細」



「早く早くー」



果実水をちびちび飲みながらハピネスとシークが話の続きを催促する。

頼りになる兄貴分の恋愛エピソードを早く知りたいようだ。

俺の時と食い付き方が違う気がするのは気のせいだな、うん。



「入った時のごたつきってやっぱりエルフの里が閉鎖的で余所者が入ってくるな的なやつか?」



「違うっす。家出同然で里を飛び出したイレーネが帰ってきたってことでちょっとした騒ぎになったっすよ」



どうやらイレーネさんは家出娘だったらしい。

ドジっ子なのは昔からで薬の調合をしては分量を間違え、雑貨を作っては必ず怪我をして血の模様がつく。



弓の腕前は言わずもがな、味方を射る可能性も捨てきれないという有様。

そんな自分がいては迷惑になると考え、一筆残してイレーネさんは里を出たと。



「一筆残したって言ったじゃないっすか。自分を探す旅に出ますって書き残したはずが、自分を、の部分が何故か抜けてたみたいで探す旅に出ますになってたらしいっす」



「それで男を探しに行ってた扱いをされたと」



「そういうことっす。里についても背中に引っ付いて離れなかったんで余計にそう思われたんすかねぇ」



「帰郷しても自分のやりたいことは崩さないんだな。まあ、でも付き合ってるのは事実だし、悪いことではなかったろ。実際、そういう報告をするために行ったんだからさ」



結果的に男探しの旅をしていたことになるが。

別に問題ないように思える。



「里のエルフたちと交流して頃合いを見てから正体をばらそうと考えてたんすけど。イレーネがデュークさんは私を変えてくれたすっごいデュラハン騎士さんですっ、て紹介したんすよね。それでもう変な空気……というか弓を向けられたっす」



「おいおいおい!?」



何やってくれてんのイレーネさん。

そこは慎重に事を進めないとダメだろう。

いきなり正体ばらすとか何考えてんだ。



「……衝撃」



「デューク兄、良く無事だったねー」



「いやー、どう包囲網を突破しようか本気で考えたっすね。剣一本であの数のエルフに地の利もないと来たもんすから、絶望したっすよ」



「良く生き残れたな。まあ、この前に騎士団協定を結んだっていう噂を聞いたし、ここにデュークがいる以上、完全に話がこじれた訳ではないんだろうけど」



そんな状況からどう逆転したのやら。



「イレーネが弓と剣の腕前を見せて俺の指導のおかげって言った途端、態度が変わったっすね。もちろん、俺も自分の身の上をある程度説明したっすけど。……お偉いさんっぽいエルフがこんな貴重な人材を逃すわけにはいかんって言ってくれたっす」



「人材ってかデュラハンだけどな。つーか、そんな反応されるとか」



「ある意味デューク兄の彼女さんのおかげだよねー」



イレーネさんがドジっ子系エルフではなかったらどうなっていたのやら。

いや、いきなり正体をばらすことは普通しないからな。

行動的にはプラマイゼロ……なのか。



「それで他のエルフの指南も頼まれたんでこっちも騎士団に協力してほしいって交渉したわけっす。ちなみに俺が交渉している間、イレーネは家族に弓の腕前を披露していたっすね。父親は静かに褒め称えて、母親は感動して泣き崩れてたっす。兄弟たちからは胴上げされてたっすね」



「……祝福」



里を出る前のイレーネさんは相当やばかったようだ。

ミネルバでデュークに出会えて良かったなぁ。



「そんなわけで俺はイレーネとの恋仲を認められて指南役にも抜擢されたわけっす」



「突発的な問題が起きても解決する辺り、さすがデュークと思うな。イレーネさんの相手はお前しかいないよ」



「……相応」



「ひゅーひゅー」




「いやー、なんか照れるっすね。まあ、おれの話はこれくらいにして」



「逃げたな」



「……逃走」



「逃げたー」



そんなことはないっす、と反論するデューク。

いつも頼り甲斐のあるデュークをいじる絶好の機会だ。

ハピネスもシークも珍しく俺の側に立ってくれている。



ここは攻め時……いや、待て。

この二人が俺側に付くって妙だな。

何か考えがあるんじゃないかと疑ってしまう。



このままデュークをいじられ側に置いておけば……自分のことは触れられずに済む、と。

うん、これだな。



「俺やデュークの話をしたんだからハピネスとシークも自分の話をしないと不公平だよなぁ?」



悪い笑みを浮かべながら、二人に視線を向ける。

しまった、という複雑な表情を見せると二人ともすぐに俺から顔を背けやがった。

いや、逃さないよ。



「デューク、せっかくこうして四人集まれたんだから、全員の近況は報告するべきだよなぁ?」



「そうっすね。俺と隊長だけ話題の中心にいるのはおかしいっす。是非、二人の話も聞いてみたいところっすね」



デュークが俺の味方になった。



「……裏切」



「隊長の卑怯者ー」



「はっはっは、自分たちだけずっと聞き手側でいようなんて許されると思うなよ!」



二人は完全に逃げ場を失い、覚悟を決めるしかなくなった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 人と人外のカップルがちゃくちゃくとできていく…
[気になる点] 間違ってたら申し訳ないのですが、 デュークのセリフの 「そんなわけで俺は『ティール』との恋仲を認められて指南役にも抜擢されたわけっす」 の所、イレーネさんじゃありませんか?
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