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デートして知ってみた

レイヴンとハピネスの婚約が電撃発表された。

最初は困惑してどよめいた観客も落ち着きを取り戻すと二人に質問攻めを開始。



ハピネスは口数が少ないため、レイヴンがほとんど対応していた。

メモ会話していた頃が懐かしい。

ハピネスを庇いながらできる範囲で質問に答えていたな。



そこから情報屋と騎士たちが劇場に入ってきて、二人は守られながら会見する形になった。



タイミングが良すぎたのでおそらく、仕込んでいただろう。

突発的な行動ではなかったということだ。



俺とセシリアは目をつけられる前に劇場から脱出。

出る前にレイヴンと目が合ったんだが、俺に向かって軽く手を上げていた。



こちらは大丈夫だと言われた気がする……ハピネスのことは良いか。

レイヴンに安心して任せられることは前々からわかっていることだし。



「これから大変だろうな」



「そうですね。しばらく、レイヴンさんとハピネスちゃんもいまの私たちみたいになるかと」



「だよなぁ」



結婚に障害は付きものってことかね。

俺たちも他人事じゃないからなぁ。



「うん?」



知り合いの少女二人がきょろきょろと辺りを見渡している。

ちょっと声をかけてみよう。



「ティールちゃんにフィオーラちゃんじゃないか。二人ともどうしたのさ」



俺が声をかけると二人揃って詰め寄ってきた。

甘い雰囲気など一切無い、切羽詰まった感じで。



「ヨウキさん、シークくんは何処でしょうか。ここ最近、会えてなくて。全く話を聞いて貰ってないんです」



「会いに行ってもいなかったり、いても仕事中って言われて断られることが多いの」



「シークくんが忙しいというのはわかっているんです……が!」



「いくら何でも会えなさ過ぎなの!」



語尾強めで迫ってくる二人を前に後ずさる。

シーク、げっそりするまで頑張っていたのはわかるが、少しは二人のフォローもできなかったのか。



げっそりしていたシークを思い浮かべる……うん、難しいわ。

それでも普段、シークに話を聞いてもらっていた二人からすると寂しいものがあるんだろう。



匿うと約束したからな、居場所を教えるわけにもいかんし。

どうしようか悩んでいると……。



「見つけた……ヨウキさん」



ウェルディさんが駆け寄ってきた。

三人目と来たか、一応用件を聞いてみよう。



「ウェルディさん、初めての演劇お疲れ様」



「とても良かったですよ」



「そ、そんな……私なんてまだまだです……」



セシリアと二人がかりで褒めると頬に手を当て照れ始めた。

立派な舞台女優になるなら、褒められることにも慣れないといけないぞ。



「えへへ……って、いつまでも嬉しがってる場合じゃなかった。シーク先生を見かけませんでしたか。今、劇場があんな感じなので、午後の演劇開始時間が変更になるんです。シーク先生にも事情を伝えたいのですが」



何処にいるのかわからなくて、と困った様子を見せるウェルディさん。

ふむ、シークの休める時間が増えるのか。



「貴方もシークくんを探しているんですね」



「仲間なの」



「えっ、は、はい……お二人はシーク先生をご存知なのですね。もし良ければシーク先生探しに協力してくれませんか」



少女三人によるシーク探索同盟が結ばれようとしている。

……街中を無駄に走り回らせるのも可哀想だし、用件だってあるんだ。

すまんな、シーク。



「あー……シークなら俺の家で休んでるんだ。ほら、家の鍵を貸すよ。ただ、かなり疲れているみたいだから休ませてやってほしい。ここ最近、忙しすぎて満足に休めてないみたいだから」



三人の視線が俺の差し出した鍵に集中する。

すぐに飛びついてくると思っていたんだが、そんなことはせず。

即座に円になって会議を始めた。



「疲れているなら、シークくんに習った薬草茶を用意しましょう。メイド長に仕込まれた腕前を発揮する時です」



「癒しを届けるふわふわもこもこな式神さんを召喚するの」



「疲労回復には甘いものも良いですよね。差し入れで頂いたお菓子をシーク先生に持っていきましょう」



それでは作戦開始です、というティールちゃんの号令を合図に三人は駆けて行った。

……これで良かったんだろうか。



「セシリア、俺は正しい選択を取ることができたのかな……」



「後でシークくんに聞いてみるのが一番かと思います」



「女の子に囲まれるっていうのは大体の男にとって幸福なことのはずなんだがな」



シークにはまだ早かったかな。



「……ヨウキさんもたくさんの女性に囲まれると嬉しかったりするんですか」



「いや、それは聞くまでもないでしょ」



「と言うと?」



「俺はセシリアがいてくれたら充分だよ」



偽りなき本心を厨二スイッチを入れずに言い放つ。

満点の解答……のはずなのにセシリアは少しだけ不満げに口をとんがらせた。

俺は嘘をついてないぞ。



「えっと……お気に召しませんでしたかセシリアお嬢様」



「何故、急に使用人っぽくなるんですか。別に返答が気に入らなかった訳ではないですよ」



「では、私の何処に落ち度があったか。教えてもらえると助かります。二人の今後のためにも!」



「その設定続けるんですね。特に深い意味はありませんよ。ただ、ヨウキさんの返答を想像できたはずなのに、あのような質問した自分にちょっと思うところがあって……」



「成る程。つまり、自分がいれば良いと言ってくれることがわかっていたのに質問をした。まるで自分がその台詞を言って欲しかったみたいな感じになり、動揺してしまったと」



「詳しく説明するのは止めてもらえると助かるのですが……」



両手で顔を隠して表情を見せないセシリア。

絶対に今顔が紅くなってる、恥ずかしがってる。

こういう時は黙って後ろを向くのが良い男なはず。



「……黙っているということは私に何か要求を」



「しないから!」



何故、俺はせっかくの恋人とのデート中、コントをしているのだろうか。

俺は楽しいから良いんだが……セシリアはどうなんだ。



「ふふっ」



「あっ……」



顔を隠しているセシリアから微かな笑い声が聞こえた。

間違いなく、笑っていたな。

これ以上の追及はいらない、セシリアも楽しんでくれているなら良いや。



「家にはシークたちがいるしもう少しぶらつこうか」



「そうしましょう」



お互いの調子を整えるためにも歩くのは必要。

散歩をして心の乱れを直す……つもりだったのに。

見上げてみれば見覚えのある巨大な光の腕が。



最近、あれのせいで大怪我したからよく覚えているよ。

今度は何をやらかしているんだろうか。



「セシリア、あれ」



「わかっています。放っておくわけにはいけません。向かいましょう」



「了解」



セシリアとのデートは中断、光の腕のある方へと向かった。

中心地にはもちろん、勇者ユウガがいた。

こんな真っ昼間の街の中心で何をしているんだ……。



「今日は忙しい中、お集まりいただきありがとうございます」



計画的な行動だったらしい、ユウガの周りにはかなりの人が集まっていた。

側にミカナは……いないみたいだな。

巻き込まれないように建物の影からこっそり見守っているわけだが。



「ユウガの動き次第ではレイヴンに代わって取り押さえなければ」



「そこまで深く考えなくても良いかと。確かにレイヴンさんは今、忙しく手が離せない状態でしょうが」



まだ、ハピネスと婚約発表で身動きができないはずだ。

ミカナを呼ぶのは……身重だし酷だろう。

俺たちで対処しなければならない。



いきなり出て行って斜め上にこじれたら厄介だ。

ユウガの目的を知るためにもまずは様子見だな。

果たして何を……。



「この度……僕とミカナの間に子どもが出来ました!」



セシリアとそろってこけた。

俺とセシリアと違って集まった民衆は軽く騒ついている。

いや、発表していなかったっけ。



「守るべき家族ができ、勇者としての責務をこなすために僕は聖剣の更なる力を解放することに成功しました」



光の両腕に加えて兜と鎧の上半身まで出てきたぞ。

おいおい、この前俺と戦った時よりも強化されてるじゃねーか。

というか、少し無理してるだろ。

民衆の目は誤魔化せても俺の目は誤魔化されないぞ。



「この力で愛する家族とクラリネス王国の皆様を守ります。皆様の声や期待が僕の力の原動力になるんです。一緒にこれからの時代を生きていきましょう!」



勇者ユウガ、勇者ユウガと勇者ユウガコールが止まらない。

演説を終え、息も絶え絶えなのに光の鎧を出したままユウガは笑顔のまま手を振っていた……何だこれ。



「セシリア。ユウガはこの国で新しい宗教を興して教祖にでもなるつもりなのかな」



「……子を授かったという発表、勇者としての決意表明を同時にしただけなのですが。人を集め、自分の持つ力の全てを発揮しながら、というのがわかりません」



「以前、ミカナの古着抱き枕事件を公衆の面前で発表したけどさ。今回のはやり過ぎだよな」



意図的に目立とうとしてやったとしか思えない。

しかもレイヴンの婚約発表と同日に。



「あー……何かわかったかもしれん」



「わかった、とは?」



「多分だけどさ……いや、場所変えよっか」



ユウガは大丈夫じゃないけど、問題は起きないだろうし。

座ってゆっくり話そう。

どこか近くの店でもと歩いていたら気になる話を聞いた。

騎士二人の世間話が耳に入ってきただけなんだが。



「聞いたか。エルフの里と我が騎士団で協定が結ばれたことを」

「知ってるさ。エルフの里から数名、弓術の指南役として派遣されてくるんだろう」

「デュークが話を取り付けたらしいな」

「所属しているイレーネはともかく基本的にエルフは閉鎖的な者が多いと聞いたが……デュークはどうやったんだろうな」

「そもそもデューク自身が指南役で良いだろうに。イレーネの矢がまともに当たるようになったのはあいつが根気よく指導したからだ」

「弓術下手過ぎて里から降りてきたって言ってたもんな。そんなあいつが的に矢を……」



会話内容を聞いて色々とツッコミたい所があったな。

話していた騎士たちは知り合いでもないので、何も聞かなかったけど。



まあ、これで確定だ。

デューク、どういうことか説明してもらうからな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎回楽しく拝読しております。キャラがイキイキと動いていてずっと眺めていたくなります。
[一言] 更新お疲れ様です。 モテモテのシーク(^^;; 爆ぜろ!! セシリアの自爆して後悔する姿が^^ そして相変わらずお騒がせの勇者(><) 次回も楽しみにしています。
[一言] この作品唯一の公認ハーレム野郎シーク君だけがまだ先が見えないと思ったら、既に確定していたんだね… よきよき。そのままのシーク君で行くところまで逝くがいいw
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