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偽の未来予想図を書いてみた

セシリアの不意打ちを受けたものの、何とか回復した俺は帰宅することができた。

セシリアはミカナの一件が気になると言って屋敷に帰ったし。



花嫁姿の恋人とさっきまで一緒だったのに帰ってきたら広い家の中、ぽつんとひとりぼっち。

何だこの寂しい状況は。



セシリアの一言で慌てふためいた俺よ、今すぐ代わってくれ。

少し待てばセシリアが家に来るんだから、それくらいの時間待てよと言われるかもしれない。



しかし、先ほどまで幸せの絶頂期と言っても過言ではないくらいの状況にいたんだ。



恋しくなる心境に陥っても良いのではないか。

今の俺に残された物、それは俺の永遠の黒歴史であり一生の勝負服、黒雷の魔剣士セット。



そして、先ほど俺が描いたウェディングドレス姿のセシリア、天井に張り付いている俺の絵。



「どっかに飾るかこれ……」



式場に寄付するっていうのもありかなって思ったけどさ。

家に置いておきたいって気持ちも働いて結局、持って帰ってきたんだよなぁ。



「しかし、我ながら良い出来だ」



セシリアの美しさを完璧に表現できている。

全体的に白が映える絵だったのに、黒雷の魔剣士が入ったことで場違い感が……。



「もうちょい、良い感じの描けた気がする」



そもそも、俺とセシリア二人だけというのも寂しくないか。

結婚式って集合写真とか撮るもんだよな。



予行練習ってことで作成してみようか。

セシリアが来るまで時間があるし、集中してみよう。



「さて、やりますか」



俺は作業を開始した。

来てくれるであろう招待客を想像する。

ただ、普通に描くのもつまらないので多少の悪ノリを発動。



普通の集合写真は本番に描くのだから、今回は色々と足したり引いたりしてみよう。

あれやこれやと自室で絵描きに集中していると。



「ヨウキさーん……」



「えっ!?」



控えめに俺を呼ぶ声が聞こえ振り向く。

そこには扉を少しだけ開けてこちらを覗き込んでいるセシリアがいた。



「夕食の支度ができましたよ」



「う、嘘だろ」



「本当ですよ。家に入る時、扉を叩きましたが返事がなく、心配して渡されていた鍵を使い家に入ったら、ヨウキさんは部屋で何か作業をしているではないですか。声をかけようかと思いましたが、集中している様子だったので夕食の準備を終えてから改めて声をかけようと」



「そうだったんだ。ごめん」



まさか、時間を忘れる程に没頭するとは思わなかった。

そんなに真剣になって描いてたっけか、これ。



「夕食食べよっか」



「そうですね。何を描いていたのかは後で聞きます」



二人で仲良く夕食を食べた。

今日の仕事の疲れもあってか、腹が空いていたようでかなりがっついてしまったよ。



食事に夢中になるのも良いが、せっかくの二人での食事だ。

お互いに黙って食べていたが、そろそろ……。



「ところでセリアさんは何か言ってた?」



「ミカナの件ですね。何故、私に黙っていたのかと聞いたらその方が面白かったでしょうと返されてしまって」



「謀ったな、セリアさん……」



式場の依頼をセシリアに向けさせるためにミカナへの講義を今日にしたとか。

そういう風に仕向ける、セリアさんなら可能なのでは。

まあ、俺的には良かったと言えるけども。



「悪くない経験にはなりましたね」



「俺もその……見れて良かったんで」



「次に着る機会はいつになりますかね」



「そう遠くない未来にしたい。いや、絶対にする」



そのための努力は怠らない。

結婚式、絶対にやり遂げる決意を再確認したところで夕食終了。



片付けを二人でしたところで描いた絵をセシリアに評価してもらうことにした。

自室に入り、絵を見たセシリアの一言。



「これは……どこから突っ込めば良いのかわかりませんね」



「そんなに?」



「ヨウキさん、ストレスでも溜め込んでいるのではないですよね」



「はっはっは、セシリアと半同棲状態の今の生活でストレスなんて抱え込むわけがないじゃないか」



何を言っているのやら。



「そうですか……では、順番に説明してもらいましょう。まずは、レイヴンさんとハピネスちゃんなのですが」



セシリアが指差した先にはレイヴンとハピネスが描かれている。

二人のイチャつき度合い的にハピネスから腕を組みにいっている感じにした。



その方が現実的でレイヴンの照れている表情も上手く表現できたと思う。

何か問題があっただろうか。



「レイヴンさんの目が血走っていますよ」



「ハピネスからの愛情表現に照れているのと騎士団長として激務をこなしていることを考えてこういう感じにした。あとはハピネスという守るべき存在もできたんだし、頼れる男的な雰囲気を出そうかと」



考えた結果、目力を重視することにした。

本当は顔に傷とか体に傷痕とか、筋肉質にするとか考えたけどやりすぎかと思ってボツ。



「方向性が違う気が……それよりも問題なのはハピネスちゃんですよ。一体、何年後のハピネスちゃんを描いたつもりなんですか!?」



「あー……」



ハピネスに関してはやり過ぎた、認めよう。

レイヴンと腕組みしているハピネスは現在の姿とは明らかに違う。



髪は腰まで伸びていて体も全体的に成長している。

うん、まさに何年後かのハピネスだな。



「ちょっと未来を想像しすぎたかもしれん」



「本当ですよ。それに引き換え……」



今度セシリアが指摘したのはセリアさんとソフィアさんだ。

はっきり言おう、若かりし日をイメージして描きました。



「お母様から弱みでも握られているのですか」



「そういうことではない。別に全員、そうしたわけじゃないぞ。クレイマンは特に意識しなかったし」



若さよりも良き父って感じにしようとした結果。

普段の怠そうな垂れ目からキリッとした目にして、爽やかな笑みを浮かべ、クインくんの頭を撫でている子ども大好きパパにしたぞ。



「私の知っているソフィアさん一家ではなくなってるような……フィオーラちゃんはシークくんと一緒ですね」



「ああ、いつもシークはティールちゃんとフィオーラちゃんと一緒だからな」



両手に花状態でモテモテのシーク。

きっとあいつはユウガ程ではないが女性に苦労する道を辿りそうな気がする、ということで。



「えーっと、シークくんの左腕に抱きついているのがティールちゃん、後ろから顔を覗かせて首に抱きついているのがフィオーラちゃんですよね。この、右腕に抱きついているのは誰ですか。端にいるせいで腕のみ描かれていますけど」



「シークの三人目の女の子友達になる予定の子だ」



「予定って……」



「あいつは二人の女の子友達で終わるやつじゃない」



「どんな信頼ですか」



きっとシークを追いかける三人目の少女が出てくる……はずだ。



「カイウスさんとシアさんは……棺桶から人形に変わってますけど」



俺が描いた絵のカイウスは棺桶を背負っていない。

代わりに隣にシアさんそっくりの人形が描かれており、右手にマル、左手にバツの書かれた札を持っている。



将来的にカイウスはこれくらいのことをやるだろう。

間違いなく、結婚式はこれで参加するな。



「カイウスの愛の力を考えるときっとここまでやるさ」



「成る程……あの、そろそろ私がこの絵を見て一番、何故と思ったことについて聞いても良いですか」



「良いけど」



「人型の巨大なゴーレムについて、説明を要求します。あと、胸の中心部辺りに勇者様とミカナがいることについても」



俺が一番描くのに困ったユウガのゴーレムについて聞きたいと。

イメージ的にはユウガの体から光が漏れ出して巨大な鎧になったというものだ。



今はミカナの脅しという説得により聖剣はユウガの思い通りにならない状態。

だが、ユウガならミカナを理由にまだまだ覚醒を続けることだろう。



いつか巨大な何かを操るレベルにまで到達すると俺は思っている。



「来るべき時が来たらユウガはこれで戦うはずさ」



「ミカナが慌てている表情で描かれているような気がするのですが、私の気のせいですか」



「いや、それで合ってる」



ミカナはユウガのやることに慌ててから、怒って反省させるっていう流れができてるからな。



「この中心にドレス姿の私とスーツ姿のヨウキさんが描かれているんですよね」



「絶対にあり得ない集合写真でしょ。これから誰かに見られても悪ふざけで通るかなって」



「これを飾るんですか……ところでデュークさんは普通に描いたんですね」



セシリアがいつも通りの鎧姿のデュークを指差す。

デュークは今までかなりお世話になったからな。

俺からの感謝の印ということであまり弄らないことにしたんだ。



「デュークには一番相談に乗ってもらったからな。魔王城時代も苦労をかけたし。ちょっとだけ、いたずらしただけだよ」



「ちょっとと言ってもどこにいたず……」



どうやら、俺のいたずらに気づいたらしい。

目を擦ってデュークの絵を近くでじっくり見ている。

最初は信じられなかったみたいだが、確信に変わったようだ。



「ヨウキさん、デュークさんの鎧の腰のベルトなんですけど。私には人の腕に見えるのですが。あと、膝当ても足に」



「正解」



「正解ではないですよ。何故、デュークさんだけ仕掛けが怖いものになっているんです」



「いや、怖くないって。それ、イレーネさんが後ろから抱きついて離れてないってだけだから」



「初見ではそう思えませんよ!」



正面から見たら顔とか見えないだろうなってことで腕と脚しか描かなかったんだけど、失敗だったらしい。

イレーネさんの顔は後で描き加えておくか。



「こうして全員揃えるように俺たちの結婚式、どうにかしないとな」



「その前にヨウキさんの企画したハピネスちゃんの歌を披露するパーティーが先ですね」



「ああ、そっち優先だったな」



ハピネスにはユウガたちの問題解決のために歌を歌ってもらわないと……問題解決?



「なあ、セシリア。俺は大変なことに気づいてしまった」



「何でしょう」



「ハピネスの歌で皆んなのぎくしゃくしている雰囲気を何とかするって話だったのにさ」



「そうでしたね」



「俺らで動き回ってほとんど解決している状態になっているのは気のせいだと思う?」



「あっ……」



セシリアも気づいてしまったらしい。

これは普通にハピネスの歌、お披露目会ってことになりそうだ。

悪いことではないよな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 漫画版とか書籍版で実際に絵になって見れるのが楽しみ
[良い点] 毎回、楽しく読ませていただいてます! 今回は、本当に楽しそうな結婚式の予想図が、頭の中に浮かびました。 [一言] ガイとティールちゃんは、絵の中にいないのですかね? あまりにも通常通りでセ…
[一言] ユウガとシークの未来はこれで確実やろww
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