さらに仲間に相談してみた
不安な俺はさらなる仲間の元へ向かった。
情けない話だと何度も思うが少しでも意見が欲しい。
やはり、異性の意見も参考にしたいと思い向かったのは……。
「ハピネス、俺に力を貸してくれ」
「……気合」
「それだけじゃ解決しないんだよ!」
セシリアには絶対に見つからないよう、俺は屋敷の植込みに隠れてハピネスと会話している。
セシリアと次に会うのはプロポーズする当日と決めているからな。
来慣れた屋敷とはいえ忍ばねばならない。
「……幸福」
「その行動の意味はなんだ」
急に左手の薬指に着けられた指輪を見せてきた。
控えめとはいえ笑顔である。
あまり感情を表情に出さないハピネスがだ。
幸せ自慢なのか、ハピネスよ。
まあ、めでたい事なのはわかっているので拍手しておこう。
「……幸福」
「わかったって」
ちゃんと祝福しているのにどうしたのか。
「……相手、笑顔」
「そういうことか」
つまり、セシリアに笑ってもらえるような……幸福感を味わえるプロポーズをしろと。
「デュークといい、ハピネスといい持つべきものは優秀な部下だな」
「……元部下」
「おっとそうだったな」
「……家族」
「ん?」
「……訂正」
ハピネスが慌てて顔を横に振っている。
嬉しいことを言ってくれるな。
調子に乗ってにやにやしていたら脇腹に肘を入れられた。
うん、変わらないなハピネス。
「隊長だー」
「うわっ、シーク」
手を振ってこちらへと走ってくる三人目の元部下。
いや、家族だったな。
今は忍んでいるんだから、静かにしてくれ。
「ハピネス姉もいるー。隠れんぼ中?」
「してねぇよ。今はこっそりとハピネスに会いに来ただけだ」
「なーんだ。遊んでると思ったのに」
「俺は忙しいんだよ」
「……説得力」
「ないってか?」
当然と言わんばかりにゆっくり首を縦に振りやがった。
確かにこの格好で忙しいと言っても説得力ないわな。
「シーク。お前みたいな子どもにはまだ早い話で……」
「あー、シークくん発見しましたよ」
「発見なの」
両脇をがっちりと掴まれて逃げられなくされるシーク。
相手はもちろんティールちゃんとフィオーラちゃん。
最早、逃げること叶わず。
焦った顔しても無駄だぞ。
「あれ、ヨウキさんではないですか。そんなところで何をしているんです。隠れんぼですか?」
「隠れんぼなの?」
「だから、隠れんぼしてねーから!」
「……大声」
「はっ!?」
しまった、セシリアにばれる。
静かにしないと。
周りを確認しながら体を丸くして茂みへと身を隠す。
「怪しいの」
「怪しいです」
「怪しいなー」
「……変態」
「ちょっと待てハピネス。お前のは悪口だ」
続けて言えばバレないってわけにはいかないからな。
「……シーク、応援」
「んー……何のー?」
「シークくん。おそらくヨウキさんはプロポーズするんです。先日、守り神様が話してくれました。自分の気持ちを指輪に込めて渡すんです。成功すれば相手と一生を共にできるんですよ」
いやいや、その説明はちょっと違う。
なんか重いぞ。
「毎日愛を囁き合って一緒のベッドで寝て起きて朝一番に見る顔は鏡に映った自分じゃなくて相手の顔で……」
おっとティールちゃんのスイッチが入ってしまった。
顔を赤くしてうっとりした表情で結婚生活について語っている。
うん、ほっとこう。
「夫婦はそんなことをしてるの……? 帰ったら聞いてみるの」
やめなさい、クレイマンとソフィアさんが対応に困るから。
何故かティールちゃんの熱弁をフィオーラちゃんがうんうんと頷きながら聞く状況に。
シークの腕は掴んだままである。
放してあげようよ……。
「隊長ー。がんばー」
「シークらしいゆるーい応援だな」
「僕はそういうのあまりわかんないからさー。隊長が幸せになれるようにがんばれー」
「……訂正、相手」
「相手も隊長も幸せになれるようにがんばれー」
なんだろう、このぐだり感。
シークは二人に腕を掴まれたままでハピネスは箒を持ったまま。
でも……こいつらに真面目な顔で何かを言われるよりも普段通りの姿でいてもらう方が肩の力が抜けた気がする。
「……ありがとな」
「……礼、不要」
「大したことはしてないよー」
本当にこいつらは……。
「ハピネス姉ー、おめでとうパーティーとお疲れ様パーティー。二枚の幕用意しておいた方がいいかなー?」
「……必要」
「いらんわ! そういう相談は俺のいないところでやれ。つーか、お疲れ様パーティー用とか用意すんな」
どんな気持ちでそのパーティー参加すれば良いんだよ。
「……自信過剰」
「隊長ー、絶対なんてことはないんだよー」
「本当にお前等いつも通りだな!」
少しは気を遣ってくれよ。
これ以上、騒いだら人が集まってきそうだったので撤退した。
……相談しに行った意味はあったかという話。
気は楽になったな、以上!
「結局、どんな感じが良いんだろ……」
家に帰っても考えれば考える程、答えが出ない。
そもそも正解はあるのか?
「こんな時に救世主が現れないだろうか」
カイウス来てくれないかなぁ。
そんな期待をしていたら扉を叩く音が聞こえた。
俺のピンチを察してくれたのか。
期待を込めて扉を開ける。
「やあ」
勇者だった。
確かに勇者は救世主だな。
ただ、今はお呼びではない。
「ユウガ、残念だがお前では俺を救えないんだ……」
「顔を合わせて早々にその台詞は酷くない!?」
すまんな、俺も一杯一杯なんだ……。
しかし、追い返すのはさすがに申し訳ないので家にあげた。
「こんなところにいる場合じゃないだろうに」
ミカナが身重なんだから、サポートしなくちゃだめだろ旦那勇者。
「うん……そうなんだけど。レイヴンからヨウキくんが悩んでるって聞いてさ。ミカナは大丈夫。今、僕とミカナの親戚が来てるから」
「そうか。なんか悪いな」
「ヨウキくんにはお世話になったからね。それに困ってる人がいたら、手を差し伸べるのが勇者だからさ」
「そんな勇者ユウガはどう俺を助けてくれるんだ?」
「セシリアにプロポーズするんだよね。ヨウキくんなら大丈夫。頑張って!」
普通に応援された。
いや、そりゃ頑張るけどさ。
どう頑張れば良いのか悩んでるんだよ。
「ヨウキくんの気持ちにセシリアならきっと答えてくれるよ。安心してプロポーズすると良いよ」
「そんな助言されたの初めてだわ」
どういう目線で見てたらここまで断言できるんだ。
「プロポーズが成立したら僕に知らせに来てね。セシリアと一緒に。ミカナと一緒に祝福するから」
「なんで成功する前提で話を進めるんだよ」
「だっていつものヨウキくんなら絶対に成功させるとか言うんでしょ。レイヴンに聞いたよ」
レイヴン、ユウガに黒雷の魔剣士状態の俺の話をしたのか。
でも、確かにいつもならそう言うだろうな。
ユウガの言ってることは間違ってない。
「変に力を入れたら空回りしちゃうから普段のヨウキくんを見せれば良いんだよ。セシリアはそんなヨウキくんを好きになったんだからさ」
「ユウガ……何で途中から左手をちらちら見出したんだ?」
ユウガの言葉に感動していたところ、ちょいちょい視線が気になったのである。
あの視線はもしや……。
「実は今のはミカナから伝えられた言葉で……」
「おい、勇者」
自分の言葉で俺を救ってくれよ。
「前半のは僕の言葉。僕がヨウキくんなら大丈夫だって思ってるのは本当だよ。だって、ヨウキくんのおかげで助かった人は何人もいるんでしょ。自分のこともしっかり助けて幸せに……ね」
それじゃ、と言ってユウガは帰っていった。
全く、どいつもこいつも好き勝手言ってくれる。
「なんだか……やれる気がしてきた」
そんな訳で勇気づけられた後日。
セシリアから日程の知らせが来て。
準備を進めてたら、あっという間に時間は過ぎて約束の日になった。




