冷静になってみた
読者の方からの様々意見を参考にした結果、内容を編集しました。
一週間ぐらいでこの前書きは消しますね。
「俺をどうするってーのさ。やってみろよ、村人君ー」
未だに俺のことを馬鹿にしているが、そんなことをしていられるのも今のうちだ。
「フッ、いくぞ! 《ファイアーボール》《サンダーボルト》《アクアバルカン》《ウインドブレード》《ロックニードル》」
火、雷、水、風、土の初級魔法を放つ。
「威勢のわりにくだらないな。こんなもの効くわけがないじゃないか」
余裕をもって俺の魔法をすべて剣で吸収する。
まだまだ、この程度で終わるわけがない。
今のは挨拶みたいなものだ。
「《スパークストーム》《アクアストリーム》《ゲイルシュート》」
雷、風、水、の中級魔法を合成して放つ。
水の激流に雷を纏わせて、風の魔法で勢いをつける。地面を削りながらミラーに向かっていく。
「だからぁ、無駄だってーの」
またもや剣で切り伏せられて吸収される。
ニヤニヤと俺の方を見ている。
たぶん、俺のことを馬鹿だと思っているんだろうな。
「あんたつまんないからさっさとやられちゃってよ。」
こちらに走ってきて、切り掛かってきた。
俺は《瞬雷》をかけてミラーの剣撃を避ける。
剣技が多少優れているようだが俺には関係ないな。
「……あんたさあ、避けるのは上手いみたいだけど、いい加減武器だしたら? 俺に魔法は効かないってわかってんだろ。武器使った戦闘なら俺に勝てるかもよー」
「クックック、生憎だが俺は武器は使わない。俺は眼前に立ち向かってきた奴はすべて魔法で葬ることにしているからな」
本当の理由はせっかくファンタジーな世界に転生したのだから、魔法で敵倒したら俺かっこよくねと思ったからだが。
それに、いくらチート持っているからって武器を振り回す気にもならなかったからな。
まあ、魔族の時はちゃんと鋭い爪っていう武器があったけど。今は使う気はないな。
「あんた馬鹿すぎなんじゃない? そんなんじゃ俺には一生勝てないよ。《ブレイドウェイブ》」
避けつづける俺に苛立ちを感じたのか、剣で広範囲に衝撃波を放つ技を使ってきた。
余裕で避けれるが周りのセシリア達に衝撃波が届きそうだったので、あえて受け止めた。
「ヨウキさん!」
セシリアから心配のする声が聞こえる。
やばい、好きな娘に心配されるっていいな、燃えてきたな。
これ以上長引かせるのもあれだし、遊びは終わりにしよう。
受け止めていた衝撃波を魔法で霧散させて、一旦距離をとる。
「吸収出来るならしてみろ!《バーンワルツ》《シーパラダイス》《ハイパーストーム》《轟雷》《へヴンジャッジメント》《フォーリングメテオ》」
火、水、風、雷、光、土属性の最上級魔法を放つ。こんな芸当ができる魔法使いは俺ぐらいだろうな。
さすがのミラーも多少驚いているようだが、なんとか剣で切り裂き吸収したようだ。
「まだまだ! 《バーンワルツ》《シーパラダイス》《ハイパーストーム》《轟雷》《へヴンジャッジメント》《フォーリングメテオ》」
もう一度火、水、風、雷、光、土の最上級魔法を放つ。
所詮は人造の魔剣だし、吸収なら限界があるはずだ。ミラーもなんだか焦りの表情を隠せていないし、決まりだな。
この作業を四回繰り返したところで、翡翠色の刃にひびが入り出した。
五回目の最上級魔法乱舞で、ひびが広がり、刃が砕け散り柄だけが残った。
「くそっ! どんだけ魔力の量あるんだよ!?」
自慢の剣がなめていた俺に壊されてしまったことで動揺している。
だが、俺は敵が立ち直るのを待ってやるほど優しくはない。
「隙だらけだ!」
狼狽える時間など与えてやるはずがなく、奴の顔面に渾身の右ストレートをプレゼントした。
結果、後ろに吹っ飛び、無様に地面を転がる。
こんなんで俺の腹の虫は収まるわけがなく、《フォーリングメテオ》と《バーンワルツ》を打ち込んだ。
煙が晴れるとボロボロになったミラーが倒れ込んでいた。
「この俺を怒らせたのが間違いだったな!」
最後はもちろん決めポーズでしめる。
後ろを振り返るとセシリアはやれやれといった感じで頭を押さえていて、
ティールちゃんはガーゴイルにつきっきりで、こっちを見ていない。
ガーゴイルは虫の息だ。
……一応俺勝ったんだけどな。
とりあえず、シークの容態が気になるのでセシリアの元へ向かう。
「お疲れ様です、ヨウキさん。……最後のあれは必要なのでしょうか?」
あれとはおそらく決めポーズのことだろう。
「厨二モードに入って戦闘をしたら、終わりには必ずあれをするよう決めているんだ」
魔王城ではセーブしていたからやっていなかったからな。
それに、スイッチ入ったらやりたくなるんだよな、あれ。
「それよりシークの容態はどうだ?」
「ほとんど軽傷ばかりで、重傷には至っていないので、二、三日あれば回復しますよ。」
「そうか、良かった。次はガーゴイルの治療を――」
後ろから気配を感じ振り向くと倒れていたはずのミラーがガーゴイルに向かって、槍を投擲していた。
《ホーリーレーザー》で槍の打ち落としを試みたが、槍に当たった瞬間、魔法が弾かれた。
「くそっ、今度は人造魔槍かよ」
直接掴んで止めるしかない。
《瞬雷》を発動し、ガーゴイルの元に向かう。
間に合うか?
走りながら俺は信じられない光景を目のあたりにした。
ガーゴイルの前にティールちゃんが立ち塞がったのだ。
「娘! 我輩など放って逃げろ」
「出来ません。守り神様は私のことを何度も救ってくださりました。今度は私が守り神様をお守りします」
おいおいガーゴイルの奴愛されすぎだろ。
……とか考えている場合じゃない!
このままじゃ、ティールちゃんに槍が刺さる。
間に合ってくれ!
ティールちゃんに迫る槍に手を伸ばす。
「あ……」
俺が槍を掴むのと同時に、ティールちゃんの腹部に槍が突き刺さった。
間に合わなかった……。
「セシリアーー! 早く来てくれ!」
掴んだ槍を抜くと、腹部から血があふれ出てきた。
そのまま地面に倒れ込みそうになったので体を支える。
急いで回復魔法かけて止血をするが、元々体が弱いこともあってかなり危険な状態だ。
「ヨウキさん、後ろ!」
こちらに駆け寄ってきているセシリアが叫んでいる。
後ろを振り返るとミラーが第二射を放っていた。
「ふざけんな!」
二射目もガーゴイルを狙っていたので、今度こそ掴んで完全に無効化した。
俺に気づかれたからか、第三射はないようだ。
「はぁ……。今度は違うガキに邪魔されちゃったか。村人君にも気づかれちゃったし、もう無理かな」
ボロボロにしたはずなのに何故か傷が回復している。
セシリアがこちらに来たので、ティールちゃんの回復を任せ、俺はミラーの元へ向かう。先ほどとは違いキレてはいない。
何故かとても冷静だ。
無表情でミラーに近づいていく。
「実はさー、俺本当はクラリネス王国の勇者の動向について調べに来たんだよね。この村はたまたま通っただけなの」
ふざけるのも大概にしてほしい。
こいつのたまたまで、ガーゴイルやティールちゃんはこんな目にあっているというのだろうか。
だとしたら、許せないな。
「まさか、《マジック・イーター》を壊されるなんて予想外だったよ。それに、あんなに傷を負うなんてね。まあ、《貯魔の杖》のおかげで回復できたから良いけど、これ使い捨てなんだよね。でも、楽しかったし、いいかな。勇者の情報なんてどうでもいいや。もっとすごい情報手に入れたしね」
「このまま、逃げられると思っているのか?」
こいつはボコボコにしてやらないと気が済まない。
逃がしてなんてやるわけがない。
「村人君てやっぱ馬鹿だね。逃げる手段を考えてないわけないじゃん」
背中に隠していた弓を構えて矢を一本放った。
山なりの起動で放たれた矢はどんどん分身していき、矢の雨となり、セシリア達に襲い掛かろうとしている。
「守ってあげないと全員矢の雨に打たれるよ」
「くそっ!」
俺はセシリア達の元に急いで戻り、風の上級魔法で矢を吹き飛ばした。
ミラーがいた場所を見ると強烈な閃光が襲ってきた。
また、人造魔武器を使ってきたな。
目を開けるとそこには誰もいない。
逃げられてしまった。
山賊は退治したものの、シークは軽傷、ガーゴイルは両翼、片腕を失う重傷。
そして、ティールちゃんは体が弱いこともあり、かなり危険な状態になっている。
このままで済むと思うなよ……。
まだ、奴は遠くに行っていないだろう。
追いかければ、見つけることができる。
ただ、倒すだけでは気がすまないからな。
俺はある決意をした。
ヨウキが弱く見えたかも…
 




