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キレてみた

「何? 村人……じゃないよね。有名人いるし、横の人は村人っぽいけど」



シークと斬り合い続けているにも関わらず俺達を分析している。



「というか、いい加減にしろよなーこの……ガキっ!」



シークの短剣を弾いて、腹目掛けて強烈な蹴りを繰り出す。

直撃したシークは俺達の方角に飛ばされ、木にたたきつけられた。

そのまま木からずり落ちるが、すぐに立ち上がる。

表情を見るといつも笑っているはずのシークが笑っていない。

傷が原因ではなく、かなりキレているようだ。



口は閉じられていて、目は怒りに満ちているのか、男を睨みつけている。

男の方に向かおうとしたので肩を掴み止める。



状況の説明をしてもらわないといけないし、今のシークじゃあ、向かって行ってもやられるだけだからな。セシリアは傷だらけのシークに回復魔法をかけ始めた。



「隊長……僕まったく笑えないよ……」



そのまま、短剣を握りしめ男の方に向かおうとしたので、地面に抑えつけて止める。



「落ち着け! 何があったか説明しろ」



「あいつ……山賊からティールちゃんを守っていたガーゴイルを後ろから不意打ちしたんだよ……理由聞いたらね、魔物だからって言ったんだ」



「何だよ、魔物殺しちゃ悪いの? 俺がせっかく倒してやろうと思ったのに、そっちがいきなり斬り掛かってきたんだろ。あんたら保護者ならガキの躾ぐらいしろっつーの」



魔物だからって理由なく殺して良いわけない。

シークは馬鹿にされたのが悔しいのか声を押し殺して泣きはじめた。



「泣くぐらいなら最初から噛み付いてくんなよなー。まあ、その歳にしちゃあやる方だったぜ、相手が悪かったな、僕ー」



さらにシークのことを馬鹿にし始めた。

ガーゴイルのこと。シークのこと。

そして、魔物を一方的に殺していいというこいつを俺は許せない。



《瞬雷》で強化した足で近づき《ストームブロウ》で強化した腕で殴りつけた。しかし、奴が持っている剣で防がれる。

すると、腕にかけていた《ストームブロウ》がとけてしまった。



危険を感じたのでセシリアとシークの元に一度戻る。


「くそ、何なんだあいつの持っている剣は!?」



俺の魔法が消されたのはおそらくあの剣のせいだろう。

別に刃が翡翠色をしている以外大した特徴がない普通の片手剣に見えるが、怒りのせいで冷静な思考ができない。



「ヨウキさん引いてください。ヨウキさんじゃ相性が悪いです」



セシリアがシークの回復をしながら、俺の怒りを静めさせる。

しかも、俺じゃ勝てないと言っているようだし、何よりあいつのことを知っている口ぶりだ。



「セシリアはあいつを知っているのか?」


「彼はガリス帝国の勇者。名はミラーと言い、彼の持つ剣は人造魔剣マジック・イーターという剣です。あの剣は魔法を吸収する効果を持っているので魔法主体のヨウキさんでは……」


「待て待て、ガリス帝国の勇者? あの勇者君以外にも勇者がいたのか」



てっきりあの勇者君だけが勇者と呼ばれる者だと思っていたのだが。

それに人造魔剣というのも気になるな。



「ユウガ様はクラリネス王国から選出した勇者ということで、他の国々からも勇者は選出はされています。魔王城にたどり着いたのは私達だけでしたが……」



ずっと魔王城に引きこもっていたので、知らなかった。

中ボス部屋にいても外から来たのはセシリア達ぐらいだったし。

デューク達は情報を持ってないし、魔王達は論外だったからな。



「じゃあ、人造魔剣ってのはなんだ」



「ガリス帝国が開発した様々な効力を持っている剣です。他にも槍や槌などの武器があるという噂がありますが……」



「勇者君が使ってたあれは?」



「あれは本物の聖剣です。ガリス帝国は聖剣や魔剣と言われる物をまねして作っているんですよ」



そんな物騒な物の開発しているなんて戦争する気満々じゃないか。

シークには剣技だけで勝ったみたいだし、魔法は吸収されるときたか。

やっかいな奴だな。



「こんな強いならどうして魔王を――」



「いつまでこそこそしゃべってんだよ。邪魔しないなら放っておくからさー。黙ってろよー」



俺の言葉を遮り、ガーゴイルに向かって歩みよるガリス帝国勇者ミラー。

ガーゴイルにとどめをさす気だろうから、あわてて止める。



「待て! そのガーゴイルはティールちゃんを守っただけで、人を襲ったりは……」



「何言ってんの、あんた。俺はさあ、殺せればいいんだよ。だいたい魔物に良い、悪いなんて関係ないじゃん」



……何言っているんだこいつは?

狂っている殺人鬼みたいなことを言い出したぞ。



「……ヨウキさん、彼は魔王を討伐なんてする気なかったんですよ」



「は!? じゃあなんで勇者になったんだよ。国に選ばれたから仕方なくなったっていうのか」



「違います。彼は勇者選定を快く引き受けました。理由は――」



「魔物を殺す言い分が出来るからさ。いちいちギルドから依頼を受けるなんて面倒だろ? だから俺は勇者になったんだー」



とても愉快そうに笑い、ティールちゃんを蹴り飛ばす。そして、ガーゴイルの残っていた翼を切り裂いた。


「守り神様ーー!!」



「おっと、邪魔するなら……どうなるかわかるよね」



両翼を失ったガーゴイルに駆け寄るティールちゃんに剣を向け、脅しをかけ出した。


「待ってください。ガリス帝国勇者のあなたがクラリネス王国の国民に手を出せばどうなるか……」



「知らないよ、そんなの。戦争したいなら勝手にやれば、俺は関係ないを貫くし。それとも何? 今度はアクアレイン家のお嬢様が相手してくれるのかな?」



ニヤリと笑いセシリアに剣を向け出した。

今まで、いろいろ許せない言動をしてきたこいつだが、俺の前でやってはいけないことをしたな。

俺の中で、あるスイッチが入った。



応戦しようと、杖を構えて魔法を唱えようとしていたセシリアの肩を掴み無言で後ろに下がらせる。



「ヨウキさん? まさか……!?」



俺の異変に気付いたセシリアが動揺しだしたが、何かを悟ったのか杖を下ろした。

こうなった俺は止められないと理解したのだろう。



「何? あんたが相手すんの。あんたより、アクアレイン家のお嬢様の方が楽しそうなんだけどなー」



先ほどの攻防だけで、俺の力を把握しているつもりらしい。

チートをなめないでもらいたいな。

あんなもんが俺の実力なわけがない。

たかが、剣技が優れていて、魔法を吸収する剣を持っているだけの若造が調子に乗るのも大概にしてほしいな。

ただの無差別魔物殺戮者のくせに。



「クックック、貴様に地獄を見せてやる……。覚悟しろ!!」



シークとティールちゃんを泣かしたことやガーゴイルをボロボロにしたこと。

そして、俺の好きな娘、セシリアに剣を向けたことを後悔させてやるよ……。


早くネタに走りたい自分がいます……

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