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夜道を歩いてみた

焚き火って木をくべると良く燃える。

油も注いだら良く燃える。

今の状況はそれをやり過ぎた感じかな。



「……豪華」



ハピネスはレイヴンが決めていたオシャレで高級なレストランの食事を見て目を輝かせており。



「……ヨウキ」



レイヴンは少し恨みのこもった感じで俺の名をぼそっと呟き。



「……ふぅ」



セシリアは一仕事終えた感じで息を吐き。



「どうしてこうなった」



俺は頭を抱えている。

いや、そこまで重大なことが起こったわけじゃないのよ。

二人が帰ってきてレイヴンが食事に行こうって言ってきてさ。



予約してあった場所が高級レストラン、雰囲気も良くてね。

俺は黒雷の魔剣士だけど三人はちゃんとした服装で行ったわけ。



ドレス姿のハピネスとセシリアは多くの紳士を虜にし、ジャケットに黒のズボン姿のレイヴンもすれ違う淑女の頰を赤く染めていた。

俺も三度見くらいされたけどね、奇異な目でだが。



それでレイヴンの機嫌がよろしくない理由はというと。

席が原因なんだよ。



俺の隣にハピネス、前がレイヴンで隣がセシリア。

……おかしいよね、絶対。

俺が先に座ったのがいけなかったのか。

ハピネスのやつはどうして俺の隣に来たのやら。



座った瞬間、三人ともえっ? ってなった。

まあ、だからといって席順なんて決めたものでもなかったのでそのまま。



料理が運ばれてきてこんな雰囲気というわけだ。

……セシリア、この状況をどうにかしてもらえないかね。



ヘルメットを被っているので目は見てないだろうけど、口元は見えるはず。

俺の訴えをどうか感じ取ってくれぇ。



「ところでこの店はレイヴンさんが決めたんですよね。雰囲気も良くて料理も美味しいのですが、どこから情報を仕入れたのでしょうか?」



「……騎士団にはミネルバ出身ではない者が数多くいる。この出身の騎士に色々聞いたんだ。この街は海に面してなくて海産物は取れず干した物が多い。代わりに広大な土地と山がある分、山菜料理や肉料理が美味いとか」



「ハピネスは山で採れる物を使った料理が好きだったよな」



ここぞというタイミングで援護射撃。

森林出身のハピネスは昔から森で食料調達していたので山の幸という物が大好きだったりする。



「……好物」



既に料理を皿に盛ってルンルン気分なハピネス。

全員が盛り終わるまで待っているらしい。

ここだ、ここで食い付くんだレイヴン。



「……そうだったのか。ハピネスは山菜料理が好きなんだな」



「俺は言ってなかったからな……偶然だな」



「……感謝」



「……そうか」



「……感激」



「……そ、そこまで言われてもな。別に狙ったわけではないし」



「……大好き」



「……ハピネスの好物としっかり覚えておくから」



最後はレイヴンを見ながら言っていなかったか?

勢いで言ったろ、ハピネス。

レイヴンは残念ながらわかっていないらしいが。



今の台詞は大分頑張って言ったのか、こらえているけど恥ずかしそうにしているのが俺にはわかるぞハピネス。



もしかして俺の隣に来たのはレイヴンの隣に行くのが恥ずかしかったからか?

さっき良からぬ妄想をしていたし、そのせいかも。

だとしたらごめんなレイヴン。



「……美味、美味」



珍しくハピネスがにこにこしながらご飯を食べていて。

そんなハピネスを見てレイヴンは満足気な表情。

いやぁ、来た時はどうなるかと思ったけど良かった、良かった。



「本当に美味しいですね、ヨウキさん」



良くなかった。

対面だから手を繋ぐチャンスなし。

心なしか私への気遣いはなしですかとセシリアが言っているように聞こえる。



いや、そういうわけではないんですよ。

ただ、レイヴンとハピネスのことが気がかりだっただけで。



「うん、美味いな!」



これしか言えなかった。

山菜料理にテンションの上がったハピネス。

そのハピネスを見てテンションを上げているレイヴン。



セシリアは食べ過ぎたでしょうかと気にしているご様子。

俺は恋人を疎かにしたことについて反省中。

このままではまずいので、いざ行動へ。



「セシリアちょっと……」



「はい?」



「別れて行動しないか」



知らない街を夜道に探検するというのも悪くない。

ハピネスとレイヴンのためというよりも……個人的な目的のためにだ。



俺の発言に三人とも驚いていたが了承は早かった。

ハピネスがちょっと動揺していて笑いそうになったがな。



こういう時の黒雷の魔剣士はヘルメットがあるので助かる。

レイヴンが行こうかと漢気を見せハピネスと手を繋いで夜の街へと消えていった。



「では私たちも行きましょうか」



こちらは俺が漢気を見せる前にセシリアに先手を取られてしまった。

腕を組んでくれたのは嬉しいけど……これじゃあ手を繋げない。

これはこれで嬉しいから良いか。



「珍しいですね。ヨウキさんがあんなことを言うなんて」



「店では恋人であるセシリアへ配慮に欠けた行動が目立ったからな。挽回の場面を作ろうとしたまでだ!」



「今のヨウキさんは魔剣士さんでしたね」



理由を言うのが恥ずかしかったから、魔剣士になっただけです。



「いやぁ……まあ、ちょっと」



「今回はレイヴンさんとハピネスちゃんが主役の旅行ですから。あまり気を遣わなくても良いですよ?」



二人で歩いているのにこの発言。

俺のサポーター魂がセシリアにも移ってしまったのか。



セシリアも人に気遣いのできる心優しき聖……女様である。

とはいえ今は俺たち二人の時間、俺たちが主役だ。



「どこに行こうか」



「こういう時は男性が引っ張ってくれるものですよ」



「それは失礼」



やっている店も少ないせいか昼間と比べると歩いている人も少ない。

これなら広場辺りのベンチに座るってのもありだな。



腕を絡めているということでいつもよりも遅めに歩く。

気づかれないくらいの微速でな。



「こうして街中を堂々と歩くというのも久しぶりですね」



「ミネルバだと余計な情報屋が尾行してくるからなぁ」



「……勇者様とミカナが結婚しましたし。注目されそうな記事を書けそうなのは私やレイヴンさんということなんでしょう」



「そうなんだよなぁ……」



結婚してしまえば……ね。

もう黒雷の魔剣士でパートナー発言したんだし、追いかけないでくれぃ! って言ったら諦めてくれないかな。



「どうにかならんもんかな」



「……何がですか?」



「いや、もっと公然の前で出歩けないかと」



「どうして……歩いては行けないんでしょうね」



「それは……」



ヨウキのままで発表が難しかったからだ。

でも、もう良いんじゃないかなとは思う。

最近、黒雷の魔剣士として依頼頑張ってるし知名度はかなり高いはずだ。



難しい魔物討伐やら護衛やらだって失敗していない。

黒雷の魔剣士は迅速かつ完璧にこなす。

もうそろそろ……なんて。



「昼間のミネルバでこうして腕を組んで歩く日もその内来る……いや、絶対に来させるさ」



「昼間の大通りを堂々と腕を組んで歩くのは私としては恥ずかしいですね。……慣れていないので」



「今、やってるじゃないのさ」



「今は……人が少なくて顔も見えませんし」



はい、可愛い。

そして、暗がりなら腕を組んで歩いても良いという許可も得た感じだ。



「今日は良い日だ」



「ここでそれを言いますか」



「だって良い日だろ。食事して二人でこうやってのんびり歩いてるんだし」



ばたばたし過ぎな日々を考えたら、こうしてゆっくりできる日が貴重なんだ。



「それもそうですね。勇者様とミカナの新婚旅行は依頼で行きましたし」



「あれは依頼で行ったとか関係ない」



「……でも、色々と丸く収まったと言えませんか」



「確かに収まるべきところに収まったな」



ユウガとミカナ、デュークとイレーネさん。

ミカナはユウガと毎日幸せに……うん、暮らしている。

デュークもイレーネさんと順調に交際を……うん、続けている。



別に何かあるわけではない。

ただ、ミカナもデュークも……幸せ疲れをしているんだよな。



「私たちはいつ丸く収まるんでしょうね」



「うっ……」



「期待して待っていますよ」



そこで微笑むのはずるくないか。

優しさに甘えないようにしないといけない。

そろそろ広場が見えてくるはずだ。

ベンチにでも座ってミッションコンプリートせねば!

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