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元部下を悶えさせてみた

俺はレイヴンとハピネスを甘くみていた。

二人が会わなかった日数を埋めるようにイチャイチャは続いた。



俺も想像していなかったわけではないが、予想の遥か上を行かれたのである。

しかし、二人は連続して会話を挟むタイプではない。



寝たふりも続けるのが辛く、二人の会話が止まったところで会話を始めたんだが。

食べ物の話を始めると……。



「……そうだ。何か食べたい物はあるか」



「……一緒」



「……ああ。俺もハピネスと一緒なら何を食べたって美味いと思う。それでもハピネスの要望を叶えたくてな」



「……一緒」



「……分かったよ。旅行先の騎士団員におすすめの店を聞いておく。恋人同士で行けるような店を……な」



仕事の話を始めると……。



「……仕事、調整」



「……この日のために頑張りはしたが身体を壊すような無茶はしていない。そんな姿をハピネスに見せたくないしな。ハピネスは……どうだ」



「……同じく」



「……そうか」



もう思い切ってユウガとミカナの新婚生活の話を始めたら、二人とも黙った。



新婚生活とはどのようなものかを知りたかったのかもしれない。

ユウガとミカナの新婚生活は毎日イベント発生しているらしいから参考になるかわからないが。



セシリアはミカナ、俺はユウガから幸せ自慢を聞いたりしているのでネタは豊富だった。



おはよう、おやすみでキャーキャー言っていたのが日常となってマンネリ化……することはなく。



ユウガは毎日ミカナよりも早く起き、色んな角度からおはようを言ってミカナをドキドキさせているとか。



ミカナは頑張ってセシリアから料理を習っていてユウガに美味しいと言われるのが嬉しいとか言ってるらしい。



ユウガはミカナの手料理なら何でも美味いって言いそうだけどな。



そんな新婚生活の話を聞き耳立てていた二人。

一緒に住むということのイメージは湧いただろうか。

ちなみに俺とセシリアは最近、半同棲みたいな感じになっているので特に動じたりはしなかった。



寝たふりからの他者の新婚生活話をしていたら、景色が変わるのも早い。

近すぎず遠すぎずの街を選んだためか、話し込んでいる内に目的地へ到着した。

到着したんだけどさ……。



「それじゃあ、俺は騎士団に顔を出してくるから」



と言ってレイヴンが途中離脱。



「私は教会に挨拶へ行ってきます」



さらにセシリアも離脱した結果。



「……ふっ、この俺と一緒とは」



「……不幸」



「何故だ」



お互いに恋人不在で街に取り残されることになった。

二人とも夕方には宿泊予定の宿に来ると言っていたが。



「荷物もあることだし、宿へ向かうか。レイヴンは良い宿を予約していると言っていたしな。この俺にあった素晴らしい宿に違いない」



「……馬小屋」



「笑えない冗談だな。……レイヴンがハピネスを喜ばせるために用意した宿だぞ?」




「……期待!」



ハピネスのテンションが上がった。

期待感を胸に宿へと向かう。



まあ、御者さんが宿まで送ってくれるらしいので俺たちは揺られてるだけだが。

着きましたよと言われ馬車を降りる。



「……おお!」



「……豪華」



貴族が宿泊に使いそうな宿である。

いやいや……これは場違いってやつじゃないの?

レイヴンから予約票みたいなの預かってるけど、入れるのかな。



入り口前に屈強な黒服の方が並んで立ってるんだけども。

馬車は荷物降ろしたら帰っちゃったし……行くしかないな。



「ご予約は?」



「これだ」



黒雷の魔剣士の俺を見ても眉一つ動かさないとは……相当の手練れだな。



「……無反応?」



「お前が言うと別の意味に聞こえるんだが」



こんな怪しい格好の相手なのに? みたいな目で見るのを止めろ。

まあ、この連中もこの規模の宿のスタッフなんだし、かなり優秀ってことなんだろう。



「……名簿に名前がありました。どうぞ、お通りください」



宿へと入ると別のスタッフに部屋まで案内される。

レイヴンは部屋を二つ予約したようだ。

鍵を渡されてスタッフは戻っていった……さて。



「部屋割りはどうしようか」



「……男女」



まあ、それが常識的な割り当てだな。

しかし、本能的に考えたらどうだろうか。



片方は婚約済み、片方は久々に会って旅行。

そんなシチュエーションで夜は二人でと言わないやつはいないはず!



「なあ、ハピネス。ここはやっぱり……っていねぇ!」



相談の余地はないと言わんばかりにさっさと部屋に入っていった。

……いや、俺とハピネスが部屋を別にするのは当然か。



俺とハピネス、セシリアとレイヴンの部屋割りが一番訳がわからんからな。



「二人はまだ帰ってこないとはいえ、出かけるのも微妙な時間だ。ゆっくりするかな」



さすが、高級宿なだけあって部屋も広い。

ベッドはふかふかで充分安らぐことができそうだ。

高級ベッドの寝心地を確かめているとノック音が聞こえた。



こういう高級宿といえば……何かしらのサービスか。

そんなことを考えながら扉を開けると。



「ハピネスかよ」



「……侵入」



同意も得ずに部屋へと入ってくるハピネス。

俺の部屋とかじゃないんで構わないが。



適当に座って対面……って普段着に着替えたのか。

メイド服で活動も確かに変……いや、それが好きな副ギルドマスターもいるな。



「それでどうした?」



「……暇」



「まあ、それは仕方ないだろう」



レイヴンが帰ってきたらイチャイチャすれば良いさ。



「俺と出かけるってのもなぁ?」



「……笑止」



「そこまで言うのかよ」



というわけで出かけるのはなし。

俺も乗り気じゃないからな。



「それにしてもレイヴンのやつかなり頑張ったんじゃないか。こんな宿を予約するなんてさ。かなり無理したろうに」



「……同意」



「近くにはハピネスの好きな森林もあるし」



生まれが森なハピネスは森が好きだ。

昔はよく木の上に登ってシークと空を眺めていたんだとか。

その辺もレイヴンは考えてこの街を選んだんだろうな。



「……満足」



「おいおい、まだ街に着いたばかりだぞ。満足って言うのは早いって」



むしろここからが本番だろうが。



「森の中を二人並んで歩くのも悪くないぞ。夜の星を眺めながら二人の将来を話し合うとかな」



「……将来」



「この辺は高級宿が並んでるから景色の良い飲食店もあるぞ。そこで二人の将来を話し合うとか」



「……将来」



「買い物する場所も豊富だし。二人の将来を話し合いながら家具とかを見るのも……」



「……隊長」



しつこく言い過ぎたのかハピネスがふくれ顔。

いや、レイヴンのためにも布石を打っておくのも良いかなって。



「……不要」



「はいはい。そういうことは外野がどうこう言うもんじゃないよな。……でもさ、こうやって旅行に来て勝負をかけるってよくあるよな」



「……一理あり」



「しかしだ。ハピネスはもう馬車の中である程度、レイヴンと色々済ませて……って痛い痛い!」



ハピネスのやつ恥ずかしがって叩いてきやがった。

別にイチャついていたのは真実なんだから良いだろう。



手を繋いで抱き合ってさ。

キスまでいってもおかしくない空気だったからな?

俺とセシリアが新婚旅行の話を始めなかったらキスしてたろうに。



つーか、いつまでバシバシと俺を叩いている気だ、こいつは。



「俺が悪かったから落ち着け。俺が言いたいのはな。馬車の中なんて物語だと導入部分みたいなもんなの」



「……導入」



「そうだ。本編があり結末があるもんだ。導入部分であれだぞ。レイヴンのやつは一体、何を持ってくるのか……そう思わないか」



「……前座」



「そうだ。きっとすごいぞ」



何がすごいのかはわからんけど。

馬車の中以上と考えたらな……うん。

過激なことは考えない。



ハピネスは何を想像したのか頰を赤らめ、手をきゅっと軽く握り震え始めた。

うーむ……良からぬ妄想中か?



「……この宿のベッド広いよなぁ」



ぼそっと呟いただけなのにハピネスは目を見開いてベッドへと視線を向けた。

もう一声かな。



「ふかふかで気持ち良くて思い出に残るだろうなぁ」



この一言が決めてでハピネスは部屋から飛び出していった。

隣の部屋に戻ってベッドにダイブして悶えているに違いない。



これでレイヴンへドキドキ倍増まではいかなくても意識はしてしまうだろう。

ハピネスは普段から感情を顔に出さないが、ドキドキには弱い。



つまり、レイヴンの押しに弱い。

レイヴンはガンガン行こうぜ状態でハピネスは今の俺の誘導であんなこんな妄想状態。



二人にとっては忘れられない旅行になること間違いなし!



「俺は俺でセシリアの指のサイズを……」



レイヴンとハピネスはもうほっといても大丈夫。

今度は俺のターンだ。

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