↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
272/424

友人の焦りを見てみた

「その人はよく遊びに行く屋敷の使用人のお姉さんで」



この時点でレイヴンには気づいて欲しい。

しかし、歳下の少年の恋愛相談ということもあってか気づいた素振りは見せず。



ふんふんそれで、と完全に話を聞いてからという余裕を見せている。

歳上のお姉さんの対応としては百点かもしれないけどさぁ。



「慣れた手つきで仕事をこなして僕の話も手を動かしながら聞いてくれて。偶に冗談も言ってくる楽しいお姉さんなんです」



ハピネスが言う冗談て大体が俺を絡めた弄りだろう。

俺は楽しくない件だからな、あれ。



「そう……でも、さっきは好きな人ができたらって言っていたわね。それはどうして?」



「それは、その人に好きな人……いや、彼氏がいると思うんです」



クインくん、察しが良すぎて怖い。

いや、ハピネスが直接話題に出したのかもしれない。



「思うだけなんでしょう。確証はあるの?」



レイヴンも俺が気になった質問をぶつけている。



「時々、屋敷の外を見ていることがあるんですけど。その顔が本当に珍しく残業をして遅くなった父を待つ母の顔と似ているんです」



ここで有力な情報を入手、クレイマンはソフィアさんに愛されていると。

……今更感あるな。



まあ、ハピネスはソフィアさんの師事の下、成長しているからそういうところが似てしまったと。



「あれは間違いなく愛する誰かを待つ顔です。最近、会いに行ってもずっとそんな調子だから、きっと相手の人と長らく会えていないと思うんです」



クインくん、正解だ。

君の不正解は目の前のお姉さんに相談してしまっていることだけ。



「僕はまだ子どもだから……大したことはできません。でも、好きになった人の切なそうな表情を毎日見るのが辛くて。こんな相談、身近にいる人にはしづらいし。お姉さんに話を聞いてもらってるのも卑怯ですよね。知り合ったばかりの人だからって」



話を聞けば聞く程、レイヴンとハピネスが心配になってくる。

クインくんの情報が正しいとしたら、ハピネスが寂しがってるってことよね。



「クインくんの好きな人の相手に心当たりは?」



「ないです。あ、でもヨウキさんやシークくんとは古い付き合いみたいです」



レイヴンの表情が固まった。

どうやら、色々と察したご様子。



今までの会話でもヒントがあったし、俺とシーク共通の知り合いって言ったらもう答えだからな。



「どうしたら元気になってもらえるのか。お姉さんが同じような立場ならやはりそっとしておいてもらいたいですか?」



「……そうね。そういう時は当人同士の問題だから」



「そうなんですか」



「どんな事情があったとしても相手を我慢させるのは良くない……わね」



自分の首を絞めているような発言である。

レイヴン、顔色悪いぞ大丈夫か。

クインくんは気にしていないみたいだが。



「そうですよね。忙しいのが理由かは知りませんが。確かに普段あまり表情に出ない人なんですけど。それにしたってあんな切ない表情をさせるまで放置なんてあんまりです」



もう止めてくれ、クインくん。

それ以上言ったらレイヴンが灰になっちゃうから。

さらさらと風に乗って飛んで行っちまうよ。



「まあ、クインくん。君の声はきっと誰かに届いているだろうから、その辺にしておきな。ほら、試食のケーキでも食べよう」



これ以上はレイヴンの心が保たないのでケーキを勧めて強制終了。



「そうですね。知り合ったばかりのお姉さん相手に少々熱くなり過ぎました。すみません」



何とか話を逸らしたわけだが、レイヴンの表情はよろしくない。

クインくんの話はかなり効いたようだ。



「気にする必要はないわ。私の助言が役立つと良いわね。それじゃあ、私はヨウキとこれから行くところがあるからこれで失礼するわね」



問答無用で腕を絡められて立つことを要求される。

相当切羽詰まってるらしい。

話があるってことだな、わかるよ。



ただ、このまま帰ったら奢るとか言っておいて何だそれってなるし、お金を置いていこう。

一番、この場でしっかりしてそうなクインくんに渡すかな。



「クインくん、これ代金ね。追加のケーキ二十個頼んでもお釣りがくるくらい渡しとくから」



「えっと……代金にしては多くないですか?」



「足りなかったら恥かくからね。シークがちょっと怪しいし。余ったら何処かで遊んでいけば良いよ」



それじゃあね、と挨拶し引きずられるようにしてケーキ屋を出る。



話し合いのため俺の家に移動かなと思ったら、店の前でレイヴンが両手で顔を覆い出した。



「まさか、ハピネスがそんなことになっているなんて」



思ったよりもダメージが大きいようだ。

クインくんたちの前では出さないように我慢していた

みたいだが、限界がきたらしい。



「まあまあ、落ち着けって」



背中を軽く叩くが効果なし。



「これが落ち着いていられるか」



「レイヴンにも事情があったんだしさ。それに寂しがるなんて会いたいって思われてる証拠だろう。今度会ったら寂しがらせた分、沢山甘えさせてやれば……」



「寂しがらせてしまったこと自体が問題なんだ。何をやっていたんだ、全く。自分が嫌になってくる」



自己嫌悪しているところ悪いが俺はここから早めに移動したい。

今の状況は知らない人が見ると連れの女性を怒らせてるダメな彼氏の図になってるから。



何とかレイヴンを落ち着かせて俺の家へと向かう。

移動中も自分を責めていたレイヴンだが、俺の家に着き椅子に座って休むとようやく落ち着いた。



「すまん……変装しているのに取り乱した」



「いや、そこまで気にする程でもなかったよ」



レイヴンの変装を見破られてはいないと思う。

途中で俺も演技入れて情けない彼氏を演じていたからな。



「……ヨウキには迷惑をかけたな」



「いいって。それよりも……また頼み事ができたんじゃないのか?」



「……ああ。俺はこれから何としても休暇を取るために働く。最近働き詰めだし、長期休暇を取っても文句を言われないように仕事の整理をしてくる。ヨウキにはハピネスに休暇を取れるか確認してきて欲しいんだ。そして、わかったら情報を……」



「渡してほしいってことだろ。任せてくれ」



それくらいなら朝飯前だ。



「……助かる。それじゃあ、俺は騎士団に行って仕事をしてくるよ」



「えっ、今日はもう休んで明日から……」



「それじゃあ、遅いんだ。何としても二人の時間を作る」



じゃあな、と言い残してレイヴンは裏口から出て行った。

女装したままだから、俺が姿を消してやらなくても大丈夫。

あの様子だと旅行とか考えてるっぽいな。



レイヴンにもセシリア同様に情報屋が張り付いてるから、俺の家でしかデートしてないんだよ。

もういっそのことレイヴンも恋人宣言してしまえば良いんじゃないか?



ハピネスがミネルバを住みづらくなるとかそういうことも考えているんだろうけど。

まあ、俺はハピネスに休暇を取れるか聞きに行きますか。



軽い気持ちで屋敷に向かったわけだが、俺は油断していた。

レイヴンとハピネスのことに頭が一杯になっており、周りが見えていなかったんだ。



その結果、俺は……こうしてセシリアの前で正座をしているのである。



理由は簡単、俺よりも先に屋敷へ帰ってきたシークがセシリアに俺が女の人と一緒に出かけていたと話したらしい。

あいつ、ケーキ奢ってやったのに余計なことを。



屋敷に入ったところですぐに捕まり、先程までお楽しみだったようで……的な感じでセシリアの部屋まで連行。


その場で状況説明するような空気でもなかったので大人しく付いて行って。

とりあえず、正座したわけである。



「……シークくんの話は本当なんでしょうか?」



別にやましいことはしていない。

一緒に歩いていたのは女装していたレイヴンだ。

セシリアも説明すれば簡単に理解してくれる話である。



レイヴンがハピネスのために婚約指輪を選びたいから、付き合ってくれと……。



ここで俺は大変重要なことに気づいた。

セシリアへ贈る婚約指輪を用意していないことに。

これ全部説明したら、セシリアに意識させてしまうんじゃないか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。