男子会をしてみた
徐々に面子が集まってきたのだが、予定と大分違う。
予定だと俺、デューク、レイヴンの三人だったはずなんだけど。
そこにユウガとカイウスが追加されている。
あと……棺桶があるからうん、そういうことだな。
「……予定よりも人が多いような気がする」
「まあまあ、そう言わずに」
「意見が欲しいっていうなら人数は多い方が良いっすからね。俺とレイヴンで呼んだんすよ」
「……俺たち二人だけではヨウキの悩みを解消するには力不足かと思ってな」
二人が気を遣ったらしい。
こんなに俺の家に人が集まるのは初めてなので驚いていたりするのだが、そんなことを気にしている場合ではないので話を進める。
「今日は野郎だけで話を……」
ガタガタと棺桶が揺れる。
失礼、女性の参加者が一名いた。
「カイウス。出してあげたら?」
「今は昼間。陽が出ている時間帯は万が一の危険があるからね。この中で休んでいてもらうしかないんだ」
ガダガタと揺れが増した。
これ入れたままの理由違うな。
ユウガを抜いた三人で目配せする。
なんかあったのなら聞くべきかと……はっ!?
「その棺桶……何かあるの?」
ユウガは事情を知らないんだ。
一回見ているはずなんだけど……あの時はミカナとの一件があったからな。
ちょっと揺れる棺桶も目には入らなかっただろう。
突っ走る時は周りが見えなくなるからな。
今回は正常な状態だから気になったんだろう。
カイウスのやつどうするんだ。
「……この中には僕の愛する妻がいるんだ」
おいおい……素直に言っちゃったよ。
この発言には事情を知る俺たち三人もびっくりである。
正体ばらす気なのか。
「えっ!?」
「残念ながら今は顔を合わせることは叶わないんだけどね」
カイウスが儚げな表情でそう言うとユウガは何も言わなくなった。
いやいや、揺れてたんだからもっとつっこむべきだろうに。
こちらとしては助かるけど。
会話を聞いていたのか、空気を読んだシアさんも音を発しなくなったし。
首を捻っているユウガ……深く追及はしないでくれ。
しかし、中に入れたままなのはユウガが原因ではないらしい。
まあ、カイウスの悪ふざけだろう。
この二人なりのいちゃいちゃだから気にしないようにするか。
こうして魔族、デュラハン、吸血鬼、勇者、騎士団長による男子会が始まった。
「……それでヨウキはどんな悩みを持っているんだ。俺は詳しく聞いていないんだが」
「俺も聞いてないっすね」
「僕も聞いてないな」
「私もだ」
全員が集められた理由を知らないと。
やっべ……レイヴンとデュークに説明しないで招集かけてた。
カイウスとユウガは事情を知らないのに来てくれたのな。
どうやら、俺は気づけば最高の仲間がいたようだ。
四人の視線が俺に集まる中、俺は思い切って悩みを打ち明けた。
「改めて俺の彼女の完璧さが見えてしまって俺の立場がなさ過ぎて困ってるんだ」
「……惚気っすか?」
「違うわ!」
「いや……つまり俺の嫁自慢っすよね。それって悩むことっすか。セシリアさんが色々とできるのは前々から分かっていたことじゃないすか」
デュークの尤もな意見が俺に突き刺さる。
わかってはいたんだけどさ。
「いや……最近、セシリアが泊まりに来ることが多いんだけどさ。家事を完璧にこなしてるわけよ」
「それがなんすか」
「将来結婚したら家のこととか全部セシリアがやって俺の威厳とか無くて立場も小さくて最早存在意義を疑われるようになるんじゃないかと」
「あ、そういうことっすか」
「そういうことっす。それが俺の悩みなんだけど……どうかご意見をもらえないか」
四人に意見を求める。
ここに集まった男たちは全員タイプが違う。
色んな意見が出そうだ。
こういう相談で真っ先に反応するのはやはりカイウスだろう。
「そうだね……妻に劣等感を抱いてしまったという相談を受けたことはある。男として威厳を保ちたいと……まあ君と同じことを言っていたかな」
「その時はどんな助言をしたんだ」
「彼女と同じ土俵で勝負するには時間がかかる。練習している内に心が折れるだろうから、彼女とは別の切り口で支えるのはどうか……と言ったかな」
さっきユウガと話していたような意見か。
別の切り口から攻めてみるか……。
「……セシリアに隙はないぞ」
レイヴンがぼそっと呟く。
「うん。僕もセシリアが家事関連でヨウキくんよりも劣っていることがあるとは思えないかな」
ユウガまでこう言う始末。
事実だから何とも言えない。
料理に掃除はもちろん、お金の管理や買い物もお任せあれというハイスペック。
そこに俺が入り込むスペースはないと。
……おいおい、これじゃあ対処法なしで終了するぞ。
「……ユウガはミカナと結婚して一緒に暮らしているだろう。どんな生活をしているのかヨウキに聞かせてやったらどうだ。参考になるかもしれん」
「僕とミカナの生活かぁ……さっきヨウキくんにも話したけど、料理はミカナが頑張っているよ。掃除や洗濯とかは分担してるかな。お互い忙しい身だから、片方に押し付けたりはせずにね。まだ、一緒に住み始めて日が浅いから慣れないこともあるけど……」
「分担か……」
「うん。確かに僕よりもミカナの方が手際良くてミカナがじれったいって手伝いに来ることもあるよ」
やはり家事スキルに差があるとそういうことが起きると。
俺としてそれが申し訳ないんだよ。
だから、どうしたらいいのって話なんだけど。
「そんな日はミカナのために時間を使うかな」
「は?」
「だってさ。仕事も終わって夕食も食べて片付けして一段落でしょ。ミカナが手伝ってくれたおかげで時間が浮いたんだなら……僕はその時間、ミカナを愛するために使ってるよ」
これが嫁を持つ男の台詞。
愛するために使ってるか……無言で拍手を贈っておこう。
「もちろん、ミカナに甘えてばかりじゃいられないから僕も日々努力しているけどね」
「向上心を忘れない……か。君の家庭は幸せだね」
「もちろん。ミカナにはたくさん迷惑かけてお世話になったからね。いつまでも支えられてばかりじゃかっこ悪いし。……まあ、それでも怒られたりするんだけど」
その辺は昔からだろうし良いのではないか。
お互いを理解し合ってる感じがする。
ミカナはそんなユウガが好きだったりとかな。
「僕の家庭だけじゃなく、みんなはどうなのかな。情報は多い方が良いと思うよ」
ユウガの言葉にデューク、レイヴン、カイウスが顔を見合わせる。
これは誰が行くよ……というやつか。
「俺は同棲してないんで力になれなさそうっすけど」
デュークが手を挙げて発言。
この中で同棲経験がないのは確かだ。
だが、デュークの意見は一般論として、そして俺の相談に乗ってもらった者として話を聞きたい。
……正直、新婚旅行後イレーネさんとどんな感じなのか知りたいという気持ちが一番大きい。
「いいや。普段彼女といる時にどう過ごしているかを話すだけで良いはずだよ。それが彼の悩みを解消するヒントになるかもしれない」
カイウスが俺の言いたいことを代弁してくれた。
これにはデュークも口を開く。
「あー……そうなんすか。んー、休みの日には訓練したり遊びに行ったりで。付き合う前とそんなに変わらないっすよ。まあ……多少スキンシップが激しくなったっすけど」
「そこんところを詳しく」
「隊長だって見てるじゃないすか。俺がイレーネに抱きつかれてたの。あれをやってくるんすよ。前後左右から飛びかかってくるんで予想できないんすよね」
肉食系エルフなイレーネさんの飛びかかって抱きつくに苦戦していると。
ふむふむ……どうやら幸せに過ごしているらしい。
「これ参考になるんすかね」
「つまり身体で払えってやつか……」
「何でそんな考えに至るんすか」
「そういうことかなって」
セシリアのためにひたすら働いて働いて働く……。
おっ、良い感じじゃないかこれ。
俺が稼いでセシリアが家を守る……答えとしては合っているんじゃないか。




