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恋人と過ごしてみた

家に帰ったら思った以上にゆったりしてしまい、午前中は仕事をせず。

セシリアと昼食、パン、スープ、サラダ、オーク肉っぽい肉の香草焼き。



オーク肉っぽい肉って商品名のセンス……俺は嫌いじゃない。

不味いわけがなく、口に詰め込んでいく俺。

対面に座っているセシリアはというと手が止まっており、こちらを見てにこにこしている。



「……何か顔に付いてたりする?」



「いえ、そんなことはないのですが。その……美味しそうに食べるなと思いまして」



美味しい料理を美味しそうに食べるのは当たり前である。

普通に美味しいと言っても芸がないか。

久々に厨二になろう。



「美味しい料理は美味しい。そう表現するのは当たり前だろう。だが、この料理はただの美味しい料理ではなく、セシリアが作った美味しい料理……そして、セシリアと一緒に食べている。だからこそ、いつも以上に楽しく……」



「食事中は席を立たないようにしましょう」



「あっ、はい」



感情が高ぶってつい立ち上がってしまった。

久々に厨二スイッチを入れた気がする。



「午後はどうする予定何ですか?」



「ギルドに行こうかなって思ってるけど」



「午後からだと帰りが遅くなるんじゃないですか?」



「あー……依頼にもよるけど」



遅くなったら適当な場所で夕食を済ませて帰ってきていたけどな。

セシリアが家にいるってなるとそうはいかないか。



「んー……掃除は俺が引き継いでセシリアを送り届けようか」



そこから依頼をこなして掃除っていうパターンもあるが。



「ダメです」



速攻で却下された。



「一度始めたことを投げ出すのは好きではありません。最後までやり遂げないと達成感も味わうことができずもやもやした気持ちが残ります」



「お、おう……」



「それにヨウキさんが一人でする掃除には不安が残りますし……」



そんなに俺の掃除って雑でしたか。

完璧超人のセシリアが言うのだからそうなんだろうな。



「ギルドは明日じゃダメなんでしょうか」



「いや、別にそうではないけど」



ギルドの仕事は自分で勝手に決めて期日通りに終わらせればいい感じのものが多い。

だからといって適当な頻度で仕事するのはどうかと思うので仕事する日程を決めていたりする。



さっきの一悶着もあって依頼の受理はしてもらっていないのでダメというわけではない。

もうこの流れは二人で過ごしても良いんじゃないか、良いよね?



「今日はセシリアのために一日を使うことにするよ」



一緒に過ごそうという俺の言葉。

少し笑ってくれたので好感触だ。

これはイチャイチャする雰囲気出したら乗ってくれるのでは……。



「さすがヨウキさんですね。話をわかってくれて助かります。それでは午後から一緒に掃除しましょう」



「掃除?」



「はい。二階とキッチンとヨウキさんの部屋と客間……手をつけないと行けない場所は沢山ありますから。私も頻繁に掃除はしますがやはりヨウキさんにも覚えてもらいたいです」



イチャイチャは無しのようだ。

まあ、俺の家のことだしちゃんとやらんといけないよね。



「一緒に家事を分担して生活するって楽しいと私は思うんです。大変かもしれませんが一緒に掃除から始めてみませんか?」



その言い方だと俺と一緒に生活することを考えてくれているってことになるけど。



セシリアは狙っての発言なのかね。

表情に変化はないが……この発言は絶対に狙って言った発言に違いない。



わかっていても……発言の真意を聞いてはいけないのだろう。

そう俺に許された発言は一つ。



「午後の予定は掃除ということで」



「頑張りましょうね」



この日、俺は効率の良い掃除のやり方を覚えた。

セシリアの好感度、俺の掃除スキルが上がった。

結婚してからの将来像が明確にイメージできるようになった。



結果、かなりの危機感を持った。

このままではできない子扱いされるかヒモ扱いされる未来しか見えない。



同棲生活で見えてきたセシリアという完璧な彼女に対し、俺はどうすれば良いのか。



考えると夜も眠れない、子供かよ。

自分へのツッコミもしつつ、気がつけば朝に……。



「何故、徹夜を?」



「ちょっと考え事をしてたら眠れなくて」



「昨晩、その分野でも勝てないんだよと聞こえたのですが……てっきり寝言かと思いそのまま就寝したのは良くなかったようですね。私でよければ相談に乗りますよ?」



なんか叫んでいたのを聞かれていたらしい。

ものすごく恥ずかしいんですけど。



「ヨウキさんでも勝てない強敵が現れたんですよね?」



貴女ですとは言えない。

セシリアからしたら、俺の家に来て普通に過ごしているだけだからな。

ただ、俺が自分の無力を感じているだけである。



「これは俺の問題なんだ。男として解決しないとならないこと……最初からセシリアを頼らずに自分で考えて乗り越えないといけない壁なんだよ」



そう……今立ちはだかっているのはセシリアという高い高い壁なのである。



このまま何も打開策を見出さずに同棲したらセシリアに甘えまくり、休日は常に寝っ転がって菓子を摘んでいるダメおじさんになってしまう。

それだけはなんとしても避けねば!



セシリアも俺の熱意のこもった言葉に感じるものがあったのか、それ以上この件に対して突っ込んでは来なかった。



ほっとしつつもセシリアを屋敷に送って一人になる。

さて、これからどうしようか。



「そもそも今回の悩みはどうしたら解決できるんだ?」



セシリアよりも家事が上手くなれば解決したことになるのだろうか。

なんかそれは違う気がするんだよね。



そもそも、家事スキルレベルがマックスなセシリアに自炊なんてちょろっとしかしてこなかった俺が頑張ったところで勝てるわけないし。



「同棲って結構大変だなぁ」



威厳ていうやつ?

俺はそういうの気にしないタイプだと思っていたんだけどな。



実際に暮らしてみると自分の無力を感じてしまって、申し訳ないのだ。

同じ悩みを持っていそうな有志を集めて聞いてみよう。



俺は声をかけて有志を募った。

同じ悩みを持つであろう野郎共を何とかして集めた。

男子会とも言えるものだろう。



「まあ、誘ったのはデュークとレイヴンだけだけど」



あの二人なら気兼ねなく相談できるし。

デュークは常識人でレイヴンはリア充の先輩。

万全の布陣で同棲ってどうすれば上手く回るのか。



ついでに彼女と付き合っている時に気をつけていることとかを聞いてみよう。



お菓子と飲み物を用意していたら扉をノックする音が聞こえた。

早速我が有志が来たようだ。



「いらっしゃ……」



「やあ。来たよ!」



「……」



目の前には呼んでいないはずの勇者が立っていた。

おかしい、俺は有志を待っていたのであって勇者ではないのだが。



「ヨウキくん?」



「まあ、上がってくれ」



せっかく来てくれたんだし帰すのは悪いからな。

誘ったのはレイヴン辺りだろう。



「今日はヨウキくんの力になるために来たんだ」



「俺的にはお前のターンはもう終わってると思うんだけどな」



結婚したし新婚旅行も行ったし相思相愛だし。

あ……こいつかなりのリア充じゃね。




「ターンって何さ」



「いや、お前のターンはまだ終わってないみたいだ」



「だからターンって……」



「ようこそ。歓迎するわ」



「うん……ヨウキくんがそう言うならもういいや」



珍しくユウガの諦めた顔が見れた。

そんなユウガを茶の間に案内して飲み物を出す。



「ありがとう」



「セシリアの入れたお茶と比べるとまだまだなんだよな」



「比べるのが間違ってるよ。セシリアは幼い頃から一流の元で教えてもらってるんだからさ」




「それもそうか……」



「ミカナは今料理を頑張って覚えるために試行錯誤しているみたい。作った料理をセシリアに食べてもらって感想を聞いたり、セシリアから直接教えてもらったりしているらしいよ」



「へぇ、それは知らなかったな」



セシリアからそんな話聞いていない。

女子は女子で料理教室をしていると。



「僕はミカナが作ってくれたものなら何でも美味しいんだけどね」



「はいはい」



「ミカナの手作りっていうのが僕にとって最高の調味料だよ」



「わかったわかった」



「僕に隠れて料理を教えてもらっているみたいなんだ。余分に弁当を作っていてね。聞いたら別に誰でもいいじゃないって言われてさ。そう言われたら気になって気になって。調べたらセシリアに持って行ってたんだ。うん、やっぱりミカナは……」



「嫁自慢はもういいって」



もう分かったから、これ以上続けたら埋めるぞ。

テンション高いんだよ。



新婚なのもあるのかピンク色のオーラがすごい。

家で相当イチャイチャしているんだろうな。



「まだ言い足りないよ!」



愛を語り足りないらしい。

おいおい……どんな日常生活しているんだ。

うざいかなって思う部分がないわけではないが、今後の参考になるかもしれない。



「じゃあ……軽く話してくれ」



「うん。まずは朝なんだけどミカナが起こしに来てくれてね。ちょっと眠くてもう少し寝かせて言ったら力づくで起こしにきたから布団に引きずり込んだんだ。最初は脱出しようとしてたんだけど僕がぎゅっ……ってしたら急に抵抗しなくなって。どうしたのかなって顔を覗いたら……」



「いやそれ以上は言わんで良い!」



その時の表情を知っていて良いのはお前だけだ。

どうせその話のオチは結局もう少しだけ寝たとかそんなところだろう。



「あとは……ご飯を食べ終えて片付けも終わらせて一息つこうと同時にソファに座り込んだんだ。その時に手が触れたのに気づいたんだ。僕が思わずミカナを見たらミカナも僕を……お互いに顔を見合わせることになってね。そこから……」



「それ以上は語るなぁぁぁあ!」



こいつ何を言おうとしてんの。

そういうさりげないイチャイチャは二人の中にしまっておけよ。



「まあ、そういう時のミカナも可愛いってことで」



「最終的にそういうオチになるのか」



「実際にミカナは可愛いからね。……ヨウキくんだってそうでしょ?」



ここで俺に振るのか。



「ヨウキくんがセシリアをどう語るのか……聞いてみたいな」



ユウガの表情は真剣そのもの。

俺も黒雷の魔剣士としてだがセシリアとの交際を公言している。



俺の率直な気持ちを聞きたいのか。

今日はそういう集まりではなかったんだが……良いだろう。



「セシリアは俺の恩人だ。詳しい事は語らない。最初は空回りしたり脱線したりで迷惑をかけた。今も時々かけているかもしれない。それでも俺はセシリアの隣にいたい。最初は一目惚れで告白して玉砕して……セシリアの優しさに甘えつつ、俺の気持ちを伝えていったんだ。ああ……これは告白までの経緯だな。まあ、簡単にまとめるとセシリア、ほんと聖女様ってところだな」



「へぇ……セシリアとヨウキくんはそういう始まりだったんだね」



「まあな」



「セシリアを可愛いって感じる時ってどんな時?」



どういう質問だよ。

男二人きりで嫁自慢大会とかさ。

デュークとレイヴンはまだなのか、そろそろ集合時間だぞ。



まあ、嫁自慢をしたくないというわけではない。

セシリアの素晴らしさを語ってやろう。

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