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恋人に送られてみた

新婚旅行から帰ってきてから変わったことは沢山ある。

まずはデュークとイレーネさん。

コンビは変わらず仲良しこよしでミネルバの警備をしている。



相変わらずイレーネさんは絡まれたりするようでその度にデュークが仲裁に入る……のは変わらない。

問題はデュークがイレーネさんに借りを作った時である。



これが愛ですねとぶつぶつと呟き出したら危険信号。

その日の内に熱烈なお礼があるんだとか。

リア充じゃねぇか、ご馳走さまですと思ったんだが、デュークからしたら大変らしい。



想像以上にデレデレしてきて隙あらば飛びついてくるんだとか。

あの体勢が気に入ってんのかね。



イレーネさん、見た目以上に鍛えてるらしいから中々逃げられないんだとか。

嬉しい誤算ってやつだな。



次はユウガとミカナ夫妻だが……変化なし。

これといって相談が来たりしてない。

まあ、心配事もなくなったしイチャイチャしてるんだろうよ。



俺とセシリアも新婚旅行では一悶着あったが、今では平和そのものである。

ちょっと変わったことがあると言えばあるけど。



「お邪魔します」



「こっそりね、こっそり」



闇に紛れ透明になり、周囲の警戒を最大限にしての隠密行動を俺はやり遂げた。

ミッションはセシリアを家に招待すること。



周りの目もある中、俺はこのミッションを何度も成功させている。

今日もセシリアの仕事帰りを狙い、屋敷に潜入して招いたわけだ。



「さて、夕食作りますね」



セシリアは家へ入るなり、髪をまとめてエプロンを着る。

セシリアが家に来たら夕食を作るのも最早珍しい光景ではなくなった。



一緒に買い物……はさすがに自粛しており、セシリアの指示を受けて俺が買い物に行ったり、セシリアが屋敷から持ち込んだりしている。



しかし、セシリアも仕事から帰ってきて休まずに家へ直行してる。

まずはゆっくり談笑でもするのはどうだろう。



「あ、そう。でも、セシリアも疲れてるだろうし、少しゆっくりしてからでもいいんじゃ……」



「でも、お腹空いてますよね。すぐに作ってしまうので待っていてください。先に済ませることを済ませてからの方が気にせずゆっくりできますから」



そう言ってセシリアはキッチンへと消えていった。

おおぅ、何も言えないとは情けない。

最近じゃこんな感じなんだよね。



前よりもセシリアが家に来ることが多くなった。

もちろん、俺の力があれば誰にも見られずにセシリアを連れてくることはできる。



セリアさん他、アクアレイン家も全力で応援してくれているため、屋敷に念のための影武者も置いてきているという徹底ぶりだ。



この案を出したのは俺……ではなくセシリアである。

一緒にいれるのは嬉しく舞い上がる思いだ。

うん……そうなんだけど。



「ヨウキさん、衣装はちゃんと片付けましたか?」



キッチンからセシリアの声が聞こえる。

仕込みをしながらも俺へ目を光らせているのだ。



「うん、きっちり衣装棚に……」



「何があるかわかりませんから、念のために隠しておいた方が良いですよ。私が隠し場所考えておきますね」



「わかった。ありがとうセシリア」



「それと前回来た時に二階の部屋が埃っぽく感じたので換気をオススメします」



普段二階は使ってないので正直、掃除が行き届いていない。

男の一人暮らしなんてそんなもんだろうというのは言い訳か。



「了解。明日、窓開けて掃除するよ」



「……明日は予定がないので泊まっていっても良いでしょうか」



「ふぁっ!?」



急な申し出で驚いて変な声出た。



「掃除と整理がしたいんですよね」



「いや、でもセリアさんたちが心配するんじゃ……」



「もう伝えてきたので何の問題もありません」



これ確信犯の行動だよね。

断る理由もない。

むしろ、ありがとうございますと頭を下げるべきだ。



でも、これって通い妻ってやつじゃないのか。

俺は嬉しいけどセシリアの負担になっていないか、心配だ。



というか、どういう心境の変化があったんだ……きっかけは新婚旅行の一件なのか。

首をひねってもこれだという答えは出ない。



「お待たせしました」



悩んでる内にテーブルにはセシリアの手料理が並んでいた。

お嬢様なのに料理の手際が良く美味い。



栄養も考えられてるし、文句の付け所がないな。

対面で座り夕食開始、うん美味い。



「栄養もしっかりと考えて作っているので安心しておかわりして下さいね」



「ありがとう……」



「あ、デザートも用意しているのでお腹の容量を考えておかわりしてください」



俺の彼女が優秀過ぎる。

やること、言うことを全て終わらせたことを確認し、セシリアもようやく席に着いて食事を始めた。



「明日の予定は?」



「あー、ギルドに顔出そうかなって思ってる」



「そうですか。では、ヨウキさんがいない間に掃除終わらせますね。昼はどうしますか。帰ってくるなら良いんですけど……お弁当作りましょうか」



「一旦、帰ってくるよ」



「そうですか。では、昼食を用意しておきますね」



「うん」



平静を装っているが内心まじでの連発である。

俺に選択権があるの!?

弁当にするか帰ってきての食事かなんて。



贅沢な二択だったけど……できるなら一緒に食べたいから帰ってきてを選んだ。

幸せ過ぎなんだけど、明日刺されたりしないよね。



もやっとしたまま朝を迎えるとそこには朝食が用意されていた。

お気をつけてと笑顔で送り出されて浮かれないわけない。



気分良くスキップしながら道を行く俺を見てすれ違う人たちは何を思っただろうか。

浮かれてるなぁーくらいにしか思われてないよな。



事情を知ったら、何だリア充かもげろくらいは思われるかね。

うきうき気分でギルドに着いた俺は真っ先にクレイマンの元へ行き、依頼の確認をした。



「昼までに終わるか昼休憩が取れそうな依頼を頼む」



「は?」



「俺は今日、昼食を食べに一度家に帰らないといけないんだ」



「あー……そうか」



何となく察してくれたのだろう。

特に深く追及することなく依頼書を確認している。

クレイマンよ、少しは興味を持ってくれても良いんじゃないか。



「普段はそんなこと気にしてませんでしたよね?」



クレイマンの横で書類整理をしていたシエラさんが食いついた。

女性はこういった話に敏感だからな。

セシリアのことは伏せてさり気なく話そう。



「今日はその……人が来ていて。昼食を作ってくれるみたいで」



「それって彼女さんですか?」



「ご想像にお任せします」



「でも、一人暮らしの男の人にご飯作りに来るなんて。……成る程、そういうことですか」



シエラさんも察してくれたようだ。



「実家からお母様が来てらっしゃるんですね」



察してなかった。

クレイマンが隣で口を押さえて笑いをこらえているのが見える。

くそっ、ぼかし過ぎたか。



「いや、そうじゃなくて」



「なら、やっぱり彼女さんですね」



「まあ、そんな感じです」



「良いですねぇ。家に帰ったらご飯作って待っててくれる人がいるなんて。私は家に帰っても誰もいないから、同僚と一緒にご飯ですよ。まあ、その同僚の数も年々一人、また一人と減っているんですけどね……」



シエラさんがため息をついてがっくりと項垂れる。

もしかしてじゃなくても地雷を踏んだらしい。



ギルドの受付嬢ってモテるイメージが強いから、シエラさんにも良い相手がいると勝手に思っていたんだけど。



「ほら、仕事をしろ、仕事を」



クレイマンがシエラさんを嗜める。

俺のせいでもあるから強くは言わないで欲しいのだが。



「はい、すみません。……でも、クレイマンさんは良いですよね。もう奥様がいるんですから。私もそろそろって思うことがあるんですよ」



ぶつぶつ言いながら書類整理を再開するシエラさん。

口をとんがらせてクレイマンに口撃している姿を見るのは珍しい。

いつもクレイマンの舵取りを頑張っているように見えるんだけど、悩みもあるんだなぁ。



「あー……ったく。結婚を焦ってんのかどうかは知らんけどよ。ちゃんと相手を選べよ?」



「そんなことは分かってますよ」



「あと、覚悟しておけ」



「何をですか」



俺もシエラさんと同意見で揃って首を傾げた。

クレイマンは俺たちを見て息を吐くと説明を始めた。



「いいか。結婚したらな、二人で同居が始まるわけだ。お前は料理を作ってもらって浮かれ、シエラは帰ったら家に待ってくれている人がいるなんて羨ましいなんて言ってやがるがよ……もっと、現実的に考えたことあんのか?」



「現実的って具体的にどういう……」



「家での主導権を握れるか……これによって結婚生活は大きく変わる!」



拳を握り締めて何を言ってるんだ、この男。



「夢見てるお前らに結婚生活の現実ってやつを教えてやるよ……」



なんか始まった。

念のためにシエラさんにクレイマンって家庭上手くいってないのと込めた視線を向けてみた。

そんなことはありません、良好ですと示しているかのように勢い良く首を横に振っていた。

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