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恋人と海へ行ってみた

「デュークとイレーネさんは訓練中みたいだね」



「そのようですね」



「色気皆無なんだけど」



えっほ、えっほと掛け声出しながら走って汗を流している二人。

恋人同士の会話じゃねぇな。



こういう時はユウガの存在がありがたく感じる。

あいつなら周りを巻き込むハプニングを起こすから。

聖剣の力の覚醒が原因で周りもイチャイチャイベントが起きるとかないかな。



俺の祈りが届いたのかイレーネさんがデュークに追いつきましたと言って抱きついた。

そのまま二人仲良く転倒。

これはもしかすると……。



「転んだから追加っすね」



「ひー!」



ラブロマンスは生まれない。

デュークのやつ徹底し過ぎだろ。

もうちょい恋人気分味わわせてあげようよ。



「……行こう」



「デュークさんはあんなに修行好きな方でしたか?」



セシリアに言われて考える。

真面目だけどここまで徹底してたっけか。

……あいつもしかして一緒にいる口実のために訓練してんのか。



デュークはそんなに不器用じゃないと思っていたんだがな。

一肌脱いでやろう。



「おいデューク」



「隊長とセシリアさんじゃないすか。デートっすか」



「そうだ」



「そうっすか……」



お前らもそうじゃねぇのと言いそうになったがぐっと堪えた。

この素直になれない不器用な元部下に贈る言葉だ。

強引に頭を掴んで耳に口を寄せる。



「なんすか、隊長。浮気を疑われる行動はしたくないんすけど」



「誰が浮気だ。良く聞いてくれ。どうやら聖剣の力が暴走しているらしい」



「……どういうことっすか」



「ユウガが新しい聖剣の力を上手く制御できないみたいでさ。どうやら、男女が近くにいると強制的にイチャイチャイベントが発生するんだ。このままでは危険だと思った俺はデートを口実に逃げてきたんだ」



まあ、嘘なんだけど。

デュークも素直になれないなら、こんな無茶苦茶な嘘でもつかないとね。



「……本気で言ってんすか」



「もちろん」



全力で嘘ついてます。



「……はぁ。わかったっすよ、隊長」



デュークは小さくため息をついて気合を入れるためか、頰を叩く。

俺の意図が伝わったらしいな。

あとは行動に移すだけだぞ。



肩を優しく叩いてやるときゃっ、という声が聞こえた。

今のはイレーネさんの声だ。



慌てて振り向くとイレーネさんがセシリアを押し倒していた。

そこにタイミングを計ったかのように大きな波が二人を襲う。



二人とも上着を着ていたんだけどびっしょり……。

大分リアクションに困り俺もデュークも固まる。

まあ、水着着てるからそこまで気にする必要ないんだろうけど。



「あうぅ、すみません……」



「いえいえ、気にせずに。海に来ているんですからこういうこともありますよ」



セシリアはさすがの対応だ。

デュークがさっさと近づいてイレーネさんを起こす。

両脇持って抱えて起こしてるよ。



恋人じゃなくて親子……いや、年の離れた兄妹かな。

色気が……ドキドキがないぞ。



「セシリア、大丈夫?」



まあ、手を差し伸べないよりは良いよな。

セシリアの手を取って引き上げる。

しかし、力加減を間違えてしまったせいか、今度は俺が後ろに倒れ込んでしまった。



セシリアの腕を掴んでいたので巻き込んでしまい、まるでセシリアが俺を押し倒したかのような図になる。



「……本当に良く分からないんだけど、力加減を間違えたんだ。狙ったわけじゃないんだ」



「そうですか」



「……セシリアはなんでそんなに冷静なの?」



「恋人の関係が続けばいずれはこういった構図になります。今日、この瞬間がそうだったということですね」



「ドキドキしてるのは俺だけでしょうか」



「さあ、どうでしょうね」



……どうしよう、このままの状態で会話を続けても良いのだろうか。

デュークにイチャイチャさせやすい空気にしてやろうと思ったら、俺に来るとはね。



「隊長、そのままキスっす。キス!」



「えっ、えっ……良いんですか、デュークさん。私たち離れた方が……」



「そこは真面目にならなくても良いんすよ。ここは応援すべき時っす。今は愛を確かめる時なんすよ」



「愛を確かめる時……」



デュークとイレーネさんは勝手に盛り上がってるし。

つーか、デューク無茶振りすんな。

キスするなら俺とセシリアの位置逆だろーが。



「外野がうるさいな」



「そうですね。そろそろ起き上がりましょう。ヨウキさんをちょっとだけ困らせることもできましたし」



「えっ」



その発言が気になるんですけど。

悪戯っぽく笑うセシリアにドキッとしてしまった。

まさか、押し倒すまで狙ってやったのか。



予想外の行動だ、一体誰からこんなやり口を学んだんだ。

さらに惚れてしまうじゃないですか。



「この借りはまた別の時に返すよ」



「その時を楽しみにしています」



近々サプライズでもしよう。

やられっぱなしは悔しいからね。



「隊長やられちゃったっすね」



「お前もやられちまえよ」



「俺は隊長みたいに油断しないっす」



イレーネさんを舐めている発言だ。

付き合いが長い分、わかることもあるのだろうな。

俺からしたらイレーネさんは油断してようとしてなかろうと関係ないと思うがね。

だって行動読めないしさ。



「愛を確かめる、愛を確かめる……」



ぶつぶつと呟きながら、デュークに迫って行くイレーネさん。

デュークは俺との会話に夢中で背後から忍び寄るイレーネさんに気づいていない。



普段から一緒に行動しているみたいだし、後ろから迫られても危機感を覚えないんだろう。

慣れた気配ってやつだからな。



背後からの襲撃に気づかないデュークにイレーネさんが仕掛ける。

デュークの胴体を掴み回転させて対面。

この時点でデュークは警戒態勢に入るが……もう遅い。



身長差を埋めるためか飛びついて腕を首、足を胴体に回して固定。

そのままデュークの唇を……。



「情熱的だな」



「イレーネさんは積極的ですね」



付き合い始めて間もなく、二人は幸せなキスをしましたと。

愛を確かめるとか言うから……確かめ合うの長くない?



イレーネさんがデュークから離れないのである。

エルフの恋愛観が違っているのか……。



デュークもさすがに狼狽えてしまいイレーネさんを離そうとしている。

しかし、イレーネさんががっちりと固定しているためか腕と足が外れない。



デュークが肩を叩いたりしてるが効果なし。

うっとりした表情をしているしこれは……。



「この場から離れよう。二人の邪魔したら悪いし」



「……放っておいて良いんでしょうか」



「第三者である俺たちが見ている方がまずいと思うんだよね」



ここまできたら二人の世界にしてあげないと。

というわけでセシリアの手を引いて二人から離れることにした。

デュークはこれから益々苦労するだろう。



「出任せが事実になるとは」



「また、何か言ったんですか」



「いや、素直になれないデュークに助言をね……」



アホな嘘をついたことをセシリアに説明。

結果、呆れられた……が。



「ヨウキさんの発言はかなりの確率で何らかの影響を及ぼしますからね。結果的にデュークさんとイレーネさんは幸せそうにしていましたし、良かったのではないですか」



「デュークは完全にイレーネさんにやられてたけど」



実はイレーネさんは肉食系女子だったと。



「それもまた愛ですよ」



「急に良い話になった」



「そういうものだと私は思います」



愛について語ると……難しいかもしれない。

厨二で勢いに任せて語れることじゃないからな。

どうしたものか考えていたら、ちょうど良さげな岩場がある。



二人で並んで座った。

波の音だけが聞こえる。



「昨日までの嵐が嘘みたいに穏やかですね」



「本当、そう思う。今日ユウガたち無人島に行けば良かったのにな。いや、今日にしてたら今日が嵐になってたかも」



「そんなことが……ないと言い切れませんね」



「セシリアもそう思うようになっちゃったか」



「ヨウキさんの影響でしょうね」



「そりゃあ申し訳ない」



他愛ない会話、いつも通りの談笑だ。

セシリアの紅茶もお茶菓子もない。

物足りない……なんてことはないけどな。



「ヨウキさん。確か勇者様の聖剣の力が暴走しているんですよね」



「えっ」



急に俺の嘘話をぶり返すのか。

それはデュークを素直にさせるための嘘だってさっき……ああ、そういうことか。



「そうだな、暴走してるんだよ」



そう言って俺はセシリアの肩を優しく掴んで引き寄せる。

セシリアも抵抗することなく、俺の肩に頭を乗せた。



「……しばらくこうしていても良いですか」



「俺も同じ気持ちだったりする」



「それは……良いことなんでしょうね」



特に色気のある会話もなくただ、海を眺めているだけだったんだけど。

この時間がすごく貴重なもので。



また、来たいなと思ってしまった。

今度は二人で……かな。

こうして新婚旅行は幕を閉じた……。



「ミカナ、どうしよう。お土産買ってないよ!」



「アタシだって買ってないの。明日の出発前に買いに行くわよ」



「二人で過ごしていたら、いつの間にか夜になっちゃってるんだもんね。ミカナと過ごす時間は楽しいから……」



「はいはい、わかったから荷物詰めなさいよ。忘れ物したら大変なんだから」



「大丈夫。一番大切なものは絶対に手放さないからさ」



「手を掴まれると作業が進まなくなるんだけど」



まあ、帰るまでが旅行だよな。

宿に帰ったら主役はわたわたと帰り支度をしていた。

ユウガは手伝ってるというよりは邪魔しているようにしか見えなかったが。



「デュークさーん。どーこでーすかー」



デュークは何故か姿をくらましていた。

あの後何があったのか。

さらっとで良いから話を聞きたいところである。



「こりゃあ、帰りも警戒しないとダメだな」



「ヨウキさん、変なこと言うのは禁止ですよ」



「いや、俺は別に未来予知とかできるわけじゃあないんだけど」



「馬車の中では腕を組んで大物感を出しているだけで充分です」



セシリアの言う通りにしたら、帰りの二日間は特に何も起こらなかった。

俺が余計なことを言うからイベントが発生するのか。

偶然だと思いたい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] セシリアさんがイケメンだぁ〜!余裕の表情で押し倒してるのが格好良い。セシリアさん好きです
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