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守り神をどうするか話してみた

「はっはっは。我輩より奇異な行動をとっているではないか。人間の娘に恋とはな」



俺達の事情を説明したらこれだ。

俺は魔族、シークはピクシー。

そこまではよかったのだが、何故人間のふりをしているのかという質問をされ、回答したらこうなった。



「隊長、仕方ないよ〜。僕だって最初聞いた時、すっごく笑ったもん」



普通の魔物からしたら、考えられない行動なのだろうが、そんなに面白いことだろうか。

好きになったんだから、仕方ないだろ。

今の所アプローチは順調だと思うんだけど。



「……なんだよ。そこまで笑うことないだろ。自分なんか迷子のくせに」



笑われて悔しかったので反撃してみた。

それが、思ったより効いたようで。



「迷子……!?」



ピシッと石の体にひびか入るような音がした。

どうやら、今の言葉でかなりダメージを受けたようだ。

見かけによらず、打たれ弱いのか?



「や〜い。迷子迷子〜」



シークが笑いながら追撃する。

悪気は余りないのだろうが、ガーゴイルからしたらかなりのダメージだろうな。



「ぬう……迷子とは屈辱だ。だが、事実なので言い返せぬ……」



何だか残念なガーゴイルだなあ。

普通の個体よりは強いのに。

考えてみたら俺ってキャラの濃い奴と知り合いになりやすいな。

俺の中で唯一、常識人のセシリアが輝いている気がする。



「迷子云々は置いといて、悪さをする気はないんだな?」



「無論だ。我輩はこの社に住んでいるだけだからな。別に村に何かするわけでもないし、助けたりする気もない」



薬にも毒にもならないということか。

でも、ティールちゃんがピンチになったら飛んで来たりしそうだな。

……なんのアニメのヒーローだよ。

まあ、見逃しても大丈夫だろう。

一応帰ったらセシリアに相談するか。



「村人達に危害を加えるつもりがないなら大丈夫そうだな。シーク、帰るぞ」



「は〜い」


俺達はガーゴイルに別れを告げ、ティールちゃんの家に戻った。

帰り際にガーゴイルが我輩の正体は誰にも言うなよと口止めしてきた。



安心しろ、セシリア以外には言わないから。

村人達には言ったらいろいろ問題になりそうだし。



ティールちゃんの家に戻ると彼女はベッドの上で寝ていて、セシリアは椅子に座り本を読んでいた。



「お疲れ様です。……何かあったんですか?」



俺達の服が少し汚れていることに疑問を持ったようだ。

ティールちゃんが完全に寝ていることを確認して事情を説明した。



「守り神様の正体がガーゴイルですか。……村人にも迷惑をかけていないし、討伐依頼も出ていない。でも、何かあったらじゃあ遅いかもしれないですし……」



立場上どうするか悩んでいるようだ。

俺は別に見逃してもいいと思うんだけど、セシリアは簡単に決められないんだろう。

シークは興味なしと。



「数百年間大人しくしていたみたいだし、大丈夫だと思うけどな」



「うーん、どうしましょうか。でも、ティールちゃんのことを助けたという事実もありますし、悪さはしなさそうですね」



「僕、退屈〜」



大事な話をしているというのにこいつは……。

村の子ども達と遊んで来るように言って家から追い出した。

所謂厄介払いだ。

酷いと思うかもしれないが、ノリノリで村に向かって行ったので気にしない。



「良いのですか?」



「別にシークがいても意見を言わないだろうし、あいつも遊び盛りだから良いだろ」



「それもそうですね」



簡単に納得するなぁ。

まあ、それ程シークが子どもっぽいということか。



「……で、ガーゴイルをどうするかっていう話だけど、今は保留でいいと思うんだ」



今は何かするかわからないガーゴイルより、村人の治療や、襲撃してくるかもしれない山賊をどうにかした方がいいと思う。



それにガーゴイルに何かしたらティールちゃんが何するかわからないし。

彼女、守り神に狂信的だし。



「そうですね。今は村人の治療に専念しましょう。ヨウキさんやシークくんのおかげで早く治療が終わりそうですし、山賊問題も何とかしないと……」



これからどうするか方向性を話し合う。

最終的に明日、村人達の治療をしつつガーゴイルの情報を聞き出し、そして、実際にセシリアもガーゴイルと話をしてみることになった。

話し合いが終わる頃には夜になっていた。



「もう、こんな時間か。



そろそろ村長の家に行かないとな」



帰りが遅くなって心配かけるのも悪いしな。



「そうですね。そろそろ行きましょうか」



眠っているティールちゃんを起こさないように静かに家を出た。



月の光りを頼りに暗い林を二人で歩いていると、何故かロマンチックな気分になってきた



前世でも夜道を女性と二人きりで歩くということを体験したことがないせいだろう。



チラリとセシリアの方を見てみると彼女は別にそうでもないようで、普通に歩いていた。



「……どうかしましたか?」



「いや、別に」



内心すごくドキドキしているが、表には出さない。

セシリアはどうやら何とも思ってないようだ。

こういう道を勇者パーティーで通ったことがあるのだろう。



そわそわしている俺を見て首を傾げるセシリア。



せっかく良い雰囲気なのに何もしないまま村長の家に着いてしまった。

ヘタレ過ぎるだろう俺よ……。

せめて、手ぐらいつなぎたかった。



「おお! セシリア様とご友人、遅いので心配しておりました。もう、一人のご友人は先ほどお帰りになられて夕飯を召し上がった後、すぐに部屋でお休みになられましたぞ」



家に入るとやたらテンションが高い村長に出迎えられた。

村人達の治療が順調に行われたのが嬉しいのだろう。


シークの奴は、遊び疲れたんだろうな。

俺とセシリアを待たずに飯食って寝てしまったのか。まあ、子どもだし、別にかまわないけど。



「ご心配おかけしてすみません。ティールさんの治療をして、話をしていたら長引いてしまったのです。」



「そうでしたか。ティールも両親を早く亡くしていて、育てていた彼女の祖母も三年前に亡くなっていましてね。ティールも楽しかったでしょう。ありがとうございます」



ぺこりとお辞儀してくる。こちらとしては中々面白い守り神様のことを知れたので別に気をつかわなくて良いのだが。



その後、夕食をご馳走になった。

野菜の入ったシチューと普通のパンというメニューだ。



「すみません。このような物しかお出しできなくて……」



「いえいえ。ただでさえ山賊の襲撃で食糧が少ないのに、ご馳走してくださってありがとうございます。いただきます」



俺は言い終えるとむしゃむしゃと出された料理を食べはじめた。

俺の豪快な食べっぷりを見て、料理を作った村長の奥さんは少し戸惑っている。



「ヨウキさんはこういう方なんです。私もいただきますね」



俺とは対照的に静かに食べはじめたセシリア。

そんな俺達を見て、奥さんはどこと無く嬉しそうな顔をしていた。



夕食も食べ終わり、村長と明日の予定を話していると夜遅くなってきたので寝ることになった。



「セシリア様は先程のお部屋、ご友人は隣の部屋をお使いください」



村長に言われた通り、二階に上がり部屋に行った。

セシリアにお休みと告げて部屋に入ると、中にはすでにシークがベッドの上でアホ面で寝ていた。

どうやら、相部屋のようだ。

いつもそうだから気にしないけど。



明日も村人の治療があるし、ガーゴイルの情報も調べなければいけない。疲れもあったので、すぐに寝ることにした。



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