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さらに恋人とデートしてみた

「レイヴンのやつ大丈夫かね。ああいうの得意じゃないんだろうに。ハピネスもデュークも姿が見えなかったし、一人で平気か……?」



声のことは大分前から克服したけども。



「レイヴンさんなら大丈夫ですよ。今では騎士団の方々とかなり打ち解けているという話を聞きました。ハピネスちゃんのことに勘づいている団員も少なくないとか」



「あー……それはまあ、そうだろうな」



結構、一緒にいるし、あまり忍んでいるようにも見えない。

噂程度には収まっているだろうけど。

デュークもいるし、そこは何とかなると思うけど。



「ヨウキさん、レイヴンさんが心配なのも分かりますが……」



「ん、ああ、そうだな。レイヴンも無理だったらあんな自分から出ていかないし、心配し過ぎるのもあれだな、失礼っていうかさ、そんな感じ?」



こんなちょっとしたことで心配とか、お前らどんな関係だという話。

いやいや、レイヴンはハピネスで俺はセシリアだ。

この関係性に揺らぎはない。



「私はヨウキさんを信じていますし、ヨウキさんのことを理解していますから。安心して下さい」



「その言葉はかなりほっとするわ、ありがと」



ここで、えっ……みたいな顔をされるのが一番焦る。

つーか、素直に嬉しく思える言葉をいただけた、ありがとうございますセシリアさん。



「そもそも、ヨウキさんが私とレイヴンさんに同じような感情を抱いているということは、あまり想像したくありません」



「そりゃ、そうだよね」



セシリア、真面目な表情で語尾も力強いな。

いや、俺は浮気とかしないからね、女とも男ともさ。



「当たり前です!」



「あ、あはは……」



なんか……怒ってる? 

ごまかすように苦笑いしちゃったけど、なんかやばいような。

安心させるためにきちんと宣言した方が良いってことか。

よし、真面目な顔でおふざけ無しでいこう。



「俺とレイヴンはただの友達だから、安心してほしい」



「……はい、わかりました。ありがとうございます」



「……」



間違った選択を選んだな、これ。

セシリアの表情が氷河期を迎えているぞ、どうするよ。

冷や汗たらたらな状況だ、セシリア第一に考えないと。

ん、セシリア第一……あっ!



「歩きっぱなしで少し疲れたよね。近場の店で休憩しよう」



今日はデートなんだから、セシリア第一でいかないと。

多少のハプニングはスルーだ、スルー。



なんか知らんが、ユウガとレイヴンが引き受けてくれてるんだし、たまには目一杯楽しまないと。



店で休憩と言ったら、あそこしかない。

セシリアと一緒に向かった場所はというと。



「いらっしゃいませ。いつも、当店をご利用ありがとうございます」



苦労人なアミィさんとマッスルパティシエこと、アンドレイさんのケーキ屋である。

いやー、アミィさんは接客スマイルが眩しい、流石である。

それに対してアンドレイさんはというと。



「いらっしゃいませ、本日はどうぞごゆっくり……」



挨拶がてらに鍛え上げられた上腕二頭筋を見せつけられる。

にっ、じゃねーよ。

接客スマイルだけで良いんだよ、接客マッスルはいらないから。



「注文が決まりましたら、お知らせくださいませ。……兄さん、ちょっと」



ずるずるとアンドレイさんは厨房に引きずられていった。

……アミィさんの方が強かったりするんじゃないか。

まあ、こういうことが日常茶飯事だし、お菓子作りって大変だからな。

自然と鍛えられてしまうんだろう。



「アミィさん、大変ですね」



「いや、あれはあれで有名なんだよ、この店」



お客さんたちは笑ってるし、名物みたいなものになりつつある。

アミィさんはそういう名の売れ方はどうなんだろうって考えてるみたいだけど。



「そうなんですか……」



「うん。でも、普通にここのケーキ美味しいよね」



「それは私も同意します」



ほのぼのした雰囲気で話しながら、時間を過ごすことができた。

まあ、この店にいてハプニングなんて起きないから安心、安心。



「えっ、このケーキ野菜でできてるの?」



「今はスイーツ好きな人のためにお菓子も日々、進化しているんです」



「すごいですね。女性にとって嬉しい進化です」



「兄さんもケーキ作りは真面目にやってくれるんですが……」



ちらりとアミィさんが振り向く。

するとアンドレイさんが自慢の筋肉を客に披露していた。

ケーキの感想も聞いている、そっちが本命なんだろうけどさ。 



「もう、兄さんの好きなようにしても良いかなって思えてきました。幸い、お客様から苦情も来てないですし。私には出せないアイディア、手に入らない食材と兄さんの強みが出てきていて。私も立場が危うくなりそうなんです」



「アンドレイさんは自分が上になろうとか思ってなさそうだけどな。セシリアもそう思うよね」



「はい、私としては兄妹で仲良くお店を続けて欲しいですね。ここは行き付けの店ですから」



「あ、ありがとうございます。お客様のご要望に応えられるよう、兄と共に頑張りますので、これからも当店をよろしくお願いします」



話が聞こえてたのか、アンドレイさんもこちらを見てにっ、と歯を白い歯を輝かせ、親指を立てていた。

……うん、今度もまた来よう。



「そういや、最近、孤児院の方とかはどうなの? 子どもたちって元気だし、大変だよね」



子どもたちはセシリアを聖母様、聖母様って連呼してくるし。



「良い子たちばかりなので、そんなに手間はかかりませんよ。やんちゃすぎる子もいますが」



「だよなぁ。……今日は子どもに絡まれないな、そういえば」



セシリアが変装してるからか、何を言ってるんだ俺は。

聖母オーラが滲み出ている……なんて、物語じゃあるまいし、変装は見抜けないよな。



でも、今日デートしていて孤児院の子どもを見てない。

普段は孤児院から出ないようにしてるのか。



「そうですね。毎日出掛けているわけでもないので、孤児院の近くで遊んでいるのでしょう」



普段、孤児院に顔を出しているセシリアもこう言ってるし、そういうことなんだろうな。

存分にケーキを堪能した俺たちはケーキ屋を出た。

さて、次はどこに行こうか……。



「おとーさん、早く早く」

「そうせかすな、ロア。全く、いきなり教会に行きたいなんてどうしたんだ」

「パン屋のナリーちゃんが教えてくれたんだ。今日は聖母様は来てないけど、すごくおっきい人とおねーちゃんも来てて絵本を読んでくれたり、肩車したりしてくれるんだって」



ほら、急いでーと男の子にせかされる父親。

腕を引っ張られて大変だな……じゃなくて!



「おっきい人とおねーちゃん……?」



どの程度の大きいなのかわからんが、子どもがすごくおっきいと言っていたぞ。

気のせいか、知り合いに心当たりがあるんだけど……。



「セシリア、今の子どもが言ってたのってさ」



「……今日は教会で何か催し物があるようですね」



いやいやいやいや、セシリアも察しがついてるよね。

なんで、そんな感じなのさ。

絶対、教会に守り神様と信者が出勤してるでしょ。



これはやはり……まさか、そんなことはないと思いたいが。

だって、セシリアだよ、あのセシリアが俺なんかとのデートのためにとかさ。



「隊長~」



「ん、シークか。……あー、またフィオーラちゃんに追いかけられてら。相変わらず仲が良いね、全く」



こちらに向かってくるシークの後ろにはフィオーラちゃんの姿もあった。

本当、フィオーラちゃんはシークにべったりだからな。



クインくんはいないみたいだけど……このまま合流したら、前回同様子守りパターン。

まあ、仕方ないか。

予定を変更して公園にでも行って遊ぶか。



そんなことを考えていた時期が僕にもありました……なんて使う時が来るなんて思わなかったな。



ちょっと考え事していただけで、こっちに向かって走ってきてた二人が消えてるんですよ。

原因は子ども二人を抱えて風のように跳び去っていった顔見知りなメイド長だ。



現役冒険者でもあの動きをできるのはそういないぞ。

いつでもあの人冒険者に戻れるだろ、旦那が許さないと思うけど。

……で、これはいくら何でもおかしいよね? 



「セシリアさん?」



「……場所を変えましょう、ヨウキさん」



こんなシュンとしたセシリアは初めて見るかもしれない。

いや、責めることはしないからね。 

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