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手紙を見てみた

「ヨウキくん、あんたに手紙が届いてるよ」



「あ、どうも」



今日も依頼を受けに行くかーと考えながら、身支度を整えていたら、宿屋のおばちゃんが部屋にやってきた。

俺に手紙か……シケちゃんの件があったばかりだぞ。



まあ、普通に依頼人からの感謝の手紙ってこともあるか。



「ヨウキくんも結構、稼いでいるんだろう。そろそろ、自分の住む場所を考えてみたら良いんじゃないかい?」



「あ、はい。そうですよね。考えてみます」



私は儲かるから良いんだけどねぇ……と笑いながらおばちゃんは去っていった。

……そういや、随分と滞在しているな、そろそろ賃貸物件とかに住むかな。



まあ、今は届いた手紙だよなぁ……誰からだろうか。

封筒から手紙を取り出してっと。



「何々……この度結婚式を挙げることとなりました。ご報告かたがた末永い付き合いを……」



結婚式の招待状みたいだな、俺に来るなんて一体誰からだ?



「……お忙しい中、恐縮ですがご出席くださいますよう、ご案内申し上げます。こんな感じで良かったのかな、ヨウキくんには是非来て欲しいです。ユウガ、ミカナ……って、えぇーっ!?」



俺は手紙を握りしめたまま、驚いて仰向けに倒れる。

あいつら、この前に同棲し始めたばかりじゃねぇの。

段階をすっ飛ばした告白だったけども、早すぎないか。



口あんぐりでなんというか、もうさ……好きにすれば良いよな。

二人で話し合って決めたのなら、外野がどうこう言うようなものでもないし。



早いっていっても、俺の主観だからな。

貴族様の結婚感はわからん……あの二人は貴族じゃないか。

まあ、どっちも知名度が高いからな、各国でも何かしら動きあったりして。



「とりあえず、出席はしてやるかな。丸を書いてっと」



「ヨウキくん!!」



「おわぁっ!?」



出席のところに丸をつけていたらノックもせずにユウガが部屋に飛び込んできた。

相変わらず、マナーがなっていない。

結婚するならそこんところもしっかりしなければならないのではなかろうか。



「招待状は読んでくれたかな。出席は出来そうかい?」



「直接来るなら、招待状出した意味ねーだろ。まあ、出席はしてや……ん?」



「どうしたの、ヨウキくん。まさか、予定が入っていて来れないとか」



「いや、お前これさ……」



結婚式の日程が書かれていないんだけど。

ユウガに指摘すると、俺に届いていた招待状とにらめっこを始めた。



「あ、あれ、おかしいな。まさか、書き忘れるなんて。結婚式の招待状なんて書くの初めてだったから、緊張したせいかな」



「間抜けにも程があるだろ。どうするんだ、これ。もう出しちまっているんだろ」



ユウガもミカナも有名人だし、結構な人数に招待状を贈っているだろう。

誰もが見たらツッコミを入れる招待状だ……出した人たち全員のところに行くか、返信待つか。



「あ、大丈夫だよ。とりあえず、本当に来て欲しい数人にしか出していないんだ。いつも、僕が動くとミカナが奔走していたからね。だから、今回は狭い範囲で動いたんだけど……良かったよ、大きな騒ぎにならなくて。僕も成長したってことかな」



「……かける言葉はないぞ」



成長したのか、それって言いかけたが、俺も人のことは言えない身だ。



「それじゃあ、僕は招待状を贈った人たちのところに行ってくるよ。ヨウキくんのおかげで助かったよ、ありがとう。直した招待状を後日、改めて持ってくるね」



爽やか笑顔を残しユウガは去っていった……直接渡しに来るなら招待状の意味なくね。

まあ、身を固めることに反対意見はないかな。



しかし、無事に結婚式なんて挙げられるのかねぇ……トラブルを運んできそうな気もする。

何と言ってもユウガはトラブルを運んでくる勇者だからな。



「ヨウキさん、いますか?」



「やっぱりな。どうぞー」



ノックの音と声が聞こえたので扉を開ける、訪ねてきたのはセシリアだ、会う約束はしていない。

要件はおそらく……。



「急に訪ねてすみません。実はですね」



「これのことだよね」



俺は招待状をセシリアに見せる。



「……やはりヨウキさんにもきていましたか」



「やっぱりこれ関連か……」



俺の予想は当たっていたようだ。

ユウガとミカナ、二人の結婚は簡単にいかないらしい。

長い話になると思うので、お互い椅子に座る。



「それで、一体何があったんだ。問題の元凶がユウガなら直ぐに本人を捕らえてくるぞ」



「いえ、それで解決するわけではありませんから。今回はミカナがちょっと……」



「幸せ過ぎで倒れたとか?」



ずっと好きだった幼馴染みの相手から告白、同棲、結婚。

長年、想いを募らせてきた分、あまりにもトントン拍子で進みすぎて頭から煙が出てきているのかもしれない。



「えっとですね……どうやら、あまりにも早い展開についていけておらず、このままで良いのかと悩んでいるみたいでして。私に相談しに来たのが三日前の話なんですが、このような物が届いたので、どうなっているのかと」



「ミカナに会いに行く途中ってこと?」



「はい。ヨウキさんにも招待状か届いているだろうと思ったので、どう思っているのかなと」



「どう思ってるって言われてもな。俺としては二人が選んだ道なら、外野がどうこう言うもんではないかと。前にセシリアも言ってなかったっけ」



「そうでしたね。ですが、私にはミカナがどうしても心配なのです……」



セシリアも複雑な気持ちのようだ、俺が思っている以上にミカナの相談に乗っていたのか。

……俺もなんだかんだでユウガと行動していたこともあったからなぁ。

女子は女子同士で行動していたということだろう。



「んー、さっきユウガが来たときは結婚にノリノリな感じだったけどなぁ。てっきりミカナもノリノリだと思っていたんだけど」



「勇者様が来たんですか」



「ああ。招待状を読んだかの確認と結婚式に出れるかどうかを聞きに来た」



「……それでは招待状の意味がないかと思われますが」



「俺もそう思ったよ。まあ、招待状の不備を指摘したら、贈った人たちのところに行くって飛び出していった」



「私も招待状を貰っていますから屋敷に向かったでしょうね」



「そうだろうな。まあ、招待状の不備くらいなら、伝えて終わりだろうよ。それで、ミカナの件をどうしようか……今から会いに行く感じだよね」



「はい。ヨウキさんも着いてきてくれますか?」



あの二人にはここまできたら悩むことなくゴールインして欲しい。

何より恋人の頼みとなれば断らないのが男だろう。



「もちろんだ。女子二人の会話にどこまでついていけるかわからないけど、俺で良ければ力になるよ」



「ありがとうございます。では、早速行きましょう」



「ああ、ちょっと支度するから待ってて」



セシリアに部屋から出てもらい、超速で身支度を整える。

途中まで支度を済ませていたこともあって数分で終わった。

部屋を出るとセシリアはいない、宿の入り口前で待っているんだろう。



急いで宿を出るとセシリアの姿を見つけた……が、一人じゃない。



「……ヨウキ」



セシリアと一緒にいたのはレイヴンだった。

なるほど、レイヴンも招待状を貰ってここに来たということだな。

タイミング的にはそれしか考えられない。



「レイヴンも要件はこれだよな」



レイヴンに招待状を見せると頷いた、やっぱりな。



「……ああ、そうだ。どうも心配になってな。この前ミカナが同棲すると話していたばかりだろう。それが急に結婚式の招待状だからな。何か、強大な力が働いているんじゃないと思ったんだ。それで、ヨウキの意見を聞きに来た」



強大な力って……あの二人は政治的なこととか一切関係ないと思う。

いや、関係はあるだろうけど、ユウガが王様に頼んだって言ってたしな。

まあ、働いている力があるといえば……。



「愛の力だ。以上」



ユウガはミカナのために眠っていた聖剣の力を解放した男だからな。

俺との戦いや魔王との戦いでも目覚めなかった力を覚醒させた程だ。

陰謀とか何もないから、純粋な愛の力だろ、加減を知らないみたいだけど。



「レイヴンさんが心配するような可能性はありませんから、安心して下さい。……今から、ミカナに会いに行きますが、レイヴンさんもご一緒しますか?」



「そうだな。レイヴンも恋人を持つ男。男性視点が俺しかいないっていうのは厳しいかもしれん。頼めるか」



「……役に立てるかわからんが、仲間の危機のようだからな。参戦しよう」



「レイヴン、大丈夫かよ」



なんだか、いつもと微妙に違う気がするのは気のせいかね。

未来の計画を立てたことで舞い上がっているのかも。

だが、バランス的にこの三人は良いと思う、いけるはずだ。

レイヴン、セシリアと共に俺はミカナとユウガの愛の巣へと向かった。

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