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友人と考えてみた

「なんか、殺伐としてるなぁ……」



町を歩いているとすれ違う人々やカフェの店員の表情がな……。

男は獲物を見る目だったり、女はもっと目がぎらついていたりと、何があった。



もちろん、全員ではないけどもそういった人たちが多い。

何だろう、重大な事件か何かがあったのだろうか。



ここ最近はクレイマンが本気を出しているおかげで、依頼が殺到しているからな。

ミネルバでの依頼もあるけど、出張依頼もあるから……わからん。



「こんな中でも、いつも通りの場所はあるんだな」



それは一部の若者が集まるカフェスペース。

テーブルと椅子があるので、溜まり場にもなるし、近くにはお菓子屋もある。

ミネルバの憩いの場……なんだけども。



「うーむ、やはり、チャラチャラした者の場だな……」



俺は厨二だが、ああいうのとはまた違う。

ナンパしまくりの悪ふざけやりたい放題で……無法地帯になっている気もするが。



「……場違いというか、なんでこんなところにいるんだ?」



若者の中に一人、挙動不審な動きをしているやつがいる。

普段しないようなファッションなので、違和感があり、察した。

気づかれないように後ろから近づいて、声をかける。



「何やってんだよ、レイヴン。こんなところで」



「……ヨウキ」



しまった、見つかったといった表情で固まるレイヴン。

チャラチャラした若者が集まる場所、ナンパには持ってこいな場所、その気になればお持ち帰りもできる場所。



そんな場所にレイヴンはいた、変装までしてだ。

そして、俺に見つかり相当の焦りを見せていると、なるほど、なるほど。



「覚悟はできているんだよな……?」



「……待て、これには理由が!」



「ハピネスの顔はもう見れないと思えよ」



「ヨウキ、おい!」



「……まあ、冗談はこれくらいにしとこう」



俺は腕に電撃をまとわせる雷属性の中級魔法、≪ライトニング・アーム≫を解除。

ぶん殴る体勢だったのだが、腕を下ろした。



「俺はお前を信用している。なんか理由があるんだろうよ。……話せ、いつものパターンだろう?」



「……ぐっ、だからこそ、自分で解決したかったんだがな」



「……このまま突っ走って、ハピネスと遭遇して正体がばれたらとんでもない修羅場に」



「……場所を移そう」



俺の説得が通じたようで、仲良く肩を組んで移動した。

ノリ的なものも、時として大事だと思う。



「やって来たのは、いつものケーキ屋」



「……誰に説明しているんだ、ヨウキ」



「なんとなく、こういう口調になってみた。……で、今度はどうしたよ。あんな所、悪いけどレイヴンには似合わないと思うんだけど」



レイヴンにチャラいイメージはない、全くない。

約束ごとも記念日も忘れない、誠実さを持ち合わせている男だ。



ハピネスと付き合うまでを思い返す。

様々な苦難、葛藤を乗り越えたのを俺は見てきたからな。



「……ヨウキのおかげで蒼炎の鋼腕による騒動も収まり、騎士団内の仕事も普通に戻った。おかげでハピネスと会う時間も増えたんだが……思い返して気づいたんだ。……最近、お互いの時間が合えば必ず会っていること」



「へー、ラブラブじゃないか」



「……デート終わりに誘っているのは俺だ。俺はハピネスにとって重い彼氏になっていないだろうか」



「……は?」



「それで少しは軽さも求めるべきかと研究のために、あそこに」



「アホかぁ!」



思考回路がおかしい、どうしてそうなる。

禁じていた右腕を俺は解放し、熱烈な突っ込みをレイヴンにお見舞いした。



「ハピネスだってレイヴンのことが好きなんだから、お前と同じ気持ちかもしれないだろ。勝手に決めつけて、変な行動に出るなよ」



「……ハピネスに俺は重くないか、と聞けと」



「そういう意味じゃなくてだな」



ハピネスを受け入れてくれた時、この二人はもう大丈夫だと思ったんだけどなぁ。

俺は紅茶を飲みほして、考える。



正直、俺もレイヴンも相談したり、されたりは卒業した方が良い気もするのだ。

お互いにここまでの段階まできていて、誰かを頼るっていうのはどうなのかと思う。



「……情けない話、俺は不安なんだ。ハピネスに嫌われることもそうだが、何よりも……ハピネスの足枷にはなりたくない」



「そこまで思ってんのならしゃきっとしろよ……」



「それができればこうして悩んでいない!」



「それもそうだな。俺としてはレイヴンはこのままで良いと思うぞ。いきなり変えたらハピネスも変に思うだろうよ。軽い男にはなるなよ、絶対」



なったら、俺とデュークが飛んでいってハピネスを強制連行するからな。

悪い男に捕まって怖かっただろうと、三日かけて慰める……まあ、そんなことする日は永遠に来ない、確実に。



「……そうだな。ハピネスを悲しませたくはない。俺は間違っていたようだ」



「よし、これで解決」



「……だが、俺の行動が重いのかどうかがまだわからない」



レイヴンが首を振り、俺は頭をテーブルにぶつける。

根本的な問題が解決していない。



うーむ、悩んでいるのはまじなようだし、仕方ない。

本当に重い愛というものを見せてやるか。



「今から俺の知り合いのところに行くぞ」



「……何、どういうことだ」



「レイヴン、お前に愛の深さと重みってやつを見せてやるよ!」



ビシっと決めポーズで宣言する。

……見せるのは俺自身ではないのだけども。



適任なカップルがいるので見に行こう、そして話を聞きに行こうじゃないか。

というわけでレイヴンを連れて、ガイの宿へと向かった。



「邪魔するぞ」



「む……なんだ、小僧ではないか。急にどうした。そして、その男は誰だ」



しっかりとノックをして本人の許可をとってから、部屋に入る。

そこには椅子に座り、くつろいでいるガイの姿があった。



「俺の友人で騎士団長を務めているレイヴンだ」



「そうか、我輩はガイだ。よろしく頼む。お互いにこの小僧に振り回されているだろう、短い愚痴なら付き合うぞ」



「おい、こら」



冗談もそこそこ言いながら、俺とガイは話しているが、レイヴンは口を開かない。

初対面相手に話すのは厳しいのか……いや。



「……俺の名はレイヴンだ。ヨウキの紹介通り、騎士団長を務めている。町で何かトラブルに巻き込まれたら呼んでくれ、駆けつける」



レイヴンは自分の声に関してはもう大丈夫だったな。

これもハピネスのおかげ……なんてな。



「ふむ……了解した。……で、今日はどんな用件なのだ」



「実はな、こいつがちょっと特殊な悩みを抱えていて困っているんだ」



「……おい、ヨウキ!」



横からレイヴンが声を荒げているが、気にしない、気にしない。

ガイも今日は眠たそうじゃないっぽいので、協力してくれそうだ、こんな好機を見逃すわけにはいかん。



「それで、是非ガイの話を聞かせてほしいんだ」



「ふむ……我輩の話か。そう言われてもな。話せることも限りがあるだろう」



含みのある言い方……つまり正体についてか。

うーむ、レイヴンはハピネス、俺、デューク、シークのことは受け入れてくれている。

ガイのことも許容してくれるだろう、うん。



「どうした、ヨウキにガイ。二人して固まったままだぞ」



「レイヴン、お前を信用して話すぞ。ガイ、良いな?」



「ふん……好きにするがいい。我輩は構わん。最悪、全ては夢だった、という手段もあるからな」



なんてことを考えているんだかと思いつつ、俺はレイヴンにガイについて話した。

ガイがガーゴイルであること、正体を隠してミネルバに住んでいること、ティールちゃんのこと、ロリコンのこと。



……うん、最後のことに関してはガイに怒られた。

久しぶりな気がしてつい、反省してます。



「……なるほど、守り神か。大変だな、色々と」



「ふん……そうでもないぞ。ただ、寝るだけの日々よりは今の方が面白い」



「いやー、最初はヒモだったもんな」



ティールちゃんの給金はほぼガイの魔鉱石代として使われていたから。

耐えかねたガイが働きたいと言い出した姿を俺は鮮明に覚えて……。



「黙れ!」



ガイとしては不名誉なことなので、話題にしたくはないようだ。

レイヴンはヒモの意味がわかってないらしく、興味を抱いているけどな。


「……ヒモ。どういう意味だ?」



「ええい、興味を示さなくて良い。さっさと本題に入れ。何か目的があって来たのだろう」



「……そうだな。ヨウキ、頼む」



「ああ、わかったよ」

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