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好きな子に相談してみた

「すまん、セシリア。……助けてくれ。突然、訪問してきて無茶なことを頼んでいることは承知だけど」



「だ、大丈夫ですか!?」



俺はアポも取らずにセシリアに会いに来た。

大切な用事、というか、セシリアに頼みたいことがあったのだ。

そして、何故、セシリアが焦って俺の心配しているのかというと、俺が全身、ボロボロな状態だから。



まあ、俺がボロボロなことも頼みたい用事に関係しているわけだが。



「くそっ、油断した。俺がまさか、こんなミスをするなんてな。自分で回復する間もなく……」



「ヨウキさんがここまで追い詰められるなんて、どんな相手だったんですか?」



「いや、あれはどんな相手というか……とにかく、セシリアの力が必要なんだ。俺だけじゃ、無理なんだ」



セシリアの両手を掴み、必死さをアピールする。

男としてこんな感じで頼み事をするのはいかがなものかと言われるかもしれないが、今の俺はそうせざるを得ないほど、状況が悪いのだ。



「……わかりました。ですが、ヨウキさんをここまで追い詰める相手ですよね。私が加勢してどれだけお役に立てるか……」



「いや、相手は……って、やばい、もう来た!」



俺が感知出来る範囲内にそいつらは入ってきている。

ここまできたら、もう、セシリア頼りにするしかない。



「来た、とは?」



「頼むから、説得を手伝って欲しい!」



「説得とは一体……ヨウキさん、何をしたんですか」



セシリアの表情が呆れ気味な感じに変わってしまった。

だが、もう協力はしてくれると言ってくれたし、大丈夫だろう、うん。



部屋の外から足跡が聞こえてくるし、もう逃げるのも面倒だから覚悟を決めよう。



「実はハピネスとレイヴンにお祝いをしたら気にくわなかったみたいで……」



「はい、それで?」



「二人に追いかけまわされている現状なんだよ……」



「自業自得ではないでしょうか」



すごく冷たい言葉が返ってきた。

確かに俺も考えなしで配慮の足りない行動を取ったと思うけれど。

暗闇で二人きりっていうシチュエーションは恋人同士には良いんじゃないのか。

二人とも何が気にくわなかったんだろう。



「……とにかく、もう迫ってきているんだ。仲介をしてくれ!」



「はあ……一度、了承しましたし、今回だけですよ」



「ありがとう」



交渉が成立した段階で、扉の方から無機質な声が聞こえた。



「……すまない、セシリア。ここにヨウキがいるだろう。そいつを俺たちに渡してくれ。後は屋敷から出て行くから」



「……捕獲、連行」



やる気満々なオーラが扉ごし伝わってくる。

こいつは非常に不味いぞ、セシリアを巻き込むのはやはり、止めておいた方が良かったかもしれない。



「とりあえず、上がっていってください。落ち着きましょう」



セシリアが普通に扉を開けて、二人を招き入れた。

今でも俺に向かって飛びかかってきそうだ、怖い。

それをしないのはここがセシリアの部屋だからなのだろう。



「……ヨウキ」



「……滅」



「まあまあ、どうぞ、座ってください。詳しい話を聞かせてもらえませんか? 私もハピネスちゃんが長期休暇を取ったことに関して、心配していたんですよ」



「……了承」



「レイヴンさんも、噂をお聞きしましたよ。騎士の方々からの支持が今まで以上に上がっているとか。あと、孤児院の子たちの中で、レイヴンさんに憧れているという話がありました。訪問の予定とかはありませんか?」



「……俺にか?」



「はい。紅茶とお茶菓子もありますし、肩の力を抜いてゆっくりとお話でもどうでしょうか」



どうでしょうかと言いながら、もうセッティングを始めているセシリア。

二人はしぶしぶといった様子……でもなく、普通に椅子に座った。



「……全く、セシリアを味方につけるとはな」



「……反則」



「いやいや、味方とかじゃないって……この通り、反省してます」



椅子に座るも縮こまる俺、ここで調子に乗ったらセシリアも加わって三人からフルボッコっていうのもあり得る。

……いや、セシリアもそこまではしないか。

ただ、二人を帰して俺が居残りで正座っていうのはあるな。



「……全く、拘束がいつ解けるかわからなかったからひやひやしたぞ。強引に脱出しようにも……出来んしな」



「そうか? レイヴンならその気になれば破れたんじゃないのか。そもそも効力が完全に切れてから脱出したんだっけか。俺がその場にいないんだから、魔力の供給はされない。つまり、《セイントチェーン》の拘束力は少しずつ弱まったはずだろ」



それなのにも関わらず、力ずくで引きちぎらなかったのは何故だろう。



「……鈍感」



「は、なんで、俺が鈍感なんだ」



「……好き」



ハピネスは甘えるようにレイヴンの腕に自身の腕を絡めている。

いきなり俺とセシリアの目の前でデレ始めたぞ、こいつ。

話の流れがわからん、どうしてこうなった。



「ヨウキさん、レイヴンさんはハピネスちゃんのために強引な方法を取らなかったんですよ」



セシリアが紅茶とお茶菓子を運んできたわけだが、準備をしながら俺たちの話を聞いていたようだ。



「ヨウキさんはハピネスちゃんとレイヴンさんをまとめて拘束したんですよね。それですと、レイヴンさんが強引に《セイントチェーン》を壊そうとしたら、ハピネスちゃんにも負担がかかりますから」



ですよね、とセシリアがレイヴンに確認すると恥ずかしそうに頷いた。

つーか、ハピネスはいつまで甘えているのか。

そこまで積極的にいくタイプだったっけ。



「……修行、不足」



「何の修行だよ!」



「まあまあ、ヨウキさん。お二人共、おめでとうございます」



「なんか、その感じだとこの二人が結婚した様に聞こえるな」



はい、今の連携口撃で赤い果実が二つできました。



「ヨウキさん……」



「俺は思ったことを口に出しただけかな」



俺は口笛を吹きながら窓の方向を見る。

いやあ、いつ来てもセシリアの部屋から見える景色は綺麗なものだ。



「……ヨウキ、覚えていろ」



「……八つ裂き」



「ハピネス、お前の言葉は純粋に怖い」



「ヨウキさん、思ったことを何でも直ぐに口にしてはいけませんよ。口にする前に考えることも必要です」



「セシリアからは普通にダメ出しされた!」



第三者から見れば、俺たちのやりとりはどういう風に見えるのだろうな。

……使用人の気配はないな、うん。

聞かれたら不味い話も混じっているから注意が必要だ。



「……まあ、ともかく、ヨウキやセシリアには色々と迷惑や心配をかけたな。すまない、そして……ありがとう」



「私は大したことはしていませんよ」



「俺もした覚えはないな。いらないことばかりしていた気がする」



「……否」



「……ハピネスの言う通りだ。今後、何か力が必要になったら言ってくれ。必ず力になろう」



「……約束」



初々しいカップル二人からこんなにも感謝されるとは。

さっきまで、恐ろしいくらい完璧なコンビネーションで俺を追い詰めていた二人はどこにいったよ。

これがセシリアの力なのか、それとも俺単品だと残念なだけなのか。



「わかった。でも、今は二人の時間を大切にするのが良いんじゃないか」



「ヨウキ……」



「隊長……」



「二人の記念日とかさ、いっぱい作れよ。そうして思い出を作るのも悪くないと思うんだ。例えば、この前初めて二人で一緒のベッドで寝た記念日とか、な」



「ヨウキさん、何故、例えをその日にしてしまったんですか……」



「あ……」



良い話をしているような空気が一瞬流れたのに……。

二人の出す空気は甘かった、セシリアが出したお茶菓子も甘かった。



俺は詰めが甘かった。

結局、その日は自ら正座をして反省した。

セシリアが仁王立ち、俺は正座という光景が日常となってきているような……わけない。



まあ、俺とセシリアの立ち位置は変わらないだろう。

この日はそう思っていたのだけれど。



まさか、この出来事から一月も経たない内にセシリアが正座をしていて、俺が慰める立ち位置になるとは思いもしなかった。

もしかしたら、今年最後の投稿かもしれません……。

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