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友人を説得してみた

「待て待て、どういうことだ」



「……聞く耳持たん!」



レイヴンの剣と風の魔法によって強化された俺の拳が交差する。

おかしい、何かが違う、絶対に違う。

剣を受け流しつつ、レイヴンに問い続ける。



「おい、一回ストップだ。絶対に俺ら噛み合ってないから!」



「……俺には戦う理由がある」



「その理由が噛み合ってないから待てって言ってるんだよ!」



俺のツッコミもむなしく感じるくらいスルーされ、攻防は続く。

このまま、やられっぱなしというのもしゃくだし、本気を出してレイヴンを撃破。

捕縛して、話し合いをするという手に……。



「うぉあ!?」



考え事をしていたからか、レイヴンの剣に一瞬、押されてしまった。

一度、距離をおいて、体勢を立て直す。



「ふぅ……っつ!」



息つく間もなく、レイヴンは瞬時に間合いを詰めてきた。

肉体強化とかではなく、洗練された技みたいな。

無駄のない動きで、俺を追い詰めるように剣技を放つ。



待ってくれ、なんで、こんなガチな感じで俺たちは戦っているんだ。

つーか、レイヴンが魔王城で会った時より強く感じるんだが。



「待てって言ってるだろ!」



俺はしびれを切らし、風の塊を四方八方からぶつける、風の中級魔法ストライクウインドを発動した。

行動を制限すれば大人しくもなるだろう。



《ストライクウインド》がレイヴンに迫るが、キレイな回転斬りで消滅させられた。

結構、魔力は込めたのに……今のレイヴンはユウガより強いかもしれない。



自分への障害が消え去るのを見ると一目散に俺に斬りかかってくるレイヴン。



「いい加減に……しろ!」



俺は肉体強化のレベルを上げ、レイヴンの後ろに回り込み、背中を殴打する。

派手に地面に転がるレイヴン……なのに剣は握ったままだ。

嫌な予感は見事に的中し、何事もなかったかのように起き上がった。



もう、どう収拾つければ良いんだ、これ。

気絶するまで殴り倒すしかないのかね。

そんなことしたら、色々と後が恐い。

よし、ボコりながらどうなったのか、聞こう。



「ハピネスとはどうなったんだ……よっ!」



俺はレイヴンの剣を弾いて問いかける。



「……全て、聞いた」



レイヴンは剣を持ったままだが、話し出した。

これは受け答えに注意しないと、直ぐにバトル再開なパターンっぽいな。



「お前が……ハピネスをっ!」



「その言い方は止めろ! 俺がハピネスに何かしたみたいじゃないか」



「実際にしただろう」



「だから、それは仕方なかったんだよ。あいつがミネルバで生活するには、羽根はむしらないと。そもそも、それがなかったらレイヴンはハピネスと出会ってなかったかもしれないぞ」



「……それでも、だ。俺は引けない」



「何でだよ!」



何がレイヴンをここまで駆り立てるのか。

考えるまでもない、ハピネスなわけだが。



「……ハピネスの決意は容易ではなかっただろう。俺に拒絶されるかもしれないという不安を前にしても、彼女は俺を信じて告白してくれたんだ。俺はそれに答えたい」



「だから、俺を斬るのか!?」



「……安心しろ。ヨウキの言い分もわかる。峰打ちだ」



「お前の剣、峰打ちとか関係ないだろ!」



レイヴンが使っている剣は両刃タイプの剣。

刀とはまた違うので、普通にざっくり殺られる。



「……直ぐにセシリアを呼ぶから、大丈夫だろう」



「ふざけんな!!」



誰が簡単に斬られてたまるか、そっちがその気ならこっちも本気モードになってやる。

回りに誰もいないことを確認してから魔族にチェンジ。

この姿でレイヴンと戦うのは魔王城以来だ。



「……それが、ヨウキの本気なんだな」



「レイヴンが知っている俺は一度も本気を出してないぞ」



こうなったらもう、圧倒的力の差はわかると思う。

ずるいかもしれないが、剣を納めてほしいものだ。

そうなったら、ゆっくりとハピネスとの話を聞かせてもらいたい。



「……どうやら、勝てない相手らしい」



さすが、騎士団長をやっているだけあって、引き際もわかっているようだ。

良かった、レイヴンがまともで。



「なら……」



「だが、それでも俺は剣を納めない!」



「まじかよ!」



どんだけ、レイヴンは俺のこと許せないのだろうか。

最早、憎しみとか覚えているレベルだろ。

剣に邪な感情込めて振るっていいのか。



「……約束したからな。ヨウキに一発と」



「あの野郎!」



恋人になって、早速物騒なお願いしてんじゃねぇよ。

相手はレイヴンなんだよ、騎士団長なんだよ。

しかも、愛のパワーみたいなのも発揮しているんだぞ。

これじゃ、完全に俺が悪者だろ。



「レイヴン、聞け。これはハピネスのお茶目だ。いつものやつなんだ。ここまでガチになるようなものじゃない」



「……そうなのか?」



「少なくとも人気のない所とはいえ、派手にドンパチやるようなことでもないだろ」



「しかし……」



「大体、その件に関しては当時、セシリアにこってりとしぼられたよ。女の子の身体にってな。……それでも、気にくわないなら、一発殴っても良いぞ」



彼氏が彼女の心配するっていうのも、わかる気がしてきたし。

一発なら、まあ……良いかなという感じ。

殴られたら、速攻で回復魔法かけるけど。



俺の提案にレイヴンは無言で頷き、剣を納めてくれた。

後は俺が一発もらうだけだな。



「……ヨウキ、手のひらをだせ」



「ん、こうか?」



レイヴンの言われた通りにすると、握り拳が軽く当たった。

……これって、殴られたって言えるのか。



「……行こう。それで、終わりだ」



「そうか」



俺は魔族モードを終了させて、レイヴンの横を歩く。

レイヴン的に満足したみたいなので、良かった。



「さてと」



俺はいつもの様にいらなくなった角と翼を処理する。

角が折れる音、翼が引きちぎれる音を聞いて、レイヴンが顔をしかめた。



「……痛くないのか」



「めちゃくちゃ痛いけど」



だって自分の体の一部を無理矢理折ったり、ちぎったりしているわけだし。



「……ハピネス」



「待て待て待て待て! あいつは俺ほどじゃないから。手入れみたいなものだから」



羽根を抜くことが手入れと言うのか知らないが、今はフォローしないと。



「……そうなんだろうか」



「そうだって。ほら、早く帰ろうぜ。どうせ、帰ったらハピネスが待っているんだろ」



「……待ってない。俺が帰るのは騎士団の寮だぞ」



「あ、そっか……悪い。色々と飛び越えた勘違いしてたわ。もう二人は同棲していて、ハピネスが料理を作ってレイヴンの帰りを待っているものかと」



「……!?」



レイヴンが盛大にむせた、一体、何を想像したのやら。

告白されたのだって、先日で日が浅いはず。

言い出しっぺは俺だけども……なぁ?



「幸せな未来だな」



今度は普通に頭を殴られた。

顔を真っ赤にしていたので、何やら妄想していたのだろうな。



「……ちゃかすな、怒るぞ」



「すでに手は出たけどな」



俺は殴られた部分をさすりながら歩く。

いじり過ぎは良くないか、図星だったから怒ったのかもしれないな。



「……騎士団の寮に着いたら、色々と話を聞かせてくれ」



「わかった、ハピネスから聞いていると思うが俺からも話させてもらうぞ」



こうなった以上、レイヴンは信用できる。

なんだかんだで、最初に出来た友達だしな。

協力というわけではないが、事情知っている人が増えるのは良いことだ。



俺の正体について詳しくとこうなった経緯についても話そう。

レイヴンに着いていきながら、会話の内容を頭の中でまとめる。



「……おかえり」



騎士団の寮に着いたら、入り口前でハピネスがいた。

冗談だったのに、まじで待っていやがった。

これにはレイヴンも動揺したのか、一瞬、固まる。



そして、再起動するとハピネスの手を取り、別方向へと歩き出した。



「……予定変更だ。ヨウキの宿に行くぞ」



「わかった。そうだ、ハピネス」



「……何?」



悪ふざけのことに関して注意……がいつものくだりだ。

しかし、今はそれよりもかけるべき言葉があるだろう。



「……良かったな」



「……う、ん」



ハピネスにとって予想外の言葉だったのか、驚いた表情をしたと思ったら、顔を真っ赤にし俯いてしまった。

レイヴンも照れているのか、俺と目を合わせようとしていない。



手も固く握ったままで、話す気配は無しときた。

何、このリア充満載な感じ。

これから俺の宿部屋で何をするのか。

考えていたプランを改善した方が良いかもしれないな。



とりあえず、初々しいカップルと独り身という三人組が部屋の中に集まる。

聞かれたら困る話をする予定ではあるので、周囲の警戒は万全だ。



「……で、この座る位置は何だ」



俺に向かい合う形で座っているのだが、二人ともやけに姿勢が正しい。



「付き合うことになったからな。報告にあたって、それなりの姿勢を……」



「俺の立場は何なんだよ!」



剣を向けられたり、かしこまった形で交際の報告されたりと忙しいな。

そんな、微妙なポジションにいるのか、俺は。



「……俺は相談にのってもらったりしたからな」



「……隊長、家族、」



「そういや、デュークがそんなこと言っていたな。……まあ、まったくの他人ではないか。……で、何から話すか。つーか、二人はその……どんな感じでまとまったんだ?」



こういうことってあまり聞くのは良くないとは思うが、如何せん興味がある。

いきなりの質問に二人は赤面、さっきから顔を赤くしてばっかだ。



何かを思い出したのか、ハピネスがレイヴンの肩に顔を埋めている。

恥ずかしくて顔を隠しているのか、俺には甘えているようにしか見えない。

嫉妬って、怖いと思う。



「……先日、デュークに案内されて行った森。そこからだったな」



レイヴンが当日の状況を語り始めた。

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