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逃げられてみた

本来の目的を忘れ、セシリアとデート気分で博物館を回っていたことを少し反省しつつ、レイヴンとハピネスを探す。

余計なことをするつもりはもちろん、ない。



今日は厨二を封印、あとは本人同士の問題ということだし。

むしろ、このままセシリアと楽しんでいても良いのではと思う。



「どうかしましたか?」



隣には思考していて、止まっていた俺を心配してくれるセシリアがいる。

もう、今日はずっとこんな感じでいいんじゃないだろうか。



「……あ!」



良いかなと思っていたところでレイヴンとハピネスを発見。

何やらもめている様子だが、何かあったのか。



「……あっち」



「……待て、そっちのフロアは駄目だ。絶対に」



「……興味」



「……抱くな。本当に駄目だぞ」



「……突破!」



「……っ!」



レイヴンの横を華麗な回転抜きで通り、走り抜けていくハピネス。

騎士団長、なにやってんだ。

そこまで見られたくないものがあるのか、ハピネスを追いかけるレイヴンに焦りが見えたな。



「よし、俺たちも行こう」



「いえ、止めましょう」



いざ、ゆかんと大いなる一歩を踏み出そうとしたら止められた。

これは出来るだけ二人の邪魔はするな、二人きりにさせようという考えだろうか。



「あちらのコーナーは……ちょっと、駄目です」



目を逸らして言う当たり、なんかわけありか。

だが、この感じは……レイヴンとハピネスは関係ないな。

考えられるのはセシリアに関しての何かがあるパターン……。



「いくぜ!」



「あ、ヨウキさん。待っ……」



「もちろん、置いていかない」



セシリアの手を掴み、レイヴンたちが向かったコーナーへ。

しかし、入って直ぐに俺はセシリア、レイヴンが拒んだ理由を知ることに。



「……石像があるぞ。しかも、結構精巧な作りだ」



部屋の中央に展示されているので、かなりの存在感があるな。

見れば見るほどに正確に、それでいて美しく、凛々しく見えるように作られている。



「あああ……」



セシリアは恥ずかしくて直視できないようだ。

まあ、自分の等身大の石像があればそうだよな。



「だから、ここに来た時に俺を誘導したのか」



この部屋に俺が行かないように腕をとって、一緒に回っていたというわけだ……レイヴンも。

ハピネスが石像とレイヴンを何度も見比べている姿がなんとも……。

レイヴンもそうやられたら顔を隠せないからな、だからって強張ってるぞ、普通に戻れ、普通に。



「はい。自分の石像なんて……見るのも見られるのもちょっと厳しいです」



「ましてや、プレートに勇者パーティー、聖母、セシリアなんて書かれてあったらなぁ」



自分のコンプレックスを晒されている場所に来たいわけないな。



「はい。本当にもう、断りたかったのですが。勇者様がのりのりでしたので……」



「最終決定権はユウガにあったのかよ」



「……はい」



ユウガ以外は全員反対したんだろうな。

こんなもん残されるの嫌だろうに、自分が住んでいる近くにはあって欲しくないと思う。

……あくまで俺の価値観だけどな。



「まあ、良くできてるしいいんじゃ……」



良くありませんと言わんばかりのオーラをセシリアから感じる。

これは笑ってごまかせるものじゃないな。

一刻も早く、この部屋から出るのがセシリアの機嫌を治すには一番の近道となるだろう。



「わかった。じゃあ、もうここは終わりにして移動をしよう……」



俺はセシリアに提案したのだが、何故、ああと書かれたメモが目の前にあるのだろうか。

そして、どうして、ハピネスは俺の背中にメモを貼り付けまくっているのだろうか。



「セシリア、ハピネスが俺の背中に貼っているメモにどんなことが書かれているか教えて」



「はい。えっと、鈍感、自意識過剰、最低、鬼畜、外道……」



「今まで、お前が俺に言った悪口じゃねーか!」



そんなこと書いたメモを貼るんじゃねーよ。

俺がくずい人ですアピールをしているみたいじゃないか



「……事実!」



「確固たる意思を持って言うな。事実じゃねーから!」



レイヴンもセシリアも笑ってないで、このイタズラ好きをなんとかしてくれ。



「申し訳ありません、お客様。館内ではお静かにお願い致します」



「あ、すみません……」



騒いでいたせいで、管理人に注意を受けてしまった。

いや、こういう施設で静かにするのはマナーだ、仕方ない。

しかし、何故、注意されるのが俺なんだ。



「うむむ……俺か今の!?」



「そうですね……しかし、私やレイヴンさんの身元がばれずによかったです。ヨウキさんが注意を引き付けてくれたおかげですね」



「引き付けてもいないし。つーか、注意を受ける発端を作ったのはこいつだろ」



俺はハピネスを指差す。

こいつが俺をおちょくりだしてから、いつもの漫才パターンになったんだがらな。



「……責任転嫁」



「俺が悪いと?」



またバトルが始まりそうになったところで、間にレイヴンが入る。

メモを見せてくるが、どうせ落ち着けとか書いてあるのだろう。

案の定、落ち着けだった。



「この勝負は博物館を出たら、けりをつけるぞ」



「……心得た」



「また、お前はどっからそんな言葉を覚えてくるのやら……」



「屋敷で仲良くしているのはティールちゃんだったかと。他の使用人の方とも話していますが」



「……ハピネスに知恵を与えていそうな使用人仲間がいるのかね」



本人は自分の話題だというのに、興味なさげなご様子。

これはアクアレイン家の七不思議の一つとして、語り継がれていくだろう……。



「不吉なことを言わないでください」



「あ、声に出してた?」



「はい、七不思議ってなんですか! 私が住んでいる屋敷にそのようなものはありません」



「いや、まあ、冗談だけども」



こんなやり取りをして、騒いでいたらまた注意をされそうだ。

二人と合流した感じで、このまま博物館を回るか……空気を読んで別れるか。



二人きりにさせておいた方が、お互いの距離は縮むだろうが、どうするかね。

結果、決めかねているうちに気がつけば一緒に回っている始末。

これでいいのか、悪いのか……。



「……悪いパターンだったか」



遠目で見えるのはデュークとイレーネさん。

何かの言い合いをしているみたいだ。



イレーネさんが走り去ろうとしているところをデュークが腕を掴み

引き止めている。

何、あの二人、青春しているの? 公共の場で。



「えっと、何かあったのでしょうか」



「……痴話喧嘩」



「デュークがか。考えたくないが……まさかな」



レイヴンがあの二人は痴話喧嘩をするような仲だったのかとメモを見せてくる。

気づいてなかったのかよ、それとも、騎士団内では隠していたのか。

または、レイヴンが鈍感なだけか……後者かな。



「さすがに痴話喧嘩の盗み聞きはしたくないな」



「痴話喧嘩でなくても盗み聞きはしてはいけませんよ」



「時と場合によるな。情報収集は重要だし。な、レイヴン」



俺に振るなとデカイ字で書かれたメモが返ってきた。



「あ、イレーネさんがこっちに気づいたぞ」



なんか、俺に向かって指差してるんだけど。

指をものすごく縦に振っている。、

まるで俺が何かして、やっと見つけた……って感じの反応だ。



そして、こちらに向かってくるイレーネさん、追いかけるデューク。

まるで行くなと言っているようだ、イレーネさんに手を伸ばしている。

真面目にこれ、青春ドラマの撮影じゃないのか。



「セシリア、嫌な予感がする」



「私もです」



「……相思相考」



「新しい言葉を勝手に作るな」



漫才やってる余裕はなく、ある意味期待通りにイレーネさんが俺たちのいる手前でこけた。

ダイブしてくるイレーネさん。



本来なら受け止めるべきだったのだが、気がつけばセシリアの手を引いて、かばっている自分がいた。

いや、本当に驚きだ、

セシリアだったら、イレーネさんがこけた拍子に飛び込んでくるぐらいの対処は出来るはず。



結局、デュークが追い付いたのでイレーネさんが怪我を負うようなことはなかった。



「全く、だから、待つっすって言ったじゃないすか」



「ご、ごめんなさい。大丈夫でしたか?」



「は、はい。私は大丈夫です……」



「お、俺も……」



いつまで手を握っているのか、俺は。

セシリアと目があった瞬間、あわてて離す。

まじで、恥ずかしい……これぐらいのことでかっこつけて庇うとか。



「……なんだ、この状況……は」



「レイヴン!?」



セシリアとイレーネさんの前で声を発するなんて。

イレーネさんは誰の声かわからなかったのか、せわしなく、周りを見回している。



「ちょっ、レイヴン。待つっすよー」



そしてそのまま、レイヴンは俺たちを置き去りにし、逃走してしまった。

いや、俺が言いたいよ、何、この状況。

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