元部下の願いを叶えてみた
固まった三人を軽くビンタして正気に戻した。
あれだけの説明じゃ簡潔過ぎたので詳しく事情を説明した。
「隊長〜、なんで人間の女の尻追っかけてんすか〜。隊長魔族でしょう?角折って、翼もいでまで、嘆かわしいっす」
うっうっと泣いているデューク。
セシリアが外の世界に行きましょうと言ってくれたんだ。
別に尻を追ったわけじゃない。
「……不潔」
何でそこまで言われなきゃならん。
おい、ハピネス、俺から顔を背けるな。
「アハハハ、アハハハ。〜ダメ、笑い止まんない」
ダメじゃねえ。止めろ、不愉快だシーク。
「〜っ。とにかく俺は今、ヨウキという人間として生活しているんだ。……もう、お前達の隊長じゃない。俺は依頼があるんだ。じゃあな、好きに生きろよ。」
悲しいがここできっぱりと別れるべきだろう。
その方がこいつらのためにもなる。
「嫌っすよ。隊長は隊長っすから」
「……うん」
「僕もやだ〜」
何だこいつら
「いや、だから、俺は人間として生きていて、もう魔族じゃ」
「僧侶の子って可愛かったすか?」
「……美少女系」
「見た目以上に胸あったよ〜」
こいつら、聞いちゃいねぇ。
あと、シーク。何でお前そんなこと知っている。
「隊長が惚れた人間、会ってみたいっすね」
「……うん」
「僕も会いたいな〜」
何言い出してんのこいつら?
俺が呆れ顔をしていると三人で勝手に話を進め、何かを決めたようだ。
「というわけで隊長が惚れた人間に会いに行くことになったっす」
「あほか!」
どういうわけだよ。
さっきかっこよく、もう会うことはないだろう的な雰囲気出したのに。
「だいたい、俺は依頼があって、ここらで村人を襲っているコカトリスを退治しに来ていて、お前達に構っている暇は……」
「了解っす」
「……出撃!」
「行ってきま〜す」
ないと言おうとしたのだが、最後まで聞かずに森の奥へ行ってしまった。
十分後、コカトリスの死体をズルズルと引きずった三人が戻ってきた。 こいつら、俺の依頼を取りやがった。
「これで行けるっすね」
「……任務完了」
「久しぶりに運動した〜」
どうやら何としてでもセシリアに会ってみたいらしい。
「……そこまで言うんなら覚悟はあるんだろうな?」
王都に行くにはクリアしなければならない課題がある。
俺もぶち当たった難解な課題が。
「もちろんっす」
「……余裕」
「大丈夫だよ〜」
どうやら決意は固いらしい。
そこまで言うなら仕方ない。
連れて行ってやろうじゃないか。
俺が良いと言って喜ぶ三人に対し、俺は不敵な笑みを浮かべていた。
二日後
俺はコカトリスの依頼完了の処理をするためギルドに来ていた。
もちろん、三人も一緒にだ。
「隊長〜。これ視界が悪いっす〜。取っちゃだめっすか〜?」
「取ったら、大騒ぎになるからな。まあ、騒ぎになる前に俺が魔法で消滅させてやるが」
デュークは首が落ちないように兜を被らせて、金具で鎧と兜を繋げた。
これなら、鎧騎士に見えるだろう。
「珍しいものがいっぱいだ〜」
シークは羽さえ無ければ幼い美少年に見える。
その羽も小さいので服に隠せば問題なかった。
問題は……
「……しくしく」
ハピネスだった。
彼女はハーピーなので、腕や足などに羽が生えていた。
どうしようか悩んだのだが、俺は彼女の覚悟を尊重した。
結果……
「……もうお嫁にいけない」
全身脱毛ならぬ全身脱羽毛をした。
……やり過ぎたかもしれないが、彼女が望んだことだ。
後悔はしていない。
デュークには隊長、酷いっすと言われ、シークにはこれは僕でも笑えないな〜と言われた。
……それでも後悔はしていない。
そんな、俺のおかげで見事に人間に化けた三人を引き連れて、だらけ職員クレイマンがいる受付に向かった。
「クレイマン、コカトリスの討伐依頼、完了したぞ。死体はギルドの職員に渡しといたから」
「おう、じゃあ依頼の処理しとくぞ。……はぁ、めんどくせ」
クレイマンはもう諦めたのだろう。最近俺に他の受付に行くことを勧めなくなった。
「……あん?後ろの三人は仲間か?鎧騎士にガキに……おい、なんかその娘泣いてんぞ。なんかしたのか、お前?」
「いや、知らないな」
とぼける俺に対して首を傾げるクレイマンだった。 まあ、面倒だからだろう、それ以上追及してこなかった。 依頼の処理をしたので、三人を連れ、俺はセシリアがいるアクアレイン家の屋敷に向かった。




