元部下と再会してみた
今日は依頼で王都から馬車で五時間ほどかかるオセルの森に来ている。
昼間だというのに太陽の光があまり入らないせいか、薄暗く、時々、魔物の唸り声が聞こえる不気味な森だ。
俺のランクはCに上がっている。
前回、セシリアの屋敷訪問で、勇者くんがセシリアのことが好きということが判明した。
このままではやばいと悟った俺は、勇者くんとの差を少しでも縮めようと頑張ったのである。
今日はこの森でランクCの魔物で迷惑かけているから退治してくれと依頼のあったコカトリスを倒しに来たのだ。
「まったく、近くの村人をむやみやたらに石化させるとか……何がしたいんだよ」
コカトリスは石化能力のある魔物だ。
だが、それ以外は大した能力は持っていないのでランクはCなのである。
しかし、村人にとっては充分脅威的な存在だ。
しばらく森を歩いているとガサリと草むらの奥から音がした。
俺は警戒しながら、ゆっくりと草むらに近づく。
「……っうお!」
いきなり、草むらから首なしの鎧が出てきて、持っている剣で切りかかってきた。
俺はバックステップで剣を避け、間合いをとる。
得意の魔法で蹴散らしてやろうと思ったのだが……
「……ん?」
「……あれ?隊長じゃないっすか。」
よく見るとそいつは俺が魔王城にいた時の部下、デュラハンのデュークだった。左手で持っている顔が驚いた表情をしている。
「やっぱり、隊長っすよね。角と翼はどうしたんすか? それより、今までどこにいたんすか。引きこもりの隊長はいなくなるし、魔王様は勇者に倒されるしで心配してたんすよ!?」
「ええい、落ち着け。それよりなんで、お前がここにいる」
セシリアに説得されたあの日、時間がなかったとはいえ、何も言わずに魔王城に置いてきてしまったのだ。
まさか、生きていてくれたとは。
「隊長を探してたんすよ、ハピネスやシークも一緒に。俺達心配したんすよ」
ハピネスはハーピー、シークはピクシーでどちらも俺の元部下である。
「二人もこの森にいるのか?」
「ええ、今日はこの森で隊長探してたっすから。もう少し行った場所で合流する予定っすよ。隊長も行きましょう」
久しぶりに元部下に会いたい。
それに、今まで探してくれていたのだ。
会わないわけにはいかないだろう。
そのまま、デュークに案内され、合流を予定している場所に向かった。
「……生きてたんだ」
「わぁ〜い、隊長だ〜」
合流場所だという所に着くと、元部下のハピネスとシークがいた。
ハピネスは目を細めて、直ぐにそっぽ向き、シークは笑顔で抱き着いてきた。
「お前達、生きてたのか」
魔王が勇者に倒された時にやられたんじゃないかと心配はしていたのだが。
よく、生きていてくれたな。
俺の言葉にむっときたのかデュークは片腕を腰に当て踏ん反り返り、強気な態度で反発してきた。
「勝手に殺さないで欲しいっす」
聞くところによるとあの日、勇者パーティーが来ては俺が村に捨ててくるのを命じていたので、いつものように違う部屋で待機していたらしい。
しかし、俺がいつまでたっても呼びに来ないので、心配し俺の部屋に行ったら……
「……隊長いなかった」
ハピネスが素っ気なく答える。
「そしたらね〜、魔王様が勇者にやられちゃったから僕達三人で城から逃げたんだ〜」
あはは〜と笑っているシーク。
何がそんなに可笑しいと聞いたら、逃げる時にデュークが『隊長〜』と泣きながら逃げる様を思い出したらしい。
確かにそれは笑えるな。
「いや〜、隊長がやられるわけないと思って……今までずっと探してたっす」
あれからもう一ヶ月半ぐらい経ってるのにずっと俺のことを探していてくれたみたいだ。
なんて上司思いの奴らだ。
「だって隊長引きこもりじゃないですか。どこにいるのか不安で不安で仕方なかったっす」
…ん?
「……放っておいたら……何するかわからない……」
んん?
「たまにスイッチ入って変なこと叫ぶしね〜」
まてこら、こいつら俺のこと何だと思っていやがる。
「まあ、見つかったから良しとするっす。……で隊長。さっきも聞いたっすけど角と翼はどうしたんすか?」
「自分で折ってもいで捨てた」
「「「……」」」
そこからの反応は様々だった。
デュークは何やってんすか〜と泣き着き、ハピネスはついに目覚めたとか言っている。
何にだよ。
シーク?
笑い過ぎて腹を押さえて、地面の上でピクピクしているよ。
「隊長〜俺達がいなくなってから何があったんすか〜」
今だに俺に抱き着き、泣き続けているデュークが説明を求めている。
何があったと言われてもなぁ。
正直に言うとするか。
「勇者パーティーで、かわいい僧侶の子がいただろ。その子に告白してフラれたから人間やってる」
泣きついていたデューク、冷淡な表情をしていたハピネス、笑い転げていたシーク。
様々な行動をとっていた三人が同時に固まった。




