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どっちがどっち? ビーフシチュー編

真美と哲が朝から喧嘩。ビーフシチューはご飯で食べる?パンで食べる?

あなたならどっちがいい?

「真美、今夜はビーフシチューが食べたいなぁ」

「いいけど、ご飯があるから、今夜はご飯で食べます」

「何で…ビーフシチューはパンだろう?」

「胃の中に入ったら何でも同じなの。お分かり?ほらっ、さっさと学校に行く」

高校3年生の3学期は原則的に自由登校だ。

特に推薦入試で合格を決めてしまった私は学校指定の登校日以外はアルバイトを始めた。

そんな私のアルバイト先は幼馴染の歩美の家。

歩美の家はお父さんが弁護士事務所を開設している。

私は電話番とお茶くみ等の雑務を引き受けている。

事務所のお仕事は9時~3時。お昼休みは事務所の皆さんで食べている。

今朝の喧嘩の原因は本当に些細なことだけれども、喉に刺さった小骨のように私の中では燻っていた。



「真美、今日もお疲れちゃん。お昼にしよう」

お昼になって歩美が事務所にやってくる。歩美は月末のセンター試験を受験するので今が追い込み時だ。

「ここに来るって事は…何か分からないの?」

「よくぞ分かってくれました。ここ、教えてちょ」

「はいはい。…って解いていくのよ。分かった?」

「なんとなく。ありがとね」

私達のやり取りを事務所にいる先生方が微笑ましく見ている。

「大学入試か。あの頃もっと勉強していたらなぁ…」

「赤坂先生は弁護士を目指していたいんじゃないんですか?」

「いいや。俺は医者志望だったんだ。けどセンターの結果が悪くて浪人して進路変更したんだ」

「ふぅん。そうなんですね」

「お嬢さんの学校はかなりの進学校ですよね」

「地域では一番レベルが高いですよね」

「じゃあ、お嬢さんは才媛じゃないですが、先生羨ましいですね」

弁護士の先生方は歩美のおじさん(本当はこの人も弁護士だけどね)に言っているがおじさんは微妙な顔をしている。

「皆嫌だ。私なんかよりも、真美の方が頭いいわよ。三年間学年ずっと学年主席の生徒会長だもの」

「偶然だから。そんなにガリガリ勉強していないもの」

「真美ちゃんは今アルバイトしているってことは推薦よね。どこに行くの?」

「私ですか?千葉大の教育学部ですけど。どうしても夢を叶えたくて」

「お嬢さんも千葉大の教育学部志望ですよね」

「ね?私よりも頭がいいでしょう?けれども、この子ってば体育の先生になるんですって」

「珍しいですね。でも副担任で他の教科も目指すんですよね」

「そうなると思います。物理以外の教科ならどれでもいいんで考えていません」

暫く取りとめのない話をしてから私達は昼食を取り始めた。



「…で、本当に籍を入れるの?」

「うん。届は哲が卒業したらでいいんだけどね。哲がどうしても18歳になったら婚姻届を書きたいって言うから」

「ねぇ。父さん。それまで家で婚姻届預かってもいいよね」

「その位は構わないさ。それにしても二人は本当に計画的だね。同棲しているんだろ?」

「その表現は微妙に違うんだけどもね。哲が実家に戻ったら哲が襲われちゃうもの」

「なかなか強烈は義理のお姉さんらしいね。それよりもさっきの眉間の皺はどうしたの?」

「ねぇ?ビーフシチューにご飯はありだよね?」

歩美に感付かれてしまったので、私は仕方なく今朝の事を話すのだった。

「家もそう言えばご飯だね。父さん」

「そうだな。哲君はパンでビーフシチューが食べたいと」

「そうなの。でもご飯が残っているからご飯を食べて貰いたいんだよね」

私はそう言うと溜め息をついた。

家によって食事が違うのは分かるけれども、まさかご飯かパンかで喧嘩になるとは思わなかった。



「皆の家はビーフシチューはご飯?それともパン?」

歩美が事務所の人に向かって声を上げた。

「やっ、止めてよ。そこまで話を大きくすることじゃないでしょう?」

「俺の家はご飯ですね。外で食べる時はパンにしちゃいますけど」

「その意見って分かる。家だとパンを買わないといけないものね。ご飯は炊くだけだもの」

事務所の方の意見はどうもご飯に傾いているようだ。

一体私はどうしたらいいんだろう?

「こういう時は一斉メールに限るよね」

そういうと歩美はスマートフォンを手にとってさっさと一斉メールを送った。

暫くすると私にもメールの着信音が響く。

-ヘルプ。ビーフシチューにはご飯?それともパン?回答は直感でよろしく。あゆ-

あの…受験でピリピリしている皆にこれは大丈夫なの?



「真美?こんなの送ってって思ってるでしょう?」

「うん…。大丈夫なの?」

「平気。国立組以外は皆進路が決まったって話だよ。靖之さんの話だから嘘じゃないって」

「そうならいいんだ。多分…パンは用意するだろうな。目くじら立てておおごとにすることじゃないもの」

「確かにね。でも真美って哲君には甘いよね。あの俺様をのさばらせていいの?」

「私は気になっていないんだからいいと思う」

「はいはい、ご馳走様」

「それよりもあゆは、ご飯が作れるようにならないとね」

「失礼な少しは作れるようになりました。フレンチトースト作れるもの。焦げるけど」

「そっか。もっと必死になったら?ダーリンが作れるからって甘える訳にはいかないでしょう?」

「そうだね。分かった。国立終わったら頑張る」

「じゃあ、私お使いに行ってきます」

私は席をたって、頼まれたお使いをする為に外出の用意をした。



アルバイトが終わって私は家の近くのパン屋さんでフランスパンを買って帰ることにした。

どっちか一個じゃなくて、どっちでもいいにすれば喧嘩にならないんだ。

なんで朝からそんなことに気がつかなかったんだろう。

変な私達。そう考えると、私の足取りは軽くなるのだった。

帰ったら急いで、お肉を赤ワインで煮込んで、その間に野菜を切って炒めておけばいいかな。

北風が私に吹き込む。この調子だと今夜も寒くなりそうだ。

もう少ししたら哲も学校から戻るだろう。

帰ってきたら最初に彼に謝らないと。

ニヤニヤしながら私は自宅に戻る。

さあ、夕ご飯の支度をしよう。

結局両方用意しましたとさ。それでいいのかよって突っ込みはなしで(笑)

次は、カレーのご飯のよそり方で揉めるカップルがいます。

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