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英国風朝食のお味は?

ともくんとともこさんの場合は?本編は読まずに読めます。ご安心ください。

ともくんのレポート課題に合わせて1日イギリス風食事を作ることになりました。

そんな二人の朝食は?

「とも子さん、文化論の授業って受けてた?」

「受けてたわよ。あっ、分かった。食文化のレポートが出たんでしょ?」

「うん。良く分かったね。じゃあ、国はどこか分かる?」

「そうだねぇ。今年は…オリンピックイヤーだから…イギリスからじゃない?」

「うん。そうなんだ。サンドウィッチを調べればいいの?」

「それだとね、運が悪いと再提出食らうけど?」

「嘘…じゃあ…どうやって書くんだよ…」

元々理系の実験レポートを書く事が多い彼にとっては文系レポートはどうしたらいいのか分からないらしい。

私自身、今まで提出したレポートは全てUSBにストックしていあるからUSB毎渡せば終わるのだが、それを彼が移しただけのレポートで終わらせるつもりはなかった。

私はレシピと現代風の食事を再現して添付してあるから…材料が調達できる料理を作っていけばいいんだ。

確か料理の協力者は記名があれば協力しても問題はなかったはず。

私は、机の引き出しからUSBを取り出して彼に手渡した。



「この中に渡した受講した年の文化論のレポートが入っているからね。でも提出は手書きだから頑張ってね」

「ありがとう。参考にしてもいいの?」

「いいけれども…自分の考察とかはちゃんと自力でね。そうじゃないとあの先生は多分分かると思うよ」

「なんで?」

「さり気なく、先生達も人間関係を把握しているから。先輩・後輩・恋人までね。しかも情報は共用している」

「うーん。敵も兵か」

「けれどもね。文化論の食文化レポートには協力者がいてもいいことになってるの。忘れてない?」

「お店で食べたりしたらその名前をかけってやつだろ?」

「それはね…私が作ってあげてもいいってことよ。食材が揃ってからになるから明日からは無理だけども、3食イギリス料理を楽しんでみない?」

「大変じゃない?そんなことをして?」

「私のレポートには、レシピも添付してあるの。それをそのまま使う訳じゃないし、とも君はフルブレックファーストを私流にアレンジして用意してあげるね」

「フルブレックファースト?」

「詳しくはレポートを呼んでしっかりと予習しておいてね。」

「分かった。食材調達は俺も言ってもいいだろ?」

「いいわよ。とりあえず、明日の放課後行く予定だけども…」

「一緒に行きたい。4時限目が終わったら正門で待っててね」

「分かったわ」

私達は翌日の放課後に買いだしをすることにした。



「それじゃあ、明日の朝にいらっしゃい」

「分かった。どんな飯なんだろう?レポートに書いてある通りだと、そんなに不味くないんだろ」

「文系のレポートはその人の主観がモノを言うから、答えが一つとは限らないんだよ。ただね、法学刑は違うけど」

「ふぅん、俺もちゃんと勉強しないとな。じゃあ、また明日」

明日の買いだしが終わって、途中で夕食を食べてから、家に戻ってきた。

大学から近い所に住んでいる私達は基本的にお互いの家を行ったり来たりして過ごす事が多い。

2学年年下の彼と付き合い始めて1カ月。

今まで、男性とのお付き合いをきちんとした事がほとんどない私は、彼といる事がおっかなびっくりだったりする事も多い。

そんな私達を同級生たちは、今時あり得ないと言って笑うけど。彼と過ごすゆったりと温かな時間が私は好きなのだが…それは私の独りよがりなのだろうか?



sideとも子


「とりあえず準備しますか」

私はレポートのレシピページを見ながら、下ごしらえをしていく。

私の料理の基本は和食がメーンだ。

いわゆる洋食も作れない訳じゃないが、ちゃんとした他国の料理となると話は別だ。

まずは昼食のサンドウィッチを兼ねたパンの準備をする。

…とは言っても、メーンの作業はパン焼き機がいい仕事をしてくれるだけだ。

とりあえず、フルブレックファーストを目指している。けれども本格的になるといろんな意味で難しいので、そこはレシピを添付してカバーすることにする。

私が受講した時には現代的ブレックファーストを作って食べちゃってるし…まんまはマズイよね。



「調べれば調べるほどにたっぷりと朝食を食べる国だよね」

私は全て用意しても食べきれない事は分かっているので、栄養バランスを優先しながら考えていく。

日本で言うお粥に相当するポリッジはオートミールでもいいんだけど、好みがあるからシリアルと牛乳で代用。

フルーツは、柑橘系にして、フルーツジュースはミックスジュースを用意する。

卵料理は手っ取り早くベーコンエッグにして、ベイクトビーンズはトマトソースで大豆とひよこ豆を煮込むことでいいだろう。

トマトは生をスライスして、マッシュルームはバターソテーに。

それとマーマレードトーストでいいかな。

「これ全部食べると、ファミレスのモーニングよりもリッチなんじゃないの?」

いつも朝食は彼が私の家に来て一緒に食べる事が多い。

その朝食よりもはるかにリッチな内容に軽くへこんでしまうが、彼のレポートの為だ。

これで再提出だったら…私も立ち直れない。



「ランチはフィッシュアンドチップスとサンドウィッチにして、夜はローストビーフとヨークシャープディングでいいかな。でも夜の付け合わせが何かないかな?」

資料を見ながら、料理の下ごしらえをして、献立を決めた。

その後に、自分の課題を終わらせてからベッドに入り込む。

気がついたら12時を過ぎていた。

普段は使わない目ざましをセットして眠ることにした。

「明日は寝坊できない…ふあああ…」

私はいつものように眠りに着くのだった。



sideとも


「ふぅん、さすがはとも子さんだね。きっちりと調べてある。このまま写したらさすがに先生も分かるよな」

俺は彼女から借りたUSBからデータをコピーして画面越しに眺めている。

「彼女の言う、フルブレックファーストってとんでもなくボリュームがないか?」

彼女と付き合う前から、一緒に食事をする事が多かった。

彼女が得意なのは和食だが、家庭で作る洋食も十分においしいから、今回の課題も十分期待できる。

「けれども…3食全てイギリス料理ってことは、昼はサンドウィッチにしても夜は一体何だろう?」

資料を読んでいくと、多少のヒントは分かるけれども、夜だけは想像がつかない。

「さすがに…ハギスはねぇよなぁ…」

俺なりに、彼女の書いたレポートを元に自分のレポートを作成していく。

食文化の歴史や地域の特色の部分は同じでも問題はないと思うから彼女のレポートを写していく。



そんな中、俺の携帯がけたたましく鳴り響く。画面には文化論を取っている同級生からだ。

「なぁ、お前文化論のレポートどうしてる?」

「どうしてるって…調べてるけど」

俺は手持ちのカードを見せるつもりはない。電話はかかるが、そんなに親しい同級生ではない。

「なんだ。お前真面目にやってんのか。過去のレポート入手できたらよろしくな」

「あぁ、分かったよ。じゃあな」

俺は手短なやり取りで電話を切った。

「誰が、彼女のレポートを渡すもんか。サンドウィッチでも紅茶の歴史でも書きやがれ」

彼女は食文化のレポートと同時に紅茶の文化もレポートにしていた。

紅茶の文化の場合は世界史でも習っているから、こっちの方が書きやすいだろうなとは思う。

俺は、悩んで、食文化のレポートの最後にお茶文化からお茶菓子の方向に持っていくことにした。

お茶菓子にしても、スコーンだけじゃねんだから。

日本だって和菓子の種類は豊富だものな。だったら種類が溢れててもおかしくないか。

俺は作ることはできないけれども、お菓子を買う事はできるから、こんどゆっくりと眺めようと思った。



朝になって、いつも通りに目が覚める。目覚ましを止めて、着替えてから朝食の支度をする。

パンも焼きあがっているから、冷めるのを待つだけだ。

朝は温かい食事を取るべきなので、彼の元にメールを送る。

-おはよう。ともくんが家を出るときにメールちょうだいね-

彼の家から私の家までは歩いて5分。

マッシュルームのソテーは出来上がっているし、後はベーコンエッグのみ。

メールが届いていからで、十分に間に合う。

15分程して彼からメールが届く。

そして私はのんびりとベーコンエッグを作り始めた。

そして、ティーポットにアーリーモーニングティーをビスケットを用意する。

目覚めの一杯は少しカフェインの強いお茶を取る習慣があるとあったしね。



-ピンポーンー

彼がついた事を知らせるチャイムがなる。

私はゆっくりとドアを開けた。

「おはよう。ご飯はまあだ?」

「できてるわよ。一緒に食べましょう」

私か彼をダイニングに迎え入れる。丁度お茶も飲みごろだ。

「まずは、こちらをどうぞ。目覚めのお茶よ」

私達はゆったりとした朝食を楽しむのだった。



「それじゃあ、行ってきます」

「はい、行ってらっしゃい。ランチも楽しみにしてね」

「イギリス飯って不味くないんだなぁ」

「…でしょう?とりあえず、レポートの完成に近づいたね」

「そうだね。ありがとね」

1時限目から講義がある彼は先に学校に行く。

水曜日は午後からしか講義がない私は、ゆったりと昼食の準備を始めることにした。

帰ってからお茶になるだろうから、スコーンを焼き始めた。シンプルにプレーンでいいだろう。

夜は帰ってから準備すればいいけれども、食材は買っておく事ができるから、買い物メモを作ってスーパーが開くのを待とう。

「今日も彼と一緒のご飯。それはとってもささやかな幸せ」

私はポツリと呟く。彼と付き合う前は一人で食べていた。

それは当然な話なんだけども、今ではもうほとんどあり得ない。

私の生活に自然に溶け込んだ彼の存在は私にとっては救いの存在なのかもしれない。

私が彼に対してこんな風に思っているなんて…きっと彼は知らないだろう。

「そんなこと、私も彼には絶対に言わないけどね」

私は一人で微笑むのだった。






~おまけ~


sideとも

「イギリス飯って思った割に上手いんだな」

「…でしょう?でも、フレンチやイタリアンに比べて質素だからね」

「でも、朝からあんなにたくさん食べるんだ」

「今は、トーストにコーヒーとスクランブルエッグでもいいらしいけどね」

「だったら、そっちでも」

「折角だからフルブレックファーストにしたの。これでも品数は減らしたのよ」

「嘘…」

「プディングもおかずになるとは知らなかった」

「確かに。いい勉強になったでしょう?」

「今度の国はどこかなぁ?」

「あの先生はヨーロッパがメーンだからねぇ…作れるものは作ってあげるよ」

「やったぁ。おいしいご飯だ」

「それはどうかな?ドイツは温かいご飯よりも冷たいご飯が多いのよ」

「う~ん、国が代われば、食事も変わる。奥が深い」

「そう、その通り」


まずは、イギリス編でした。

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