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井戸端祭り寿司

ちいと義人の二人が、義人の実家のお祭りのお手伝いに来ています。

新婚1年目の二人をどうぞ

「よっちゃん、後はこれを叩いてね」

「えっ、こうか?」

よっちゃんは包丁でアジをペチペチ叩いている。

「今はボケなくてもいいから。なめろうにするんだからね。分かってるでしょ?」

「俺…さんが焼きの方が好きなんだけどね」

「だったら、少し残しておくから後で作ってあげる」

「ちいは何を作るんだ?」

「おばちゃんたちと太巻き祭りずし」

「あぁ、富士山とかパンダとかな」

「そう、私は作れないから教えて貰うんだ」

「でも…あれって今日みたいな祭りじゃないと作らないだろ」

「だから…知りたいのよ」

「出来上がったら、貰って帰ろうな」

「うん」

私はおばちゃんたちがリビングで巻きずしを作ると言うからリビングに移動した。



今日はよっちゃんの地域のお祭りの日だ。

私達が入籍をして1年。あっという間に過ぎてしまった。

一応、よっちゃんの家にお嫁に来ているからこういう日は世間的なお嫁さんをしないといけない。

朝から私はお祭りの支度を地域のおばちゃんたちと一緒にしている。

お昼にはおみこしを担いだ人達が休憩に来た。

町会から預かっていた、お茶はビールを差し出して、おにぎりや稲荷ずしを差し入れた。

「さあ、あとはお寿司を作れば終わりだからね」

「内さんはいいわねぇ。もう、お嫁さんがいるんだもの」

「でも、普段は一緒じゃないものね。倫子ちゃん」

「そうですね。お義母さん。でも楽しいですね。皆さんで支度するのって」

「倫子ちゃんってば、もうかわいいんだから。八重ちゃんに見せたかったわ。今の倫子ちゃん」

「八重ちゃんって事は…あの時の子がこの子なの?」



よっちゃんの家も私の家も本家は学区にある。

母がなくなってからはほとんど行く事は亡くなったけれども、よっちゃんの家はよく行くらしい。

母がなくなった時は、母の同級生がたくさん来てくれた。今日の寄りあいのメンバーにいてもおかしくない。

「その節は大変お世話になりました。お陰でこうして元気にしてます」

私達の地元なので、言葉には気をつけないとならないが、私が危惧する内容は知られていないようだ。

「よっちゃん達の結婚は早くないかい?」

「そうよ。まだ19歳でしょう?」

「おめでたかい?」

「それはないです。籍を入れてもう1年経ちます。彼は私の居場所を作ってくれたんです。感謝してますよ」

「おぉ。旦那を立てるねぇ。よっちゃんやぁ、これはいい嫁さんだ」

「そうですよ。おばさん達。僕の初恋の人ですから、虐めないでくださいね。ちい、なめろうできたぞ」

「お味噌とか混ぜたのね」

「あぁ。とりあえず冷蔵庫に入れといた」

「ありがとう。お茶でも飲む?」

「ありがとな。お前は疲れてないか?」

「平気よ。お祭りって楽しいわね」

「お前の地区はどうだったんだよ?」

「昔と一緒でお宮さん以外はないから」

「今夜は家に帰るか?」

「どっちでもいいわよ。私のことは気にしないで」

「おーい、義人!!って本当に結婚したのか?お前達」

「だからいつになったら信じてくれるんだよ」

よっちゃんはうんざりしながら、玄関に来た元同級生の対応をする。

「よっちゃん、出かけてきてもいいよ。待ってるから」

「悪い。夕方には戻るから。行ってくる」

「行ってらっしゃい」

「ちい…こっちに来いよ。足りないだろ」

「ここでは…」

「俺が嫌なの」

そういうと彼は私の頬にキスをして外に出た。



「お熱い事で」

「もう…夫ってば…すみません」

「いいのよ。私達だって信じられないんだもの。倫子ちゃんがお嫁さんだなんて」

「そんなに褒めても何も出ませんよ」

「二人とも…はとこ同士だっけか?」

「そうなんですよ。それよりもお寿司の作り方教えてください」

「今はそんなに巻かないんだよな」

「そうそう、夏休みにコミュニティーで講座があるから来年まで待ってみたら?」

「覚えようと思ったのにな…」

「その気持ちだけでいいんだって。うちの嫁は作れないし」

「うちもよ。だから出来なくていいの。でも郷土の味だから覚えて欲しいわね」

どこの家にも嫁姑問題はあるんだぁとぼんやりと考えた。

「ともこちゃん、終わったらお茶にしたいから、フレンチトーストでもいいから作って貰える?」

「いいんですか?パンを使いきっても」

「大丈夫よ。お願いできる?」

「分かりました。それじゃあ作りますね」

結局、私がいても何もできないので、お茶菓子としてフレンチトーストを作ることになってしまった。



「ごめんなさいね」

「いいえ」

「お寿司を作る時は大抵お嫁さんの話題になるからね」

お義母さんは少しげんなりしているみたいだ。

「聞いていてもいい話じゃないですものね」

「そう、だから来年は無理に来なくてもいいのよ」

「分かりました。仕事次第ですので予定は未定です」

「来年は就職なのね。あの子は大学に編入するって言うのに」

「いいんです。私が暫くは養いますから」

「倫子ちゃんは逞しいわね」

「逞しくならざるを得なかったんです」

「そのうち…本家から呼びだされるわ」

「あの件…ですか。分かりました。その時は行きます」

「あの人たちにも困ったものね」

「そうですね。確かに」

「私もここで油を売るのを止めないとお姉さま方に言われちゃうから行くわよ」

「えぇ、そうして下さい」



再びリビングからはおばちゃん達の黄色い声が聞こえて来る。

こんな騒々しいのもまた楽しいものだなと思いながら、私はフライパンにバターを入れるのだった。

行ってきますのチューは見せつけたかっただけでしょう。

私のおぼろげな記憶だと、祭り寿司はおばちゃん達の井戸端がてらに巻いてたような。

なので、子供心に側にいてはいけない気がしていたのはここだけの話。

巻く模様は家によって違うみたいです。地域の公民館とかで講習会もあります。

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