表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

第3話 徘徊僧

体験者 由良耕作 (30)


かなり昔のことなので曖昧なのですが、私が高校生の頃なので、15年程前でしょうか。

私は家庭の都合で、中学校卒業と同時に祖父の家へ引っ越すことになりました。

おじいちゃんの家というと、古民家のようなものを想像しますが、そこはなんてことはないありふれたマンションの一室で、よく遊びに行っていたため慣れた場所でした。

バブルの頃に建てられたマンションで、老朽化こそしていましたが、部屋が一階ということもあり、比較的住みやすい物件です。

初めこそやや慣れない感じはしましたが、1週間もすればすっかり住み慣れた我が家のように感じるようになっていました。

その頃からです、私の意思とは裏腹に、身体は環境に適応出来ていなかったのか、なかなか眠れない日が続くようになりました。

時には金縛りのようになることもありましたが、単に意識だけが目覚めてしまっているといった感じで、幽霊が現れるとか、何かに触れられるなんてこともなく、仮に金縛りになっても時間が経てば収まるだろうと考えやり過ごしていたのを覚えています。

そしてそんな日々が続き、5月に突入しました。

高校生活にも新しい家にもようやく慣れた頃、その日が金曜日だったこともあり私は夜ふかしをしていました。

0時を回り、そろそろ寝たほうがいいかな、などと思いつつ、買ってもらったばかりのスマホをいじっていると、聞き慣れない音が耳に入ってきました。

遠くの方で錫杖をつくような、シャンシャンという音が鳴っていたのです。

何だろうと意識を集中すると、その音は段々と大きくなり、私の方に近付いてきていることに気が付きました。

とはいえ私は明るい部屋の中、それほど恐怖を感じることはなかったものの、なんとなく身動きを取る気にはなれず、じっと耳を澄ませていました。

シャンシャン、シャンシャン。

音はついに我が家の目の前の道を通り過ぎようとしていました。

私の部屋は一階ということもあり、窓を開ければその正体を確かめることが出来ました。

ですが、なぜかどうしても身体が動かなかったのです。

恐怖心だったのか、本能的にカーテンを開けてはいけないと感じたのか、今となってはよく分かりませんが、私はただそれが通り過ぎていくのを待つことしかできなかったのです。

私はこの出来事をずっと忘れることができず、かといって誰かに話す気にもなれず、10年以上が過ぎました。

ある日私がSNSにこのことを書き込むと、全く同じものに遭遇したという人が何人も現れたのです。

ですが、遭遇した時期や場所はどれもバラバラで、同じものなのか違うのかさえ、曖昧なままとなっています。

深夜に錫杖をつきながら僧が徘徊するとも思えません。

やはりこの世には何か人ならざるものがたしかに存在する、私にはそう思えてならないのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ