第2話 ひとりかくれんぼ
体験者 白木優作(31)
皆さんは、ひとりかくれんぼをご存知ですか?
今となっては多くの人が聞いたことがあるであろう降霊術の一種で、2ちゃんねるで話題になり拡散されたといいます。
やり方は以下のような方法とされています。
①手足のついたぬいぐるみの綿を抜き、そこに米と自分の一部(爪や髪など)を入れて赤い糸で縫う
②余った糸をぬいぐるみに巻きつける
③自身の隠れ場所を決めてそこに塩水を置いておく
④午前3時になったら、ぬいぐるみに対し『最初の鬼は◯◯(私の場合優作ですね)だから』と3回言ってからお風呂場に行き、ぬいぐるみを水の張った風呂桶に入れる
⑤家の照明を全て消し、テレビを付けてから10秒目を閉じ数える
⑥お風呂場に行き『✗✗(ぬいぐるみの名前)見つけた』と言って刃物を刺す
⑦『次は✗✗が鬼だから』と3回言ってから隠れる
⑧その後2時間以内のどこかで、口に塩水を含んでからぬいぐるみを探しに行き、コップの残りの塩水、口に含んだ塩水をかける
⑨『私の勝ち』と3回言う
⑩ぬいぐるみを燃やして処分する
このように、それほど複雑なものではなく、誰でも簡単に試せるようなものとなっています。
故に、私も試してみることにしたのです。
2016年の9月半頃、雨の降る薄ら寒い日でした。
私は翌日仕事が休みだったことに加え、某動画クリエイターがひとりかくれんぼを実践している動画を観たことで、自分も試してみようと思ってしまったのです。
それほど難しい手順ではありません、全ては順調に進みました。
安直ですが押入れに隠れ、1時間ほど経った頃でしょうか。
最初こそ2時間ギリギリまでやる予定だったものの、あまりにも何も起きず退屈になった私は、早めにひとりかくれんぼを終えることにしました。
口に塩水を含み、コップを持って、お風呂場へと向かうと、やはりというべきかぬいぐるみは微動だにせずそこにありました。
内心ぬいぐるみが別の場所に移動しているのではないかと思っていた私は、肩透かしを食らったような気分になりながら、『私の勝ち』と3回唱えたのです。
その時でした。
『次は縺翫�縺�が鬼だね』
私の耳元で誰かが確かに囁いたのです。
何と言ったのかまでは聞き取れませんでしたが、それは私がぬいぐるみに付けた名前とは明らかに違うものでした。
気味が悪くなった私は、一刻も早くぬいぐるみを手放したいと思い、ゴミ袋に入れてゴミ捨て場に捨ててしまいました。
燃やさなければいけないと知りつつも、です。
ですが濡れていてすぐに燃えないこと、そもそも安全に燃やせる場所が無かったことから、捨てるだけでいいだろうと思ってしまいました。
実際、それから何かが起きることはなく、ひとりかくれんぼをしたこと自体、意識しなければ思い出さなくなっていきました。
ですが、翌年の12月頃のことです。
私が近所のデパートで買い物をしていると、ふと誰かの視線を感じました。
何気なく気配を感じた方へと振り向いた時、ショーウィンドウの中に大きなテディベアが座っていたのです。
ただのぬいぐるみか、そう思い背を向けましたが、やはり誰かが私を見ている気がして止みませんでした。
そうして改めて振り返った時、私は呆然とその場に立ち尽くしてしまいました。
さっきのテディベアの座る角度が変わり、たしかに私の方を見つめていたのです。
当然誰かが動かした可能性もあるでしょう。
私がひとりかくれんぼに使ったのはアニメのキャラクターのぬいぐるみであり、テディベアとは似ても似つかないものです。
だからそこに因果関係はない、そう頭では分かっていても、私の中から恐怖心が消えることはありませんでした。
数年が経過しましたが、それ以降同じような経験はしていません。
それでも私は、あの日私とひとりかくれんぼをした「何か」が別のぬいぐるみに宿り私を追いかけ続けている、そう思えてならないのです。




