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おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。  作者: 愛自 好吾(旧月見ひろっさん)


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第228話 ドニの場合 ②




  レダ王国に着いた、先ずは大型船を停泊させる港を探す。


 「おっさん、小舟で港に着けるのかい?」


 「いや、この海賊船ごと港に入ってほしいんだが、荷物が増える可能性があってな。」


 「じゃあ港を探すよ、あたいに任せな。」


 これまでの「ドクロのリリー」の船乗りとしての腕は見て来た、中々優秀だ。


 ここは彼女達に任せても問題なかろう、俺は港に着いたあとの事を考えなくては。


 しばらくすると、船員が大声で船長に知らせていた。


 「船長~! 見えましたよ、港です。」


 「この船が入りそうかい?」


 「はい、それはもうバッチリですよ~。」


 どうやら港が見つかったらしい、海賊船は進路を変え、港へ向けて進み出す。


 「お客さん、もう直ぐだよ。」


 「聞こえていた、任せるさ。」


 「あいよ。」


 さて、俺は下船の準備をしよう、船の客間へ戻り、自分の荷物を鞄に入れ背負う。


 「準備は出来た、何時でもいける。あとは船が港に入って停泊すれば。」


 と、ここで思わぬ事態に直面した。俺の客間に女海賊の一人がノックもせずに入って来たからだ。


 俺は咄嗟に身を低くし、ナイフを抜き身構えて様子を窺う。


 「おいおい、いきなり入って来て何用だ?」


 俺は入って来た女に言い、ながらの所作で相手の首元にナイフの刃を当てる。


 「ご、ごめんごめん。急な事だったからつい。」


 「用件を言え。手短にな。」


 「あ、ああ、港に近づいたら何か向こうから軍船が二隻出て来て船を止めろって。」


 ふむ、臨検か。妙だな、アリシアとは話が通っている筈なんだが。


 「おい、まさかとは思うが、海賊旗を掲げていねえよな?」


 「さ、流石にそれは無いよ、それよりこのナイフをそろそろ外してくんない?」


 俺は女の首からナイフを離し、腰の鞘に仕舞う。


 「ふう~、びっくりした。」


 「びっくりしたのはこちらだ、驚かせやがって。」


 「悪い悪い、それにしてもお客さん、あんたやっぱり只者じゃないね。」


 「まぁ、これぐらいの備えはな。」


 「兎に角、この船は立ち止まるから、その事を伝えてこいって言われただけでさ、お客さんはどうするんだい?」


 「俺も行こう、もしかしたら話が通じるかもしれんからな。」


 やれやれ、中々簡単に事が運ばんな。


 俺は荷物を持ったまま、甲板に出た。そこには既に船長と他数名の船員が待機していた。


 俺は船長に話を聞いてみる。


 「どうした? 問題か?」


 「問題大ありだよ! 調べるから止まれってさ! まったく、うち等を何だと思ってんのかねえ!」


 海賊だろ、と言うツッコミは入れずに、俺は成り行きを見守る事にした。


 「来たよ、みんな! 相手の指示に従いな!」


 「「「「 あいあいさ~。」」」」


 確かに、二隻の軍船がこの船を囲み、渡し板を船に掛けてこちらに乗り込もうとしていた。


 軍船の船員から声が掛かる。


 「こちらはレダ王国の軍船だ! あなた方はアリシアの船とお見受けしたが、相違無いか?」


 「こちらはアリシア王国所属の客船! レダ王国に入港したく思い、要人を運んでいるところです! 何か不都合でも?」


 中々堂々としているじゃないか、「ちびっこ」の奴。俺の出番は無さそうだな。


 「これは失礼した、こちらも今現在色々と立て込んでいまして、不審なモノは例えなんであれ調べろとの命令を受けておりまして、ご容赦願いたい。」


 「お仕事熱心で精が出ますね、いいでしょう、我等の船への乗船を許可します。どうぞ好きなだけお調べ下さい。」


 「ありがとう、そうさせて貰おう。乗船準備!!」


 どうやら船長同士のやり取りは済んだようだな、あとはこちらに敵意や悪意が無い事を示せば良いだけか。


 一応俺も要人扱いなので、この場に待機して取り調べを受ける事になりそうだ。


 それにしても、アリシアの旗を掲げている船とはいえ、たった一隻の船相手に軍船が二隻出て来たか。


 レダ王国の海軍力は中々高い水準を保っているようだ、アリシアと同じか、それ以上の。


 組む相手としては、国の力が物事を左右するので、まぁ、合格ラインかな。


 レダの軍船の船員も、中々手練れているようだし、態度も悪くは無い。


 「困りますよアリシアさん、ここは我がレダ王国の軍港施設ですよ。ここに入ってきてもらっちゃ困りますよ。」


 「ごめんごめん、知らなくてさ。レダ王国に来たのは初めてだったから勝手が解らなくて。」


 「勘弁してくださいよ、ホント。めっちゃ焦ったじゃないですか。」


 「だからごめんって、悪気は無かったんだよ。」


 「客船の港なら、もっと北側にあるプロマロックの港町の方へ行ってくださいね。」


 「もっと北側だね、ありがとう。プロマロックの港町だね。」


 「そうです、そこならこの大型船でも余裕で入港できますから。」


 「あいよ、情報さんきゅー。」


 何か軽い会話をしているな、互いの船長同士で情報のやり取りをしているようだ。


 なるほど、目の前にある港は軍港で、この客船を停泊させるなら他の港へ行けというところか。


 何事かと思ったじゃないか、びっくりしたぜまったくよ。


 だが、レダ王国の海軍は解った、組む相手としては十分な力を持っている様だ。


 これはアリシアにとっても大きい、そこは合格ラインだな。


 俺があれこれ考えている間に、臨検は終了し解放されたようだ。


 この船は急ぎ、進路を北へ執り、プロマロックの港町へ向けて進み出した。


 やれやれ、一悶着あるかと思ったが、やはりアリシアとの話が通っていたらしい。


 このまま俺の仕事も上手く事が運べば良いんだが、さて、どうなる事やら。


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