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おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。  作者: 愛自 好吾(旧月見ひろっさん)


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第209話 義勇軍会議


 第二会議室。ここで義勇軍のメンバー達が揃い、色んな話し合いが行われる。


 かつては第一会議室を使わせてもらっていたらしいが、時代と共に義勇軍の活躍が薄れている。


 今ではシャイニングナイツに取って代わられ、人々に人気もあり、確実にその功績を積み重ねている彼女らは、確かに優れた聖騎士なのだろう。


 女性という事もあり、貴族や王族などの護衛や、繊細な任務、仕事が出来るので、重宝されているらしい。


 対して義勇軍は男臭いとか、無骨者が多いとか、礼儀がなってないとか、酒臭いとか言われたい放題である。


実際どうなのか? 


それを確かめる為にも、今俺は義勇軍会議が開かれている第二会議室へと赴いた。


 会議室に入ると、既に会議は開始されていた。


「やべ! 遅刻したか?」


ぼそっと小声でそんな事を呟き、俺は空いている席を探す。


「兵隊さん、こっちこっち。」


どこかで聞き覚えのある声が聞こえ、俺はそちらの方へ見やると。


「ここ空いてるよ。」


その目に映ったのは、女海賊団、ドクロのリリーの船長。リスティルが居た。


 まあ俺は敢えて「ちびっこ」と呼んでいる、ドワーフ族の女で、何かちびっこいからそう呼んでいる。


「ちびっこ、お前も来てたのか。」


言いながらちびっこの席の隣に座る。


会議室は広く、中央に円卓が一つ。その周りを椅子だけの席がズラリと並んでいる。


椅子には空席が目立つ。みんな俺みたいに時間通りに来ていない様だ。


 さすがに円卓に座っている人は勝手に話を進めている様子だが、これが義勇軍会議なのかと、ちょっと緩い感じを受ける。


 円卓には人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、グラスランナー族など、他種族の代表っぽいのが座っている。


何やら話し合いをしているが、皆の表情は少しだけ暗い様な気がする。


 俺は会議の議題やらに意見するつもりもないので、大人しく座って会議内容を聞いている。


ちびっこが肘をつんつんしてきたので、隣のちびっこを見る。


「兵隊さんも来てたんだね、何時着いたの?」


「今日着いたばかりだ。ちびっこも義勇軍だったとはな、驚きだ。」


ちびっこは首をふるふると横に振り、こちらに耳打ちしてきた。


「違う違う、あたいはサスライガー伯爵の代理だよ。ほら、伯爵様は忙しい方だから。」


なるほど、確か伯爵はクインクレインのメンバーだったな。


その関係でちびっこを代理に寄越して、会議に参加させたか。


クインクレインのメンバーってのは狙われ易いから、秘密にしておくという事だな。


それでちびっこが代理か、まあこいつも中々自分を守れる奴だからな。


「兵隊さんは義勇軍会議は初めてかい?」


「ああ、ちょっと緊張するよ。」


「ははは、そんな堅くならなくてもいいよ。この会議自体、飲み会みたいなもんだからさ。」


「え? そうなの?」


「テーブルに用意されたコップ、あれ、中身は酒だよ。」


マジか。


「一杯やりながら会議とは、中々豪気な。」


「違う違う、みんな酒飲みなだけだよ。義勇軍ってさ、只の呑兵衛の集まりだからさ。」


そうなのか? 義勇軍ってもっとこう、色々やっててカッコいいイメージなのだが。


少なくとも「ラングサーガ」では義勇軍はメインストーリーを担っている存在だ。


それが酒飲みの集団だって?


どうなってんだか。


円卓の方に耳を傾けると、確かに酒の話ばかりが目立つ。


 やれあそこの店の酒は不味いとか、あそこの料理には蜂蜜酒ミードが合うとか、火酒に勝る物は無いとか、ワインの方が上品とか、純米酒がどうとか。


そんな話ばっかりだ、只の酒談議になっている。


こんなんでいいのか? 義勇軍会議。


「兵隊さんはこの会議は初めてだろう? あたいが教えてあげるよ。」


「ああ、宜しく頼む。」


ちびっこは円卓を指差し、それぞれの代表っぽい人達を説明しだした。


「まず人族の代表、一応義勇軍の団長を務めている人だよ。」


「へえ~、人族が団長か。てっきりエルフ族が団長かと思ってたよ。」


「エルフ族は副団長だね、ドワーフ族もだよ。」


「それぞれ右手と左手、ってやつか。」


「そ、で、獣人族とグラスランナーがそれぞれ補佐、まあ獣人族はそれに納得してない様子だけどね。」


「ああー解る、獣人族は前線に出て活躍したがっていそうだよな。」


「そう言う事、まあグラスランナーは情報収集がメインの仕事だからね、当人たちは納得してるよ。」


ふむ、ぱっと見、四種族連合軍と言われればそうなのかなと思う面子ではあるけど。


「四種族連合軍とは違うのか?」


「あはははは、彼等と比較しちゃ駄目だよ。四種族連合はシャイニングナイツと並んで第一線で活躍してる本物の戦士たちだろ。器が違うよ。あはははは。」


 うーん、義勇軍ってもっと凄い人達の集まりかと思ったけど、そうじゃなかったみたいだ。


只の酒飲みの集団か、なんか肩の力が抜ける感じだな。緊張して損した。


円卓の方では、一頻り話し合ったのか、酒盛りが始まっていた。


「兵隊さん、あたい達も行こうよ。タダ酒にありつけるよ。」


「なんかもう、どうでもいい。」


「そんな事言わずにさあ、一緒に飲もうよ。」


 いつの間にかちびっこの両手にはコップが納まっていて、俺の分のコップを差し出してきた。


「ほら、行こう。酒が無くなっちまうよ。」


「あ、ああ。分かった分かった。行くよ。」


 気が付いたら、いつの間にか人が沢山集まりだして、これを待っていたと言わんばかりに酒盛りを始めていた。


「こいつ等、今まで居なかったのにこんな時だけ会議室に集まりだして。」


「まあまあ、いいじゃないのさ。みんな楽しみにしてたんだからさ。」


まったく、義勇軍ってのはこんなんばっかりか。


「兵隊さん、700年前とは違うんだよ。そりゃあ昔は凄かったらしいけどさ、御伽噺に出て来るくらいだし、けどさ、今の義勇軍は平和な世の中を楽しんでいるって感じないかい?」


「ああ、まあいいけどさあ。平和が一番なのは確かだし。」


「だろー、いいじゃんか。酒を楽しむ余裕ってのも必要だよ。」


ふーむ、ちびっこの言いたい事は理解できるけど、いざって時、どうすんだよ。


 巫女様やサーシャさんから聞いた話の後なだけに、余計に危機感を感じるのは俺だけかなあ。


 まあ、基本冒険者とかがモンスターを討伐して、それで瘴気の発生を少なからず防いでいるから、今すぐにどうこうって訳じゃないけどさ。


しょうがないな、折角だし、俺も酒の一杯でも貰うか。


なんか、その場の空気にあてられて、俺も飲みたくなってきた。


「一杯だけな、付き合うのは。」


「そう来なくっちゃ、さあ、行こう。早くしないと酒樽が空になっちまうよ。」


ちびっこに手を引かれ、俺はコップを持って酒盛りの列に並ぶのだった。


酒飲みに来ただけだな。


「こんなんでいいのかな? 義勇軍会議。」


「いいのいいの。」


「もっとこう、話さなきゃいけない事ってある様な気がするんだが。」


「暗い顔してたって事態は好転しないよ。こんな時だからこそ酒を呑むのさ。」


「しかしなあ。」


「今更さ、義勇軍が頑張ってもシャイニングナイツとか四種族連合軍とかが活躍してるから、いいのいいの。」


「丸投げかよ。」


「誰も義勇軍に期待なんかしてないって。あっはっはっは。」


シャイニングナイツだって負担が無い訳じゃないのに。四種族連合軍だって。


「義勇軍で出来る事は義勇軍でやろうな、ちびっこ。」


「あたぼうよ! さあ、呑みねえ~!」


こいつ、もう酔っ払ってやがる。何時の間に。


こうして、酒盛りは続くのだった。


こんなんで良いのか? 義勇軍会議。




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