第200話 廃洋館探索任務 ⑨
「それでは、わたくし達はこの女性を村まで護衛してから戻りますわ。」
「ああ、よろしく頼む。私等はこのまま基地へ帰還するよ。」
この廃洋館での探索任務も無事終了した、サキ小隊はこのまま基地へと帰還する。
ナナ小隊は村娘を村まで護衛したのち、基地へ戻るそうだ。
ふーやれやれ、今回も無事に終わって良かった良かった。
サキ隊長は基地に戻ってからが大変だと言っていた、報告書を書かなければならないが、どうしたものかと悩んでいるみたいだ。
その原因がコイツ、門番スケルトンの存在だ。
「いや~、シャバの空気が恋しいぜ。何せ200年ぶりだしな。わっはっは。」
「呑気な奴だな、お前さ、行とこ無いだろ? 大人しくしといてくれよ。」
門番スケルトンはウキウキとツイストを踊っている、大丈夫かよホント。
「町に行ったらアレだろ? 美味い飯に美味い酒! ああー楽しみだなー。」
「お前まさか、その恰好で町に行くつもりか?」
「何か問題が?」
「大ありだよ! お前の姿は骨! スケルトンだという自覚を持てよ!」
「あ!? そうか!! どうしよう、このままじゃ町に入れて貰えないじゃねえか!」
コイツ今更気付いたのか? やれやれ、今回は俺が助け船を出してやるか。
付いて来いと言ったのは俺だし、面倒を見なきゃな。一応。
さて、コイツの見た目を何とかしなきゃならん。何で身体を隠すか。
ショップコマンドの一覧を見ているが、どれもこれも高い品物ばかり。
「ミスリルメイルは勿体ない、シルバーフルプレートは高い。ちくしょう、何がいいんだ?」
骨が見えなければいいんだから、うーん、あ! そうだ、良いのがあるぞ。
身体には布のローブ、手足には革のグローブとブーツを装備させればいいじゃないか。
布のローブには頭をすっぽりと被るフードが付いている、顔はお面でも付ければいい。
よし、決まったな。早速購入だ、全部で100ポイントで済んだ。
購入したアイテムを虚空から取り出し、スケルトンに渡す。
「おい、これをお前にやる。今すぐ装備して素性を隠すんだ。」
アイテムを受け取ったスケルトンは、どこか納得がいかない様子だった。
「何が気に入らないんだ?」
「いや、アイテムを貰えるのは有難いぜ。そうじゃなく、「おい」とか「お前」とか呼ばれるのはなあ、どうにも落ち着かねえ。」
「名前が必要って事か。ふーむ、どんな名前がいいもんか。」
「俺だって一発で解る名前がいい。」
ふーむ、そう言われてもなあ。スケルトンに門番だろ………………。
「じゃあ、スケルトンで門番だから「スケバン」でいいんじゃねえか?」
それを聞いたスケルトンは、笑顔満点の様子でサムズアップした。
「スケバンか!! いいな! それ! 何かカッコいい!」
「じゃあ決まりだな、今からお前はスケバンだ。」
「ああ! 俺はスケバンだ! これからよろしく頼むぜ。」
やれやれ、これでようやく落ち着きそうだ。
スケバンは嬉しそうにアイテムを装備し始めた、うん。いいんじゃなかろうか。
身体がバッチリ見えていない、完璧だ。骨の部分も解らない。よしよし。
これでスケバンの初期装備である槍を持たせれば、ちゃんとした冒険者風に見えなくも無い。
いいだろう、これで行こう。
と、ここでサキ隊長から俺に声が掛かった。
「ジャズ少尉、そのスケバンはお前が面倒を見ろ。寧ろジャズが適任に思える。」
「自分ですか? 解りました。身分はどうしましょう?」
「一応門番だったんだから、私達と同じ軍属でいいと思う。コジマ司令からは私から報告しておく。」
「了解です、スケバンの事、よろしく頼みます。」
「よーし! ここでの任務は終了した! 基地に帰還するぞ! いいか、気合だけは入れておけよ!」
「「「 了解!! 」」」
お、スケバンの奴、敬礼が様になっているじゃないか。まあ元門番だし、元々軍人だったのかもな。
屋敷から基地へ向けて移動を開始したところで、ある一人の男とすれ違った。
その男はどこか貴族風で、ゾッとする様な美形の顔立ち、どこか冷たさを感じるオーラ、旅の旅装にしては些か軽装だった。
バラの剣士と言う言葉が似合いそうな人物だ。
そして、通り過ぎようたしたところで、こちらに声を掛けてきた。
「失礼、この辺りで吸血鬼が暴れているという情報を聞いて来たのだが。」
吸血鬼? ああ、あの冒険者たちか。
「ああ、吸血鬼なら自分達が倒しましたよ。」
それを聞いた美形の男は、顎に手をやり。
「そうか、一足遅かったか。私の代わりに倒してくれたわけだな。」
「代わり? あのう、貴方は?」
「申し遅れた、私はハンター協会から派遣された「バンパイアハンター」だ。」
バンパイア………ハンター………、そんなものまで存在するのか、この世界は。
それはゲーム「ラングサーガ」には出て来ていなかった。
やはり、この世界は色んなゲーム世界とごっちゃになっている可能性が高いな。
そこの辺りは憶測の域を出ないが、まあ概ね正解だろう。どうなってんだかな。
「バンパイアハンターの方でしたか、貴方の仕事を奪う様な形になってしまいすいません。」
「いや、謝る必要は無い。寧ろ私の代わりに代行してくれた事に感謝する。」
ふむ、中々に礼儀正しい男だな、顔も美形だし、ちくしょう。
イケメンはモテるんだろうな、羨ましいもんだ。
「では、ここでの私の用事は無いので、ここで失礼する。」
こうして男は一礼して、俺達の前から遠ざかって行った。
「ジャズ、どうした?」
「いや、何でもない。それよりニール、早いとこ基地へ帰還しよう。」
「おう、そうだな。隊長、行きましょう。」
「うむ、では基地へ向け、出発。油断すんなよ。」
「「「 了解! 」」」
こうして俺達三人と一匹は、廃洋館での探索任務を終了し、一路クラッチ駐屯地へ向けて帰還するのであった。
サキ隊長は報告書に何て書こうかと、終始愚痴っていた。
スケバンは道すがら、トークが止まらなかった。余程嬉しいらしい。
俺は疲れた、スケバンのウィットにとんだジョークを聞くのを。
コイツほぼ喋りっぱなしなんだもん。疲れるよ普通。
俺がスケバンの面倒を見なければならんとは、やれやれ、先が思いやられるな。




