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おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。  作者: 愛自 好吾(旧月見ひろっさん)


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第18話 軍靴の足音 ⑦




 訓練期間最終日の夜、仲間達と少しの間会話をし、仮眠を取ろうとベットに横になる。


 まぶたを閉じ、静かに時を過ごそうと思っていたのだが。


 突然のカーン、カーン、カーン、と基地内に響き渡る警鐘で目が覚める。


 「う~~ん、何事だ? 警鐘が鳴っている様だが………。」


 眠りかけていた瞼を擦り、欠伸あくびを一つ、腕を伸ばして起き上がる。


 そこへニールとルキノさんが、何やら慌てた様子で俺を起こした。


 「おいジャズ! 起きろ! 何か知らんが警鐘が鳴ってんぞ!」


 「何事でしょうね? 兎に角外に出て様子を見に行きましょう。」


 「わかった、今起きる。」


 ベットから横向きへ態勢を変え、そのまま立ち上がり回りの様子を見る。


 他の兵士達も慌てていて、兵舎から外へと飛び出していく人が何人か見えた。


 「俺達も外へ出よう、何があったのか確かめないと!」


 「おう!」


 「そうですね!」


 兵舎の外へと出て、辺りを確認すると、グラウンドには幾つものテントが設営されていた。


 そうか、確か王国軍の第一レギオンの兵士達がこの駐屯地に立ち寄って来ているんだったな。


 それでグラウンドにテントを設営したのか。


 なるほど、これじゃあ今日の訓練は休みになる訳だ。


 更に辺りを見回す、テントは幾つか見えるが、肝心の第一レギオンの兵士達の姿がどこにも見当たらない。


 どこ行ったんだ?


 皆が辺りを見渡していると、グラウンドの奥の方で何やら人だかりができている。


 何だろう? と思いそちらの方へと近づく。そこには。


 「な!? 何でこんな所に大型モンスターがいるんだ!?」


 その場の状況を見ると、まず目に入るのが大型モンスターのジャイアントスネークが一匹。


 基地内のグラウンドで暴れ回っていた。


 それに対応しているのが若干の兵士達数名、鎧も着ずに武器だけで対応していた。


 こりゃいかん! このまま放置すればいずれ町の方へ行ってしまうかもしれん!


 ジャイアントスネーク。全長20メートル以上はある巨大な蛇型モンスターだ。


 胴体による締め付けや噛みつき攻撃、毒のブレスなどを吐く、間違いなく恐ろしい大型モンスターだ。


 大型モンスターに対応している兵士達は、迂闊に近づけない様子だ。


 ヒットアンドアウェイをくり返して、少しづつダメージを与えているのが精一杯といった感じだった。


 その様子を遠巻きから見ていると、リカルド軍曹がこちらへと近づき、こちらに状況を伝える。


 「お前達! ここに居たか! 直ちに装備課へ行って武器を受け取って来い!」


 「軍曹殿! 何があったんですか!?」


 「見ての通りだ! 第一レギオンが仕留めた大型モンスターをこの基地に運び入れ、保管しておいたらこのざまだ! それに、肝心の第一レギオンの連中は町へ繰り出して、今頃は酒場で飲んでいる事だろう! 兎に角! 今この駐屯地の現有戦力だけで対処せにゃならん! お前達も早く装備を整えて応戦しろ!」


 「「「「 りょ、了解!! 」」」」


 皆は急ぎ、装備課がある建物へと走り、中へ入って装備課の前まで来た。だが。


 「うわっ、他の兵士達でごった返しているな。」


 無理も無い、いきなりこんな状況になり、皆慌てている。


 先輩兵士達がまず先に装備を受け取っていて、こっちの番に回ってくるのが大分遅れた。


 「すいません! 俺達訓練兵用の武器を受け取りに来ました!」


 対応してくれているのが、装備課の「おやっさん」だ。今も忙しそうにしている。


 「おう! ちょっと待ってろ! 今殆どの武器は手入れに出していて、残っているのはショートソードのグラディウスだけだ! そいつを持っていけ!」


 「はい!」


 おやっさんから武器を受け取り、腰に提げて準備は整った。


 「俺達も急いで現場に向かおう!」という事になり、急ぎ外へと出る。


 鎧なんか着ている暇は無い。


 (相手は大型モンスターのジャイアントスネーク。おそらくこの武器だけじゃ間に合わない。よし!)


 密かにショップコマンドを使う。


 ショップポイント10ポイントと引き換えに、投擲武器の投げ槍、一回こっきりの「サンダーピラム」を2つ購入。


 アイテムボックスに送られてきているのを確認した。


 よし! まずは第一段階。


 ジャイアントスネークの弱点は頭の部分だ。それ以外は大してダメージを与えられない。


 この雷攻撃属性のサンダーピラムが役に立つだろう。あとは、自分がどこまでやれるか。


 (俺のレベルは2、対してジャイアントスネークの討伐推奨レベルは9。はっきり言って分の悪い賭けっぽい、だがやるしかない!)


 戦場へと到着した皆は、まず軍曹の指示を仰ぐ。


 軍曹殿もこいつの存在に手をこまねいている様子だ。暴れ回っていて迂闊に近づけない。


 「軍曹殿! 準備出来ました! いつでもいけます!」


 「おお! 来たかお前達! 早速で悪いがニール! お前は町の中へ出て酒場に居るであろう第一レギオンの連中を見つけて連れて来い! ジャズ、リップの両名は待機! 状況を見て各自の判断で行動しろ! ルキノ! すまんがお前の魔法使いとしての力が必要だ。俺と共に来い!」


 「「「「 了解!! 」」」」


 それぞれが命令された事を遂行しようと動き出す。


 ニールは走って基地の外へと向かい、自分とリップはこの場で待機。


 軍曹とルキノさんが戦場の方へと走って行った。


 ここからでも見て解るが、ジャイアントスネークに兵士達が次々とやられている。


 特に注意すべきはやはり毒のブレスだろう。攻撃範囲が広く、中々避け辛い。


 既に何人かの兵士が倒れている。被害は大きい。


 「ねえジャズ、あたし等これからどうなるんだろうね?」


 「不安か? 俺もだよ。だが、これまでやってきた訓練を思い出せばいいさ。こういう状況に対処できる為に俺達、厳しい訓練に耐えてきたじゃないか。きっと大丈夫さ。」


 「………そうね、そうよね! ………あ! ルキノ達がモンスター相手に魔法を使ってるわ! 凄い、ルキノ、ちゃんとやれているじゃない。もしかしてあたし等の出番無かったりして。」


 「ああ、だといいな。」


 しかし、そううまい事いかないのがザコキャラなのだった。


 ジャイアントスネークが一頻り暴れ回った後、なんの因果かこちらへと近づいてきた。


 こっちに襲い掛かろうと、うねりながら突進してきた。


 「ジャズ! どうしよう! こっちに来るよ!」


 「リップは逃げて! 俺が時間を稼ぐ!」


 「無茶よ! こんなの相手にあたし等がどうしろって言うのさ!」


 「リップ! 兎に角走れ! 全速力だ! 俺の事は心配するな! うまくやるさ! だから急いで!」


 この言葉に、リップはしぶしぶだが、急ぎこの場を後にし、全速力で逃げる。


 それを確認し、アイテムボックスからサンダーピラムを2本、虚空から取り出す。


 一本を地面に付き立て、もう一本を両手に持つ。


 身体全体をバネの様に後ろへ引き、解き放つ為、ジャイアントスネークの頭部に狙いを付ける。


 (まずは精神コマンド、必中を使用。よし、これで命中率100パーセント。第二段階。)


 ジャイアントスネークがこちらへと近づき、今にもこっちを食い殺そうと口を大きく開けて襲い掛かってきた。


 「キシャアアッ」


 (ストレングスレベル4は伊達じゃない!)


 ヤツの頭部を狙って全身のバネを使い、一気にサンダーピラムを投げつけ、思いっきり解き放つ。


 「これでも、喰らええええーーー!!!」


 サンダーピラムは物凄い射出速度で飛んでいき、ジャイアントスネークの片目に命中。


 深々と突き刺さった。


 その瞬間、ジャイアントスネークの全身に電撃が走り、雷属性のダメージも受けている様だ。


 ジャイアントスネークはその場で転げ回り、暴れている。


 (よし! いける!)


 もう一本のサンダーピラムを足で蹴って、倒れ掛かってきた槍を片手で受け止める。


 すぐさま両手に持ち替えて、また槍投げの要領で構える。


 (これで! ラストォ!)


 ジャイアントスネークが電撃で痺れて、一瞬動きが止まる。


 その隙を見逃さず、もう一本のサンダーピラムを投擲する。


 先程のように全身をバネへと変え、力の限りを解き放つ。狙いは無傷のもう片方の目。


 「もう一丁おおおおおおーーーーー!!!」


 二本目の槍が勢いよく飛んでいった。


 動きの止まった奴のもう片方の目に向かって飛翔し、ズブリとサンダーピラムが突き刺さった。


 その刹那、大電力がジャイアントスネークの体全身に走り抜け、大ダメージを与えた。


 「キシャアアァァァーーー………………」


 ズシーーンと重量のある物が地面に倒れ込む音がした。


 ジャイアントスネークはその場でピクリとも動かなくなり、辺りは静寂に包まれた。


 「勝負あったな。」




 {シナリオをクリアしました}

 {経験点750点獲得しました}

 {ショップポイントを100ポイント獲得しました}

 {スキルポイントを1ポイント獲得しました}



 おや? ファンファーレと共に女性の声が頭の中で聞こえたぞ。


 そうか、シナリオクリアか。


 ふう~~、やれやれ、何とかこの場は、凌いだみたいだな。


 戦闘後の余韻に浸っていると、建物の物陰に誰かが居た様な気がした。


 気になったのでそちらの方へと足を運び、物陰に居る人物をそっと覗き込む。


 そいつは黒いローブを着ていて、フードを目深に被っていた。


 いかにも「こいつ何かやってます」みたいな、怪しさ大爆発だった。


 「…………よくも邪魔をしてくれたな。………」


 どうやら感付かれていたようだ。その人物はこちらに振り向きもせず言った。


 この事から、自分には隠密行動は向いてないらしい。


 「………あんた誰?」


 「覚えておけ、我等の計画はまだ終わった訳ではない。」


 「だから、あんた誰?」


 「さらばだ! ダークガードに栄光あれ!」


 そう言い残し、その人物は忽然と姿を消した。


 おそらくテレポートの魔法か、そういう魔道具を使ったと思うが。


 はてさて、一体何がどうなってんだ? 何がなんだかさっぱりだ。



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