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おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。  作者: 愛自 好吾(旧月見ひろっさん)


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第9話 ザコキャラ転生 ⑧




 ポエム砦の中を走りながら、山賊の頭目の部屋を目指している。


 冒険者達は今頃ポエムと戦っているだろうか? 


 自分が行かなくても決着が着いているかもしれない。


 だけど、少しだけ不安を覚えている。


 「確か、ポエムのレベルは5だった筈だ、冒険者達がそれ位の実力が備わっていればいいが。」


 冒険者達の内、あの少年と少女はまだ駆け出しの新米だ。


 助っ人が一人居たとしても、おそらく苦戦するだろう。


 今更自分が加勢したところで、状況は変わらないかもしれない。


 だけど、やってみる価値はあると思う。


 戦場に向かっているという事は、ポエムと戦う事になるという事だ。


 大丈夫、戦う前の事前準備は既に出来ている。


 後はポエムを探しだして状況を確認し、適切に対処するだけだ。


 ポエムの部屋の前まで来た、ところが戦いの音、剣戟などの音が聞こえてこない。


 おかしいな? 何かあったのかな。


 部屋の少し手前まで行き、壁に背を付けてゆっくりと部屋の入り口を覗き込み、様子を伺う。


 「テメー等! そこを動くんじゃねえぞ! もし動いたらこいつの命は無えからな!!」


 ポエムの居る部屋には、ポエムの他に人質になっている奴隷の女の子が一人。


 人質として前に立たされ、ポエムの盾にされていて、首元に鉄の剣を添わされている。


 その状況に冒険者達は武器を構えつつも手を出せない状況だ。


 冒険者たちは部屋の隅から遠巻きにポエムを注視している。


 なるほど、人質を取って数的不利を無くしている訳か。


 確かに冒険者達の依頼内容の中に人質救出が含まれているだろうな。


 ちょっとまずい状況だ。ポエムの目は血走っていて、本気で人質を傷付ける可能性がある。


 「あなた! 卑怯よ! そのを放しなさい!」


 「無駄よガーネット、こういう奴ってのは何するかわかったもんじゃないのよね。今は大人しく様子見しか出来ないわ。」


 「だけど姐御! このままじゃ俺達も………」


 ふむ、冒険者達もその場を迂闊に動けない様だ。


 それにしても本当にポエムは最低だな、一時いっときとはいえこんな奴に使われていたなんて。


 (自分自身に腹が立つ、あと、ポエムにも、俺が動くには今しかないな。)


 ゆっくりとした足取りで、ポエムの部屋の中へと移動した。


 こちらの姿を見て、ポエムは驚いた表情をし、こちらに対して命令する様に声を荒げた。


 「テメージャズ?!! 生きてやがったか!? なら丁度いい! 今こいつ等は動けねえ! お前がやれジャズ! 動けねえ相手ならお前でもできんだろ!」


 ポエムの命令に、冒険者達はこちらを向き、状況が更に悪くなったと顔をしかめた。


 「あなた、足を洗うって言っていたわよね。そうよね………」


 「やめなさいガーネット、この男にはこの男の道があるモノよ………」


 「そんなあ………あんた、どうして………」


 冒険者達はこっちを見て、気力が萎えている様子だった。


 人質の女の子は震えていて目には涙が浮かび、不安と恐怖に染まった表情をして、こちらを見ていた。


 自分は頭にきていた。こんなに頭にきたのは何時いつ以来だろうか。


 俺はその場で立ち尽くし、俯いた。


 だが、しかし、ポエムに向かい低い声で………。


 「………黙れ………」


 「ああ? なんだと? 何か言ったか? ジャズ」


 俯いていた顔を上げ、ポエムを見据える。


 「黙れと言ったんだ、その娘を解放しろ。ポエム、お前はもう終わりだよ。」


 この言葉に、ポエムは怒りの声を荒げ、更に命令してきた。


 「いーからやれ! ジャズ! テメー何粋がってやがる! 早くしねえか!!」


 無視して、ゆっくりと落ち着きつつ、力を込めて語り出す。


 「ポエム、お前はもうお仕舞いだよ。山賊団の中で生き残っているのはもうお前だけだよ。」


 「テメーがいるだろうが! ジャズ! まさかとは思うがテメー、裏切る気じゃねえよなあ。ああ!!」


 構わず話しを続ける。


 「まず、ひとつ!。俺はスキル「ストレングス」のスキルをレベル4まで習得した! スキルポイント10ポイントの極振りだ! 「ストレングス」は筋力に影響する! 能力値の見た目以上に筋力が上昇している! 筋力だけならレベル15以上だ!」


 「ああん!!? 何だって?」


 「ふたつ! ショップコマンドを使い、俺はショップポイント5ポイントと引き換えに「アサシンダガー」を購入! アサシンダガーは一回こっきりの投擲用消費アイテムだが! その効果は攻撃が命中時、クリティカル率が100パーセントになる!」


 「ジャズ!! テメー何が言いてえ!!」


 「まだある! みっつ! 俺のユニークスキル「精神コマンド」を使い、「必中」を使用した! これは一定時間攻撃の命中率が100パーセントになるのさ! これが今! 俺に出来るありったけだ!!」


 アサシンダガーを虚空から引き抜き、手に持ち、構え、投擲しようと腕を上げる。


 その瞬間、周りの空気がゆっくりとした時間の流れになり、アサシンダガーがキラリと光った。


 よし! クリティカルの兆候だ!


 「つまり!!!」


 アサシンダガーを、ポエム目掛けて持てる力の限りで投擲した。


 「こういう事だ!!!!」


 アサシンダガーは物凄い速さで真っ直ぐ飛んでいった。


 ポエムの額目掛けて縦回転しながら飛び、サクリとポエムの額に深々と突き刺さった。


 大ダメージだ。もう助かるまい。


 「うごっ!?………お……ぉ……ぉ………」


 ポエムの額から血が噴き出し、白目をむいてそのまま力無く膝から崩れ落ちた。


 その反動で、パタリと後ろへと倒れていった。


 「勝負ありだポエム。」


 ポエムは倒れ、部屋の中には静寂が漂っていた。



 {山賊団を壊滅させました}

 {ボーナス経験点200点獲得しました}


 {シナリオをクリアしました}

 {経験点750点獲得しました}

 {スキルポイント1ポイント獲得しました}

 {ショップポイント100ポイント獲得しました}



 おや? 頭の中でファンファーレみたいな音楽と女性の声が聞こえたぞ? 


 女神様とは違う声だな。何やらシナリオをクリアしたみたいな感じで聞こえたが? 


 なんだろうか? ああ、そうか。所謂いわゆるひとつのリザルトってやつかな?


 人質となっていた女の子の顔は涙を堪えている感じだった。


 が、何故か驚きと嬉しさの両方の表情をしていた。


 よかった、冒険者も女の子も無事だったか。ふ~やれやれ、何とかなったか。


 しかし、事態はそこで終わらなかった。


 「勇者見惨!!! もう大丈夫だぞ!!!」


 自分の後頭部に衝撃が走り、前のめりに倒れ、意識を失いそうになった。


 おそらく真空飛び膝蹴りを喰らった。


 (おい勇者! なんてタイミングで来やがる!)


 薄れゆく意識の中で、確かに見た。女の子がこちらへと駆け寄って来るのを。


 その後、自分は意識を手放した。



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