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98/117

日本シリーズ第2戦

大阪ドームに響いたのは、どこか張り詰めたような静寂と、それを切り裂くような歓声だった。


前夜、機動力と組織力で“完勝”を収めたジャガーズ。

だが、相手は黙って引き下がるような連中ではない。

ライダースファンの口からは、自然とこの言葉が漏れていた。


「今日は、打つで。黙っとらんで」


その言葉が現実となるのは、あまりに早かった。


2回裏――

先頭・T・ローズが、濃見篤史の投じたスライダーを完璧に捉える。


打球は凄まじい弾道を描いて、右翼スタンドへ突き刺さった。

ボールが着弾するや否や、大阪ドームの一塁側からは轟音のような歓声。


「打ったぁぁぁ!!T・ローズ、昨日の鬱憤をはらすべく、ボールをしばきましたぁぁ!!」


実況の声が、かき消されるほどの熱狂。

第1戦では“打たされた”男が、第2戦では“打ちにいった”のである。


ライダースベンチで、仲村紀洋がニヤリと笑う。


「次は、ワイや」


その言葉どおり、4回裏――

仲村がフルカウントからのインコースへのストレートを豪快に引っ張り、左翼スタンド中段へ運んだ。


「行った行った!しばいたれ打線、完全復活です!」


さらに6回には、再びローズ。そして仲村も連続アーチ。

濃見は表情を変えずマウンドを降りたが、ベンチに戻った瞬間、グラブを強く叩きつけた。


「……読まれとる」


乃村監督も静かに頷く。

打たれた球は、すべて初戦と同じ“勝負球”。

だが、すでに見切られていた。


「やっぱりあいつら、対応力が化けもんやな……」


ジャガーズの捕手・矢乃も、悔しげにスコアブックを睨みつけた。

ローズは初戦と違い、アウトコースに逃げる球をあえて見逃し、甘いゾーンを待ち伏せていた。

仲村は、手を出さなかった球に今回は手を出してきた。


「配球の“読み合い”に負けとる……」


ジャガーズ打線も、ライダース先発・角倉健の緩急に翻弄された。

角倉のストレートは140キロそこそこだが、変化球のキレと制球力は絶妙。

特に外角低めへのシンカーが冴え渡り、内野ゴロと凡打の山を築いていく。


初回に紅星が四球で出塁した以降、チャンスらしいチャンスは皆無。

7回裏を終えた時点でスコアは「0 - 5」。

ライダースベンチは大歓声に包まれ、京阪ファンが一斉にタオルを掲げる。


「これが、しばいたれ打線や!!」


9回、最後の攻撃でもジャガーズは角倉の前に三者凡退。

打ち上げられたフライを、センターの堀田が静かにキャッチすると、スタンドのボルテージは最高潮に達した。


ゲームセット。

スコアは、0 - 5。


第1戦で完璧に封じ込めたはずのライダース打線が、試合を通じて4本のホームラン。

“積み上げる野球”が、“一発で塗り替えられた”瞬間だった。


試合後、乃村監督は淡々とコメントを残した。


「想定以上に、読み直してきたな。打たれたけど、これは財産になる。次や」


横でスコアブックを閉じた矢乃が、静かに頷く。


「はい。これで……“本当のデータ”が揃いましたわ」


ローズ、仲村、しばいたれ打線。

その牙は確かに鋭く、強烈だった。

だが同時に――矢乃と乃村は、その牙の動き方を一つずつ記録していた。


勝負の舞台は、聖地・甲子園へ。

歴史ある球場が、新たな戦場となる。


反撃は、ここからだ。

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