語られざる者達
京阪ライダース球団寮。
グラウンドに面した会議室で、ライダースの主力選手たちが黙々と映像を見つめていた。
映っているのは、関西ジャガーズの東京ドーム三連戦。
歓喜、熱狂、涙――そして胴上げ。
まるで日本の野球の「主役」がそこにいるかのようだった。
だが、映像を見つめる彼らの目に、羨望はなかった。あるのは、怒り。そして誓い。
梨子田昌孝監督は、ゆっくりとテレビを消すと、静かに言った。
「関西ダービーや。このシリーズは、“俺らの戦いや”」
トレント・ローズが笑いながら、肩を回した。
「オーケー!じゃあ派手にしばき倒すだけやな!!」
仲村紀洋は、短く言った。
「人気球団?セの顔?そんなもん、球場の外で語っとけ。グラウンドの上で一番強いのは……ライダースや」
このチームには、一貫した想いがある。
「人気のセ、実力のパ」――
そんな言葉を口にされるたびに、彼らは歯噛みしてきた。
“実力のパ”という言葉の裏に潜む、
「人気では勝てない球団」という、見え透いた皮肉。
テレビでは連日、関西ジャガーズの特集が流れる。
かたや、自分たちは地方ニュース止まりだ。
球団名に「京阪」と付いているが、ホームの大阪ではいまだに「二番手」扱い。
だが、このシリーズで――すべてを変える。
「俺たちが、関西で一番強いって証明する」
「野球はな、強いほうが勝つんや」
梨子田はホワイトボードに一文字だけ、太く書いた。
「証明」
「やるぞ。トレント、ノリ、磯辺、善岡……全員で、あのセのチームを打ち砕くぞ」
「ウィ・シャル・ロック・ゼム」
ローズがふざけて歌い出す。
「打ち破ったんや、あいつらを!」
「“しばいたれ打線”、爆発させたるわ!」
仲村がバットを手に、部屋を出る。
京阪ライダース――
その闘志は、関西の誇りを懸けた戦いに、いま火を灯した。




