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92/117

vs武蔵タイタンズ⑤

【8回表】


打席には、8番・壷井。


2打席ノーヒット。守備では好プレーもあったが、何か、結果を残したい。


入木の変化球を見極め、カウント2-2。


5球目、やや外に外れたスライダーを強引に打ちにいった――


打球は詰まったが、一塁線へ転がる。


一塁手が処理してベースカバーに送球――


だがその前に、壷井は頭から滑り込んでいた!


判定は――セーフ!


気迫のヘッドスライディング。壷井のユニフォームが、土と汗で黒ずむ。


続く打席には代打・比呂澤。そして1番・紅星。


いずれも低めの変化球に手を出し、内野ゴロ。二死一塁。


だが、ここで迎えるのは2番・村瀬。


静かに、息を整えて打席へ。


入木の投じた外角スライダー――


その瞬間だった。


振り切ったバットから放たれた打球は、高々と舞い上がり、右中間の最深部へと伸びていく。


ライト・高梨が下がる。


センター・松居も猛然と追う。


――だが、届かない。


打球はスタンドイン。


ツーランホームラン。


村瀬の魂が込められた一撃が、試合を振り出しに戻す。


7対7。


東京ドームが割れんばかりの歓声に包まれた。


三塁側スタンドは総立ち。タオルが回り、打ち鳴らされる太鼓がドームの天井に響く。


まだ終わらない。ここからだ、と。


勝負は、最終回――9回の攻防へ。




【9回表】

「同点、7対7。勝負は、ついに9回。運命の終盤――マウンドには、タイタンズの守護神・岡嶋秀樹が上がります」


左腕から繰り出される球――その瞬間、岡嶋の顔はホームを向かない。あたかも、己の感覚だけを信じるかのようなフォームから、切れ味鋭いカットボールと、スプリット回転のチェンジアップが唸る。


先頭の4番・新城。前の打席で同点打の口火を切った男は、気迫のスイングで食らいつくも、打球はセンター正面。岡嶋、ひとつ目のアウトを奪う。


だが、ジャガーズも食い下がる。


5番・酉谷、外角の速球に逆らわず、バットを伸ばしてレフト前へ。ワンアウト一塁。

6番・今丘、三遊間を割る見事なヒット。二者連打で、一死一・二塁。


一気に勝ち越しの気配が漂う。


だが――


7番・矢乃、勝負球のチェンジアップにバットが空を切る。三振。


8番・壷井、内角低めのツーシームを引っかけた。ショート・西がさばき、二塁へトス。フォースアウト。


ジャガーズ、決定打を欠き、あと一本が出ない。


岡嶋、絶体絶命のピンチを断ち切ると、拳を強く握った。


【9回裏】

ジャガーズも、勝利の方程式の最終盤。マウンドには、守護神・富士川球児が上がる。


ストレートの最速は153km/h。あの一戦目で圧巻の三者連続三振を演じた右腕だ。


先頭・志水。速球で追い込むと、最後はチェンジアップで空を切らせた。三振。

8番・安倍も、高めの速球に手が出て、またも空振り三振。


そして打席には、代打・本木大介。


「この男だけは、簡単には終わらない――」


2球で追い込まれた後、そこから驚異の粘り。ファウル、ファウル、ファウル――なんと10球粘り、フルカウント。


息を呑む東京ドーム。


しかし、富士川、ここ一番の集中力で振り絞った――


「これは速いッ!!」


内角高め、今夜最速の154km/hストレートがズバリと決まる!


バットは空を切り、三者連続三振!!


富士川、吠える!


本木も、バットを肩に乗せたまま、天を仰いだ。


試合はついに、延長戦へ突入。


【10回表】

タイタンズ5人目のマウンドは、川原純一。


細身の体型からは想像できない、芯を喰わせないストレート。キレと伸び、そして絶妙な制球が武器。


対するジャガーズは、9番に代打・輪田。カウント2-2から、ファウルで粘る。


8球目、低めのスライダーを見切り、四球で出塁。


1番・紅星はきっちりバントを決め、ワンアウト二塁。


そして打席には、2番・村瀬――


「勝負強さとは、こういう打席でこそ問われるものです!」


川原のアウトコース直球を、村瀬が踏み込んで打ち返す。


打球は低く鋭く、レフト前に抜ける!


ワンアウト一・二塁!



そして迎えるは、3番・檜山。


東京ドームの空気が張りつめる中、川原がカーブで打ち取った。


打球はセカンド・二丘のグラブに収まり、ツーアウト。




だが、勝負はここからだった。



打席には――この三連戦、何度もチームの中心に立ち続けた男。4番・新城。


「運命の一打は、このバッターのバットに託された――!」



川原の初球。インサイド高め、ストレート。


新城、振り抜いた――!


打球はぐんぐん伸びる。左中間、外野の間を真っ二つに割る!


一塁ランナー・村瀬も快足を飛ばして一気にホームイン!


新城、ガッツポーズ!


二点タイムリーツーベース!


ついにジャガーズ、9対7!


東京ドームが、揺れた。


【10回裏】


最後の守りに、乃村監督が送り出したのは――第1戦の先発・矢吹。


勝負を締めくくるのは、背番号18、関西の若き魂。


先頭・西、詰まりながらもレフト前へポテンヒット。


2番・二丘が送り、ワンアウト二塁。


そして3番・高梨、四球。

1アウト一・二塁。


一打同点、そして長打ならサヨナラもありうる場面――


バッターは、4番・松居。


この試合、2本のホームランを放った男。



スタンドの鼓動が鳴り響く中、矢吹が魂を込めて投げた。


高めのストレート。松居、空を切る!


矢吹、唸り声と共に続くボールを投げ込む。


スライダー、チェンジアップ、そして決め球――



インサイド直球。空振り三振!!




スタンドが揺れた。


だが、まだ終わらない。



打席には、5番・茅原。


カウントはフル。運命の一球――


矢吹のスローカーブ。


茅原、力んで打ち上げた!



舞い上がった打球は、矢吹の頭上へ。



「上がった――!!」



矢吹が両手を広げ、グラブを構える。



ボールが収まった、その瞬間――




ゲームセット!!





9対7


関西ジャガーズ、激闘を制して優勝!!!



東京ドーム、歓喜の渦!



涙する者、抱き合う者、グラウンドへ駆け出すベンチ。



関西ジャガーズが、セ・リーグの頂点に立った瞬間である――!

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