vs武蔵タイタンズ④
【4回表】
静まり返った一塁側スタンドに、再び小さな波紋が広がっていく。
一死一塁で迎える打者は、3番・高梨。
ここまで守備でのミスが響いていたライトの男に、回ってきた“贖罪の場”。
飯川の投じた外角チェンジアップに体を泳がされながらも、バットの先で器用に弾き返す。
打球は一塁線を破り、転々とフェアゾーンを駆ける。
スタートを切っていた走者・二丘が一気に三塁を回る。
ジャガーズのライト・壷井から返球が返るも間に合わない。
一点差に詰め寄るタイタンズ――スコア、4対3。
高梨が胸を叩く。先ほどのミスを挽回する一打となった。
【5回表】
静かに波を打つように、試合の流れは再びタイタンズ側へと傾いていく。
先頭の5番・茅原。飯川の甘く入ったカットボールを、フルスイング。
高く、鋭く、レフトスタンドへ吸い込まれる打球。
弾道を追うまでもなく、観客のどよめきと歓声が結果を物語った。
スコアは4対4の同点。
そして続く6番・衛藤。
「まさか――!」
という実況の声がかぶさる中、こちらも初球。アウトハイのストレートを完璧に捉えた。
連続ホームラン。打った瞬間、それと分かる一発だった。
一振りで流れを変える打者がいる。まさにそれが、今のタイタンズだった。
一瞬の連打劇で、スコアは4対5。
飯川は帽子のツバを握った。唇を噛みしめ、ベンチを一瞥するも、乃村監督は動かない。
「ここは任せた」――視線が語っていた。
若きエースに与えられた、試練のイニング。
続く打者には全力の直球とスライダーを組み合わせて三者凡退に抑え、これ以上の失点は許さなかった。
だが、リードは再びタイタンズへ。
【6回裏】
ジャガーズベンチがベンチ裏で静かにざわめき始める。
高羽尚成がタイタンズ2番手としてマウンドに立ってからというもの、変化球を低めに集め、ジャガーズ打線はタイミングを外され続けていた。
ボールの出どころが見づらい。
スライダーもシンカーもシュートも、まるで同じ軌道から急に曲がる。
まさに技巧派左腕の真骨頂。
気づけば6回まで無失点。
その裏、タイタンズの攻撃。
4番・松居に2度目の歓声が沸き上がる。
外角のチェンジアップをすくい上げた一撃は、またしても左中間スタンドへ――
ジャガーズ守備陣が振り返る暇もない豪快な打球。
ツーランホームラン。
この日、2本目のアーチ。
東京ドームに、決定的とも言える空気が流れた。
スコアは4対7。3点差。タイタンズ、ついに突き放す。
【7回表】
ジャガーズベンチが動く。
「まだ、終わらせはしない」
そんな意志を形にすべく、バットを握るのは、4番・新城。
マウンドには、タイタンズ3番手・入木祐作。
173センチと小柄ながら、堂々と胸を張って立つ。
左足を高く上げる、躍動感あるフォーム。そして、投げ終わりの“吠えるような”叫びが特徴の投手。
だが、その初球だった。
ストレート。
新城はその気迫に真っ向から応えた。
逆方向――右中間スタンドへのライナー性の打球が、加速しながらスタンドイン。
一振りで反撃を開始する。
スタンドの色が変わる。
ジャガーズファンが、再び手を叩き始める。
5対7。
まだ終わってはいない。




