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91/117

vs武蔵タイタンズ④

【4回表】

静まり返った一塁側スタンドに、再び小さな波紋が広がっていく。


一死一塁で迎える打者は、3番・高梨。


ここまで守備でのミスが響いていたライトの男に、回ってきた“贖罪の場”。


飯川の投じた外角チェンジアップに体を泳がされながらも、バットの先で器用に弾き返す。


打球は一塁線を破り、転々とフェアゾーンを駆ける。


スタートを切っていた走者・二丘が一気に三塁を回る。


ジャガーズのライト・壷井から返球が返るも間に合わない。


一点差に詰め寄るタイタンズ――スコア、4対3。


高梨が胸を叩く。先ほどのミスを挽回する一打となった。


 


【5回表】

静かに波を打つように、試合の流れは再びタイタンズ側へと傾いていく。


先頭の5番・茅原。飯川の甘く入ったカットボールを、フルスイング。


高く、鋭く、レフトスタンドへ吸い込まれる打球。


弾道を追うまでもなく、観客のどよめきと歓声が結果を物語った。


スコアは4対4の同点。


そして続く6番・衛藤。


「まさか――!」


という実況の声がかぶさる中、こちらも初球。アウトハイのストレートを完璧に捉えた。


連続ホームラン。打った瞬間、それと分かる一発だった。


一振りで流れを変える打者がいる。まさにそれが、今のタイタンズだった。


一瞬の連打劇で、スコアは4対5。


飯川は帽子のツバを握った。唇を噛みしめ、ベンチを一瞥するも、乃村監督は動かない。


「ここは任せた」――視線が語っていた。


若きエースに与えられた、試練のイニング。


続く打者には全力の直球とスライダーを組み合わせて三者凡退に抑え、これ以上の失点は許さなかった。


だが、リードは再びタイタンズへ。


 


【6回裏】


ジャガーズベンチがベンチ裏で静かにざわめき始める。


高羽尚成がタイタンズ2番手としてマウンドに立ってからというもの、変化球を低めに集め、ジャガーズ打線はタイミングを外され続けていた。


ボールの出どころが見づらい。


スライダーもシンカーもシュートも、まるで同じ軌道から急に曲がる。


まさに技巧派左腕の真骨頂。


気づけば6回まで無失点。


その裏、タイタンズの攻撃。


4番・松居に2度目の歓声が沸き上がる。


外角のチェンジアップをすくい上げた一撃は、またしても左中間スタンドへ――


ジャガーズ守備陣が振り返る暇もない豪快な打球。


ツーランホームラン。


この日、2本目のアーチ。


東京ドームに、決定的とも言える空気が流れた。


スコアは4対7。3点差。タイタンズ、ついに突き放す。


 


【7回表】


ジャガーズベンチが動く。


「まだ、終わらせはしない」


そんな意志を形にすべく、バットを握るのは、4番・新城。


マウンドには、タイタンズ3番手・入木祐作。


173センチと小柄ながら、堂々と胸を張って立つ。


左足を高く上げる、躍動感あるフォーム。そして、投げ終わりの“吠えるような”叫びが特徴の投手。


だが、その初球だった。


ストレート。


新城はその気迫に真っ向から応えた。


逆方向――右中間スタンドへのライナー性の打球が、加速しながらスタンドイン。


一振りで反撃を開始する。


スタンドの色が変わる。


ジャガーズファンが、再び手を叩き始める。


5対7。


まだ終わってはいない。

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