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82/117

vs青山スワンズ③

三連戦の最終日――

関西ジャガーズは、連敗の重圧と真正面から向き合いながら、このカード最後の一戦に臨んだ。


先発は、左腕・飯川慶。

気温35度を超える酷暑のなかでも、立ち上がりから腕が振れていた。

代名詞のチェンジアップで緩急を操り、テンポよくアウトを重ねる。スワンズ打線に主導権を渡さず、7回1失点の力投。


しかし、打線の援護は遠かった。


対するスワンズの先発は、技巧派右腕・藤生。

球速こそ140km/h前後ながら、抜群の緩急と緻密なコース取りでジャガーズ打線を翻弄。中盤までスコアボードに“0”を刻み続けた。


試合が動いたのは、7回裏――

2アウト二塁。打席には、村瀬浩。


前の打席、嵐のフォークをセンターへ強烈なライナーで弾き返した感触が、まだ手に残っている。

“伸びていく打球”――それは、彼がこの数週間取り組んできたフォーム改造の成果だった。


(あれは……バレルゾーンに入ってた。打球角度も、理論通り)


彼の頭には、MLBの“フライボール革命”があった。

小柄な打者でも、ミートポイントをズラせば、打球は飛ぶ。バットの入射角、トップの位置、スイングの軌道。すべてを数センチ単位で再構築してきた。


迎えたこの打席。

藤生が投じたのは、内角低めへのストレート――村瀬は迷いなく、バットを振り抜いた。


打球は鋭い弾道で左中間を破り、ワンバウンドでフェンス直撃のツーベース。


ベンチの新城が、無言のまま小さく頷く。


「やっぱり“持ってる”な、アイツ……」


この回は得点にこそ繋がらなかった。

だが、村瀬の放った一撃には、明らかな“変化の兆し”が宿っていた。


試合は1-2で最終回へ。

反撃を託されたのは、7番・矢乃輝弘。


相対するは、再びマウンドに上がった守護神・高槻臣吾。

あのシンカーを、もう一度。今度こそ、打ち返す。


粘りに粘り、ファウルで6球粘った末の7球目――

打ち上げた打球は、無情にもショートのグラブへと収まった。


試合終了。三連戦は、痛恨のスウィープ。


ロッカールームは静まり返っていた。

それでも、新城剛志は視線をあげる。


「この三試合、内容で負けたとは思ってへん。ただ……“あと一歩”が届かんかっただけや。やられた分、次にやり返すだけやろ」


言葉は少なくとも、想いは確かに伝わった。


矢乃がうなずき、村瀬は手にしたバットを握り直す。

彼のスイングには、すでに“つなぐ”だけではない意思が宿っていた。


そして乃村監督は、スタンドを見上げながらひとり呟いた。


「古舘……ようやったな。けどな――うちの連中も、これで終わる思うなよ」


関西ジャガーズ、後半戦は三連敗スタート。

だが、敗戦のなかに芽吹いた変化の種は、確かに息づいていた。


この敗北が、のちの反撃の狼煙となることを――

誰よりも、彼ら自身が信じていた。

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