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81/117

vs青山スワンズ②

第1戦の敗戦から一夜。

打線の繋がりを断たれ、試合の空気そのものを支配された関西ジャガーズは、雪辱を期して第2戦に臨む。


先発を任されたのはベテラン・河尻哲郎。

右のサイドスローから繰り出すジャイロボールに、スライダー、カットボール、チェンジアップ――。

精緻な制球と多彩な球種を武器に、要所を締める投球を見せた。


だが、4回。

一死一塁、スワンズの3番・藤永のセカンドゴロを村瀬が焦って一瞬握り損ねる。併殺を取り損ね、1・2塁。

続く4番・大瀬が外角低めを流し打ち、レフト前へ先制のタイムリー。

「抑えていたはず」のリズムを、ほんの小さな綻びから崩される――そんな展開だった。


関西ジャガーズも反撃の機会を伺いながら、スワンズ中継ぎ陣の前に沈黙が続く。

古舘のリードにより、ジャガーズ打線はタイミングを外され、差し込まれ、凡退の山を築いた。


そして迎えた7回表――1点ビハインド。

1アウト走者なしの場面で打席に立つのは、2番・村瀬浩。

インコースへのストレートを思い切り引っ張った。

詰まりながらも、打球はライト前へポテンと落ちるヒット。ようやくつかんだ突破口だった。


1塁に立つ村瀬。続く3番・檜山が、スライダーをライト線へ強く弾き返す。

ライトがすぐさまカバーに入り、カットマン・セカンドへ。そこから捕手・古舘への送球――。


その一連の動きに、一切の無駄がなかった。


村瀬は全力でホームを狙った。だが、三塁ベースを蹴った瞬間には、すでに“待ち伏せ”されていたかのような完璧な中継プレー。

矢のような返球を受けた古舘が、ブロック体勢に入りつつ、冷静にタッチアウトを決める。


――あと一歩、届かなかった。


「今の……回しても無理やったんか?」


ベンチに戻る村瀬が、ヘルメットを外しながらそう呟く。

だが、矢乃は知っていた。あのプレーは偶然でも、ただの好守でもない。


「読み切られてたんや……あの人に」


打球のコース、カウント、村瀬の走力、ベンチの勢い――

全てを踏まえた上で、古舘はあの瞬間の「走らせる流れ」を設計していた。


スコアボードに並ぶ“0”と“1”。

たった一点の差。その背景にある“操作”の凄みを、矢乃は誰よりも痛感していた。


「……悔しいけど、あの人は“試合そのもの”を設計してくる」


そして9回表、最後の攻撃。

1アウト走者なしで、打席には7番・矢乃。


初球。

スワンズの守護神・高槻臣吾が投じたのは、外角への沈むシンカー。

矢乃は迷いなくフルスイング――だが、バットは空を切る。


(……振らされた)


内角を警戒しつつ「初球からいけ」と準備していたつもりだった。

だが、それすら見越されていたようなボールの軌道。

完全に“狙いを外された”ことが、体の感覚ではっきりと伝わってきた。


続く2球で追い込まれ、最後は外角高めのストレートで空振り三振。

ゲームセット。

またしても、スワンズの思い描いた“勝ち筋”に乗せられたような敗戦だった。


スコアは0-1。

内容は拮抗していても、決定的に“差”を感じさせる試合。


ベンチに戻った矢乃は、自身のグラブをじっと見つめた。


「……一手先じゃない。二手三手先を読まれてる」


捕手として、打者として。

今、自分がどの地点にいるのか――その現実を、否応なく突きつけられた敗戦だった。

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