守る強さ、勝ち切るチカラ
「1点を守る強さが、勝ち切る力を生むんや」
開幕カードを勝ち越した関西ジャガーズは、次なる相手――瀬戸内シャークスとの3連戦に臨んでいた。
相手ベンチには、“ミスター赤バット”の異名を持つ名将・山元浩二。
現役時代、赤いバットで536本のアーチを描いた伝説の男は、監督としても強気な攻撃野球を信条とし、チームに「勝負を決める集中力」を植え付けていた。
そしてその中心には、球界最高峰の天才打者・眞栄田智徳。
打撃フォームはコンパクトに、スイングは遅く、タイミングはあくまで「自分のリズム」で取る。
一見すると打ち損じにも見えるスイングで、次々と外野の間を抜くその打撃には、ジャガーズ内でも「止めようがない」という声が漏れるほどだった。
さらに、トリプルスリーの実績を誇る主砲・兼元知憲。
抜群の選球眼と一発の怖さを備えた勝負師は、どんな場面でも甘い球を見逃さない。
初戦、ジャガーズは4回に2点を先制。ヒットで出塁した村瀬が盗塁で揺さぶり、新城・酉谷とタイムリーを続け、先制点を挙げた。
しかしその裏、先発・濃見篤史がシャークスの洗礼を浴びる。
眞栄田にセンターオーバーのツーベースを打たれると、兼元にスライダーを狙い打たれてタイムリー。1点差に詰め寄られる。
さらに続くバッターにも粘られ、無死一・三塁。ピンチの場面でマウンドに向かうのはキャッチャー・矢乃。
「慌てんなよ、濃見。
落ち着いてる時のお前の球、バケモンやぞ」
この一言に、濃見の表情が引き締まる。
ストレート、シンカー、スライダーを低めに集め、連続三振。
最後の打者も打たせて取って切り抜けた。
その瞬間、ベンチが沸いた。
「濃見、ええぞぉぉ!!」
「よっしゃ、このまま勝ち切るで!!」
6回まで2-1とリードを保ったジャガーズは、いよいよ”勝利の方程式”を発動する。
7回、マウンドに上がったのは左のサイドスロー・ジャンセン。
繰り出すスライダーとシンカーが、シャークス打線のタイミングを完全に外す。
3者凡退で切って取り、ベンチに帰る際には軽く帽子を持ち上げて一礼。
そして8回、マウンドには富士川球児。
相手の中軸――眞栄田、兼元、そして5番の大砲・荒井を迎える。
「真っ向勝負や。
狙えるやろ、三つとも。
ねじ伏せてこい。」
乃村の指示に、富士川は無言で頷く。
眞栄田との対戦。
「芯にさえ当てられたら飛ぶ」――そう言われる打者だからこそ、富士川は真っ向勝負を選んだ。
アウトローへ浮かせず決まったストレート。空振り三振。
続く兼元にはフォークを2球見せたあと、最後は胸元へのストレートで見逃し三振。
5番・荒井にはカウント1-2から外角低めのフォークが決まり、バットが空を切る。
三者連続三振。
甲子園にどよめきが走り、スタンドには「フ・ジ・カ・ワ!」コールが響いた。
9回、小久保が最後を締めて2-1。
濃見はプロ初勝利、そしてチームは開幕から4連勝。試合後、乃村監督は短く、こう言った。
「今日は継投で勝てたんやない。
“守備”と“準備”で掴んだ勝ちや。
お前ら、これが“戦うチーム”や」
勝ちきる強さ、それは“動く野球”に、鉄壁の守備と継投が加わった証だった。




