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勝利の方程式

オープン戦も中盤に差し掛かった頃、グラウンドの空気に、ある“確信”が生まれ始めていた。

それは、勝利をつかむための“ラストピース”――リリーフ陣の確立である。


ジャガーズのブルペンに、新たな勝利の方程式が芽吹こうとしていた。


まず、その中心にいたのが、富士川球児。

プロ入り2年目の今春、すでにブルペンでの存在感は別格だった。

そのまっすぐは、伸びるというよりも“打者の手元で浮き上がる”ような軌道を描き、空振りを誘った。

最速156キロ。だが、それ以上に印象を残すのは、強烈なまでの「気迫」だった。


「絶対に点はやらへん」

マウンドでの富士川の姿は、そう語っているかのようだった。

セットポジションから一瞬のタメを作り、鋭く踏み込んで腕を振る。

リリースと同時に炸裂するミットの音に、打者も、観客も、ベンチも、誰もが息を呑んだ。


続いて登場するのは、小久保友之。

こちらも2年目のリリーフ右腕。

トルネード気味のオーバースローから繰り出される最速157キロの直球は、まるで刃のように鋭く、打者の内角を突く。

ときにサイド寄りから腕を下げるなど、投球の幅も増していた。


「去年の夏場を越えた経験が、間違いなく小久保を変えたな」

ブルペンを見つめる乃村監督が、投手コーチに小さくつぶやいた。

昨年は後半戦で酷使に耐え、何度もピンチをしのいできた小久保。

その経験が、今の冷静さと自信につながっている。


そして、最後に控える男――

今季から加入したジェイムス・ジャンセン、通称“JJ”。

185センチの長身から繰り出されるサイドスローの速球は、威圧感という言葉では足りないほどだった。

150キロ中盤の速球に加え、急角度で鋭く沈むスライダー。

対左、対右、どちらにも武器があり、何より「動じない」。

初登板の試合、無死一塁の場面でマウンドに上がり、たった5球で三者凡退に仕留めた姿に、ファンも首脳陣も衝撃を受けた。


「日本にも、こんな投手が来る時代になったか……」

矢吹がベンチ裏でそう漏らしたのも無理はない。

ジャンセンのボールを受ける捕手・矢乃の手も、試合後は腫れ上がっていたという。


この3人――富士川、小久保、ジャンセン――が揃って登板した試合は、圧巻だった。


ある試合では、6回までにジャガーズが2点をリード。

7回を小久保、8回を富士川、9回をジャンセン。

わずか1人のランナーも許さず、完全に試合を締め切った。

三者三振が4イニングのうち2回。スタンドは割れんばかりの歓声に包まれ、相手ベンチはただ唖然と見つめていた。


翌日の地元スポーツ紙の朝刊――

そこには大きな見出しが躍っていた。


「JFK、始動。ジャガーズ勝利の方程式誕生」


富士川(F)、小久保(K)、ジャンセン(J)。

その頭文字を並べた“JFK”という言葉が、ファンやマスコミの間に急速に広まり始め、ジャガーズの“次なる時代”の象徴となった。


村瀬浩もまた、ベンチからその姿を目にしていた。

ジャンセンが三者連続三振を奪った試合後、富士川と拳を軽く合わせて笑い合う姿を、村瀬はじっと見つめていた。


「これは、勝てるぞ。あの3人がいて、負ける理由が見当たらへん」


キャンプでの野手陣の機動力。

オープン戦での先発陣の安定。

そして今、リリーフ陣に「JFK」という勝利のパターンが加わったことで、ジャガーズはついに“戦える形”を整えつつあった。


春が、いよいよ熱を帯び始める。

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